
はじめに
家の周りや駐車場の雑草が、抜いてもまた生えてくる。
「顆粒の除草剤を買ってきたけれど、どう撒けばいいのだろう」と迷っていませんか。
顆粒の除草剤は、袋を開けて地面に撒くだけの手軽な製品です。
ただし、撒く場所によっては法律に触れる使い方になります。
風のある日に撒けば、近隣の植物を傷めることもあります。
この記事では、撒く前に確認すること、撒くタイミング、実際の手順、安全のための配慮を順に説明します。
判断の根拠は農林水産省・環境省の資料に置き、確認できなかった内容は書いていません。
顆粒の除草剤とは|粒剤という剤型のこと
顆粒の除草剤は、製品ラベルや農薬登録の上では「粒剤」と呼ばれます。
この記事でも、以降は粒剤(顆粒タイプ)と表記します。
粒剤は地面にそのまま撒いて使う
粒剤は、水で薄める手間がなく、そのまま地面に撒いて使う剤型です。
農林水産省と環境省の通知は、住宅地の周辺で農薬を使う際の飛散対策を示しています。
そのなかで、粒剤・微粒剤といった飛散が少ない形状の農薬を使うことが挙げられています。
(参考:農林水産省『住宅地等における農薬使用について』)
粒剤は、剤型としては周囲に飛び散りにくい部類に入ります。
とはいえ、撒き方や天候によっては流出が起こります。
飛び散りにくいことと、どこに撒いてもよいことは別の話です。
液剤との違いはラベルで確認する
粒剤と液剤(液体タイプ)は、剤型が違うだけでなく、想定されている使い方も違います。
手元の製品がどういう使い方をする剤なのかは、ラベルの「適用病害虫の範囲及び使用方法」の欄で分かります。
農薬取締法は、農薬の容器または包装に、適用病害虫の範囲および使用方法を表示することを義務づけています(第16条)。
(参考:農林水産省『農薬取締法』)
インターネット上の一般論ではなく、手元のラベルが判断の基準になります。
表1: 粒剤と液剤で確認するポイント ※2026年8月時点
| 確認する項目 | 粒剤 | 液剤 |
|---|---|---|
| 使い方 | そのまま地面に撒く | 水で薄める、または原液で散布する |
| 飛散への配慮 | 飛散が少ない形状として通知に挙げられている | 飛散低減ノズルの使用に努めることとされている |
| 使える場所・時期・量 | ラベルの「適用病害虫の範囲及び使用方法」で確認する | 同左 |
出典:「飛散への配慮」の行は農林水産省・環境省『住宅地等における農薬使用について』(平成25年4月26日)別紙2。「使える場所・時期・量」の行は農薬取締法第16条。
粒剤と液剤のどちらを選ぶかは、別の記事で詳しく説明しています。
(※【除草剤の選び方】「顆粒」と「液体」どっちを選ぶ? のページでご説明していますので、ご参照ください。)
撒く前に確認する3つのこと
袋を開ける前に、確認しておくことが3つあります。
この3つを飛ばすと、効果が出ないだけでなく、法律に触れる使い方になることがあります。
【ルール1】製品ラベルの記載を確認する
農薬取締法は、農薬を使う人が守るべき基準を省令で定めています(第25条第1項)。
そして、この基準に違反して農薬を使ってはならないと規定しています(同条第3項)。
守るべき内容は、製品ラベルに書かれています。
農林水産省も、除草剤を使うときのチェックポイントを示しています。
容器・包装に記載されている使用上の注意事項等を必ず確認し、遵守することです。
(参考:農林水産省『除草剤の販売・使用について』)
使用量・使用時期・使える場所は、この記事の説明ではなくラベルの記載に従ってください。
【ルール2】使う場所に使える除草剤かを確認する
ここが最も間違えやすい部分です。
農林水産省は、除草剤には農薬登録のあるものと、農薬登録されていないものの2種類があると説明しています。
農薬登録のある除草剤は、農作物や樹木・芝・花きなどの栽培・管理のために使用される除草剤です。
家庭菜園やガーデニングもここに含まれます。
一方、農薬登録されていない除草剤は、道路・駐車場・グラウンドなどで使用される除草剤です。
