埼玉県で畑を借りる

はじめに

家庭菜園より広い「畑を借りて」本格的に野菜作りを楽しみたい都市住民が増えています。

特に50~60代のサラリーマン世代では、週末に無農薬野菜を育てて健康的な趣味にしたいというニーズが高まっています。

実際、「市民農園」(都市住民向けの小規模な貸し農園)の需要は年々高まっており、埼玉県内でも多くの市民農園が開設されています。

市民農園とは、サラリーマン家庭や都市住民がレクリエーションや生きがいづくり、子供の体験学習などを目的に小面積の農地で野菜や花を育てるための農園のことです。

例えば埼玉県では令和5年3月時点で県内に252箇所もの市民農園が設置されており、都市近郊で畑仕事をしたい人々の受け皿となっています。(参照:埼玉県公式ホームページ『市民農園の開設について』)

一方で、日本の農地は法律で保護されており、原則として農家以外の人が勝手に農地を借りて耕作することはできません。

しかし農地法の特例として、「特定農地貸付け」制度により一定の条件下で農地を農家以外に貸し出すことが認められています。(参考:『「特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律」の概要』)

これは営利目的ではない野菜栽培を行う場合に限り、一人あたり10アール未満(1,000㎡未満)の農地を5年以内の期間で貸し付けることができる制度で、農業委員会の承認が必要です。

この制度によって市民農園が各地で運営され、都会の人でも農業体験ができるようになりました。

本記事では、都市住民が趣味で畑を借りる代表的な方法と、それぞれの特徴について詳しく解説します。

畑を借りる4つの方法

畑を借りる方法には、大きく分けて次のような選択肢があります。

それぞれメリット・デメリットや利用条件が異なるため、目的や経験に応じて最適な方法を選びましょう。

  1. 公営の市民農園を利用する – 市区町村やJA等が運営する貸し農園で、安価に区画を借りられます。
  2. 民間のレンタル農園サービスを利用する – 企業や農家が運営する有料サービスで、道具レンタルや指導付きの手ぶらで通える農園です。
  3. 農業体験農園に参加する – 農家が主宰する体験型農園で、年間の作付計画に沿って指導を受けながら栽培体験ができます。
  4. 農地を直接借りる(本格的な農地賃借) – 将来的に本格就農する場合などに、農地中間管理機構(農地バンク)等を通じて農地を借りる方法です。

以下でそれぞれの方法の詳細を見ていきます。

【方法1】公営の市民農園を利用する

市民農園は各自治体やJA(農協)、NPO法人などが運営する公的な貸し農園です。

自治体が土地所有者から農地を借り上げ、市民向けに小区画に区切って貸し出しています。

利用できるのはその市町村の在住者・在勤者などに限定される場合が多く、応募資格も自治体によって定められています。

例えば和光市では応募資格所を「市内在住者・在勤者、又は市内の法人・団体で、決まりを守って農園を楽しめる方」としています。(参考:和光市公式ホームページ『市民農園』)

市民農園の利用料金は非常に安価で、自治体によりますが年間数千円程度が相場です。

例えば埼玉県和光市では15㎡区画で年間6,000円、30㎡区画でも12,000円という低料金で利用できます。

さらに埼玉県越谷市では場所によって年間2,000円~5,000円と格安に設定されています。(参考:越谷市公式ホームページ『市民農園』)