農作物や樹木・芝・花きなどの栽培・管理の目的以外で使うものと位置づけられています。
(参考:農林水産省『除草剤の販売・使用について』)
農薬登録されていない除草剤の使用制限
農薬登録されていない除草剤を、農作物や樹木・芝・花きなどの栽培・管理に利用することは、法律で禁止されています。
使用した場合、使用者が罰則の対象となります。
(出典:農林水産省『除草剤の販売・使用について』)
見分け方も、同じ資料に示されています。
- 農薬登録のある除草剤:容器・包装に「農林水産省登録第○○○○○号」の記載がある
- 農薬登録されていない除草剤:容器・包装と店舗の見やすい場所に「農薬として使用することができない」旨の記載がある
ここで、店頭でよく見かける「非農耕地専用」という表記に触れておきます。
農林水産省は、この表現が「農耕地でなければ使用することができる」との誤解を与える事例が発生しているとしています。
そのうえで販売者に対し、この表現を用いた表示を控えるよう求めています。
(参考:農林水産省『除草剤の販売・使用について』)
「農耕地ではないから大丈夫」という判断はしないでください。
分かれ目は、そこで植物を育てて(管理して)いるかどうかです。
【ルール3】撒いてはいけない場所を避ける
農薬登録のある除草剤であっても、どこにでも撒けるわけではありません。
ラベルに書かれた適用の範囲を超える場所には使えません。
特に次の場所は、撒く前にいったん立ち止まってください。
- 庭木・花壇・芝生など、植物を育てている場所
- 家庭菜園・畑・田んぼとその周辺
- 池・川・用水路など、水に近い場所
- 雨で薬剤が下へ流れ出る傾斜地
自分の敷地であっても、隣地や水路へ流れ出れば、影響は敷地の外に及びます。
撒くタイミングの3つの条件
いつ撒くかは、暦ではなく次の3つで決めます。
【ルール4】草丈が高いときの扱いはラベルで決まる
「雑草を刈ってから撒くのか、生えたまま撒くのか」は、よくいただく疑問です。
これも製品ごとに違い、ラベルの使用方法に書かれています。
雑草が伸びた状態での使用を想定していない製品もあります。
先に草刈りをする場合、刈った草の処理方法は市町村ごとに異なります。
(※草刈り後の刈った草はそのまま放置してもいい? のページでご説明していますので、ご参照ください。)
【ルール5】風のない日を選び、雨の予報を確認する
農林水産省は、散布を行う天候・時間帯について目安を示しています。
無風または風が弱いときなど、周辺近隣に影響が少ないタイミングを選ぶことです。
(参考:農林水産省『除草剤の販売・使用について』)
同省は、飛散による被害の例を2つ挙げています。
1つは、強風時の散布により、隣接するほ場の小麦が黄化・枯死した事例です。
もう1つは、隣接する畑地での散布による飛散で、稲の葉が変色し生育不良となった事例です。
(参考:農林水産省『除草剤の販売・使用について』)
強い雨が予想される日も避けてください。
撒いた直後に大量の雨が降ると、薬剤が地面にとどまらず流れ出るおそれがあります。
【ルール6】散布の前に近隣へ知らせる
散布の前に、公的な資料がはっきりと求めている手順がもう一つあります。
農林水産省は、散布の前に周辺住民等へ周知することを挙げています。
伝える内容は、使用の目的・散布日時・種類・使用者等の連絡先です。
十分な時間的余裕をもって、幅広く知らせてください。
(参考:農林水産省『除草剤の販売・使用について』)
農林水産省と環境省の通知も、住宅地等での農薬使用について同じ内容を示しています。
さらに、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令の第6条は、次のように定めています。
住宅の用に供する土地及びこれに近接する土地において農薬を使用するときは、農薬が飛散することを防止するために必要な措置を講じるよう努めなければならない
農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成15年農林水産省・環境省令第5号)第6条
(引用元:農林水産省『住宅地等における農薬使用について』)