このように公共の市民農園は費用負担が小さいのが魅力です。

ただし、市民農園は基本的に最低限の区画貸しのみで、設備やサポートは限定的です。

埼玉県では令和5年3月時点で県内に252箇所の市民農園がありますが、畑(区画)そのものが提供されるだけで、水道や農具庫などの設備がない農園も多いです。

各農園とも水道設備、農機具を保管する場所、ゴミ捨て場はありません。作業のつど持ち込み、持ち帰りとなりますので予めご了承ください。

越谷市公式ホームページ『市民農園

また市民農園は利用期間に制限がある点にも注意が必要です。

多くの自治体では1~3年程度で契約更新や区画の入れ替え(抽選)が行われます。

例えば和光市では5年ごとに全区画で抽選を行い、長期独占利用にならないよう調整しています。

募集も年に1~2回程度の一斉募集が多く、応募者多数の場合は抽選になります。

農林水産省公式ホームページの『市民農園開設状況調査の結果について(令和6年3月末時点)』では以下のように記載されています。

市民農園の区画利用率(設置区画数に占める契約区画数)は、全体で8割を超えており、特に市街化区域内にある市民農園では9割を超える農園があるなど、高い利用率となっている。 また、市民農園の応募倍率(募集区画数に占める応募区画数)は都市部ほど高く、市街化区域内にある市民農園の応募倍率は1倍を超えている。

農林水産省公式ホームページ『市民農園開設状況調査の結果について(令和6年3月末時点)

全国平均では市民農園の競争倍率は市街化区域の場合、1倍を超えていると報告されています。

人気エリアでは抽選になることもありますが、空き区画が出れば途中募集を行う自治体もあります。

さらに、市民農園では農薬利用の扱いにも留意しましょう。

行政管理の市民農園では農薬の使用が禁止されていないケースが多く、利用者の判断で防除に農薬を使う人もいます。

そのため「自分は無農薬で育てたいのに隣の区画で農薬散布されて困る」「逆に自分は農薬を使いたいが周囲が無農薬志向で肩身が狭い」といったトラブルも起こりえます。

農薬散布時の飛散には細心の注意が求められますし、自治体によっては住宅地に隣接する農園での農薬使用マナーについて指導があります。(参考:平塚市公式ホームページ『市民農園で農薬を使用する際の注意』)

無農薬にこだわる方は、周囲の利用者の農薬使用状況を確認するか、後述する民間農園など農薬禁止の農園を選ぶと良いでしょう。

以上のように、公営の市民農園は費用の安さ身近な場所で始めやすいメリットがある一方、設備やサポートの少なさ利用期間や応募制限がデメリットです。

ある程度自分で試行錯誤しながら農作業を楽しみたい中~上級者向けとも言えます。

【方法2】民間のレンタル農園サービスを利用する

自治体以外にも、民間企業や農家が運営する「貸し農園サービス」があります。

代表的なものにサポート付き貸し農園の「シェア畑」や、農家と利用者をマッチングする「体験農園マイファーム」などがあり、首都圏を中心に展開しています。

民間のレンタル農園は、市民農園にはない充実したサービスと設備が特徴で、初心者でも安心して野菜作りを始められるよう工夫されています。

例えば以下のようなサービスや設備がある農園もあります。

  • 区画ごとに支柱やネット、防虫トンネルが整備されている
  • 肥料・種苗や基本的な農具がすべて現地に用意されていて、手ぶらで通って野菜作りを体験できる
  • 経験豊富な菜園アドバイザー(指導員)が常駐している
  • 播種や収穫のタイミング、無農薬での害虫対策など丁寧に教えてもらえる

こういったサービスや設備がある農園であれば、家庭菜園の経験がない初心者でも安心です。

また、イベントや講習会が定期開催される農園もあり、利用者同士の交流も楽しめます。

民間農園は利用料こそ公共に比べ高めですが、その分好きなタイミングで始めて好きなだけ続けられる柔軟さがあります。

市民農園のような利用年数の区切りは基本なく、空きがあればいつでも申し込み可能です。

区画の空き状況は随時更新され、空いていれば先着で利用開始できるため、抽選待ちの心配も少なくなります。

料金はサービスや立地によりますが、月額料金制が一般的で、相場は月6,000~10,000円程度です。

一見高く感じますが、種苗・資材代や指導サービス込みと考えれば妥当な価格設定でしょう。

民間レンタル農園の多くは農薬の使用が禁止されており、有機肥料や物理的防除による栽培(無農薬栽培)が徹底されています。

これは小さなお子さん連れの利用者も多く安全面に配慮しているためで、無農薬野菜を育てたい方に適した環境です。

逆に「多少農薬を使ってでも収量を上げたい」といった希望には沿えないため、その点は理解しておきましょう。

また民間サービスの区画は都市近郊の便利な場所にあることが多く、駐車場やトイレ、休憩スペース等も整備されている場合があります。

利用者は会社帰りや休日に気軽に農作業レジャーを楽しむことができるでしょう。

【方法3】農業体験を利用する

農家が主宰する「農業体験」を利用する方法もあります。

農業体験では年間スケジュールに沿って決められた作物を育てる方式が一般的で、利用者は農家の指示通りの作付計画に沿って作業を体験します。

プロの農家から一通り栽培技術を学びたい人は体験農園を選ぶと良いでしょう。

総じて、民間レンタル農園サービスは費用はかかっても手厚いサポートと設備で初心者に優しい方法です。

週末のレジャー感覚で始められ、無農薬で安全な野菜作りの知識も身につくため、「これから畑作業を始めたい!」という入門者に最適と言えます。

【方法4】農地を直接借りる(本格的な農地賃借)

市民農園やレンタル農園は主にレクリエーション目的ですが、将来的に本格的に農業をやりたい場合や、もっと広い農地で色々な作物を育てたい場合には、農地そのものを農家から直接借りる選択肢もあります。

ただし冒頭で述べた通り、日本では農地法により農地の権利移動や賃借には厳しい制限があります。

農家以外が農地を借りるには通常、農業委員会の許可貸借の特例制度を利用する必要があります。

特定農地貸付け制度を利用する

特定農地貸付け制度は、市民農園以外でも個別に農家と非農家をマッチングして農地を貸し出す仕組みです。(参考:『「特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律」の概要』)

この制度を利用すれば営利を目的としない栽培に限り、比較的小規模な農地を一定期間借りることが可能です。

具体的には前述の通り10アール未満・貸付期間5年以内などの条件を満たせば、農業委員会の承認のもと農地法の許可を得ずに貸借契約ができます。

農家の市民農園を利用する

自治体によっては、農家が自分の農地を「貸し農園」として開放し、そこに個人が応募して直接契約するケースもあります(いわゆる農家開設型の市民農園)。

この場合、契約上は農家と利用者の賃貸借ですが、特定農地貸付けの条件に沿って行われるため、一種の市民農園とみなされます。(参照:埼玉県公式ホームページ『市民農園の開設について』)

農地バンクを利用する

一方で、より広い農地を借りて定年後にプロの農業者として独立したいといった場合には、各都道府県に設置されている農地中間管理機構(通称:農地バンク)を活用する方法があります。

農地中間管理機構は、遊休農地や後継者不足の農地をいったん預かり、新規参入者や担い手農家に貸し付ける公的なマッチング事業です。(参考:埼玉県公式ホームページ『農地中間管理事業の推進』)

農地バンクを通じて貸借する場合、貸し手・借り手双方にとって安心な契約調整が行われ、必要に応じて機構が農地の基盤整備や管理も代行します。

この仕組みは農業への新規参入の促進も目的としており、本格的に農業経営を目指す人には有力な選択肢です。

ただし借り手として登録するにはある程度の営農計画や技術・時間の確保が求められます。

サラリーマンの副業的な週末農業レベルでどこまでマッチング可能かは地域や条件によりますので、興味がある場合は自治体の農業委員会や農地バンクに相談してみましょう。

以上のように農地そのものを直接借りる方法は、趣味の範囲を超えて本格的に農業に踏み込みたい場合に検討すべき選択肢です。

ハードルは高いですが、うまく活用すれば広大な畑で多種多様な作物を無農薬で育てる夢も実現できるでしょう。

埼玉県で畑を借りる場合のポイント

首都圏近郊で畑を借りる場合、埼玉県は非常に人気のエリアです。

東京都心からのアクセスも良く、適度に都市化が進む一方で郊外には広い農地が多く残っています。

そのため市民農園の数も多く、民間レンタル農園の展開も盛んです。

【ポイント1】県の情報サイトを活用する

埼玉県は県として「都市農業」や「農ある暮らし」の推進に力を入れており、県内各市町村の市民農園情報をまとめて公開しています。

県のホームページでは、市町村ごとの市民農園一覧や募集状況へのリンクが掲載されているので、埼玉で畑を探す際はまず参照するとよいでしょう。(埼玉県公式ホームページ『埼玉ではじめる農あるくらし』)

市民農園の開設主体も多様で、自治体直営だけでなくJAや地元農家、NPO法人、企業によるものなど様々です。

例えばさいたま市や川口市など人口の多いエリアでは市やJA運営の農園が充実していますし、比企郡など農村地域では地元農家が提供する形の市民農園も見られます。

和光市の市民農園「アグリパーク」

具体例として和光市の市民農園「アグリパーク」を紹介します。(参考:和光市公式ホームページ『市民農園』)

和光市では新倉地域に11箇所・計441区画もの農園区画が用意されており、都心に近いながら本格的な農空間が整備されています。

区画サイズは15㎡と30㎡があり、利用者のニーズに応じて選択できます。

園内には休憩所やトイレ、駐車場まで備えられており、市民農園としては設備が充実している部類です。

利用料も前述の通り格安です。

ただし、応募資格は「市内在住者・在勤者、又は市内の法人・団体で、決まりを守って農園を楽しめる方」とされていますので、ご注意ください。

民間レンタル農園

民間レンタル農園に関しても、埼玉県内には多数の拠点があります。

大手のシェア畑のサイトには埼玉県に12農園(2025年10月時点)が登録されています。

さいたま市内だけでも大宮、浦和など5箇所が登録されています。

これらは駅から徒歩圏や住宅街近くにも位置しており、車がなくても通える利便性が支持されています。

また埼玉は平野部が広く日当たりの良い土地が多いため、作物の生育環境としても恵まれています。

【ポイント2】自宅から無理なく通える距離

週末は埼玉の畑で汗を流し、採れたて野菜を持ち帰る」というライフスタイルは、首都圏のシニア世代にとって理想的でしょう。

埼玉で畑を探す際のポイントとして、まず自宅から無理なく通える距離かを考えることが重要です。

平日は仕事があるサラリーマンの方ですと、週末中心の作業になりますから、車で1時間以上かかる場所だと負担が大きくなります。

幸い埼玉県内は広域に市民農園が点在しているので、最寄りの市町村の情報をチェックし、場合によっては隣接市町村の農園も候補に入れてみてください。

【ポイント3】応募資格を確認する

市民農園は市区町村によっては居住地要件が厳しい所もありますが、在勤(勤務先がその市町村内)で応募可能なケースもあります。

都内在住でも埼玉に通勤している方なら、その市の農園に申し込めることがあります。

民間農園の場合、所在地要件は特に無いことが多いので、自宅から多少離れていても「このサービス内容が魅力的だ」と思えば申し込んでみるのも良いでしょう。

人気の農園は空き待ちになる場合もありますが、シェア畑など公式サイトで空き区画情報を随時公開していますので、こまめにチェックしましょう。

【ポイント4】現地を確認する

また、見学会や無料説明会に参加して雰囲気を掴むのも大切です。

実際に現地を見ることで、周囲の利用者層や管理体制、畑の陽当たりや水はけ具合なども確認できます。

「百聞は一見にしかず」、気になる農園があれば遠慮なく問い合わせてみましょう。

まとめ

まとめ

「畑を借りる」と一口に言っても、公営の市民農園から民間サービス、本格的な農地賃借まで様々なスタイルがあります。

それぞれに特徴があるため、自分の目的やライフスタイルに合った方法を選ぶことが大切です。

まずは無理のない範囲で小さく始めてみることをおすすめします。

例えば初心者ならサポート付きのレンタル農園で基礎を学び、自信がついたら市民農園で自力栽培に挑戦する、といった段階的なアプローチも良いでしょう。

人生100年時代、50~60代からでも新たなチャレンジは可能です。

平日は都会で働き、週末は埼玉の畑で土に親しむ——そんな二拠点ならぬ「二環境生活」が実現すれば、きっと心身ともに充実した毎日を送れることでしょう。

ぜひあなたも、自分に合った形で「畑を借りる」一歩を踏み出し、自家菜園ライフを楽しんでみてください。

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