住宅地での散布は、この省令が直接想定している場面です。
顆粒の除草剤の撒き方|5つのステップ
ここからは実際の作業手順です。
順番どおりに進めれば、初めての方でも大きな失敗は避けられます。
【ステップ1】面積を測り、必要量を計算する
除草したい場所の縦と横を測り、面積(㎡)を出します。
次にラベルで1㎡あたりの使用量を確認し、面積を掛けて必要量を計算します。
使用量は、必ずラベルの数字を使ってください。
多く撒けばよく効くというものではありません。
記載された量を超える使い方は、基準違反にあたります。
【ステップ2】保護具を着ける
肌の露出を避けるため、長袖・長ズボン、手袋、マスク、保護メガネを用意します。
農薬取締法は、農薬の使用上の注意事項を容器・包装に表示することを義務づけています(第16条)。
(参考:農林水産省『農薬取締法』)
どの保護具が必要かは製品ごとに指定されているため、作業前に必ずラベルを読んでください。
作業のあとに行うこと
作業後は手や顔を洗い、うがいをしてください。
体調に変化があった場合は、自己判断で対処せず、医療機関を受診してください。
【ステップ3】散粒機に薬剤を入れる
計算した量を散粒機に移します。
こぼれても片付けやすいよう、コンクリートの上やシートの上で作業すると安心です。
【ステップ4】十字撒きでムラなく撒く
ムラができると、薬剤が届かなかったところから雑草が出てきます。
これを防ぐのが、縦と横の二方向に分けて撒く「十字撒き」です。
まず総量の半分を、敷地の縦方向に歩きながら撒きます。
次に残りの半分を、横方向に歩きながら撒きます。
撒いた場所をなるべく踏まないよう、後ずさりしながら進むと均一に仕上がります。
【ステップ5】記録・後片付け・保管
作業が終わったら、使った内容を書き留めておきます。
農林水産省と環境省の通知は、使用した内容の記録と一定期間の保管を求めています。
記録する項目は、使用した年月日・場所・対象、農薬の種類または名称、単位面積あたりの使用量または希釈倍数です。
(参考:農林水産省『住宅地等における農薬使用について』)
記録があれば、近隣から問い合わせがあったときに、何をいつ使ったかを説明できます。
散粒機の手入れは、製品の取扱説明書に従ってください。
残った薬剤は、ラベルの貯蔵上の注意事項に従って保管します。
空容器と使い残しの処分について
空容器や使い残しの処分方法は市町村ごとに異なります。
お住まいの自治体のルールを確認してください。
散粒機の選び方
手で撒くとどうしてもムラができるため、散粒機を使うと均一に撒きやすくなります。
散布する面積と地面の状態で選びます。
表2: 散粒機のタイプと向いている場所
| タイプ | 使い方 | 向いている場所 |
|---|---|---|
| 手持ち式 | 片手で持って振る、またはハンドルを回す | 家の周り、通路、小さな庭 |
| 手押し式 | 車輪の付いた本体を押して歩く | 平坦で広い庭、駐車場 |
| 背負い式 | 背負って歩きながら散布する | 広い敷地 |
※タイプの呼び方や仕様はメーカーによって異なります。
家庭の庭や駐車場であれば、手持ち式で足ります。
家族・ペット・植物・近隣への配慮
除草剤を管理された範囲内にとどめることが、配慮の基本になります。
子どもとペットがいる場合
散布した場所には、当日は立ち入らせないようにします。
農林水産省と環境省の通知は、散布時や散布直後に、使用者以外の者が散布区域内へ立ち入らないよう措置することを求めています。
立て看板の表示や、立入制限範囲の設定などが挙げられています。
(参考:農林水産省『住宅地等における農薬使用について』)
家庭でも、撒いた範囲が分かるように印を置いておくと安心です。
万が一、口に入れた疑いがある場合は、自己判断で処置をせず、すぐに医療機関へご相談ください。
ペットの場合は、動物病院へご相談ください。
同通知は、体調不良等の相談があった場合の紹介先も挙げています。
農薬中毒の症状に詳しい病院や、公益財団法人日本中毒情報センターの相談窓口です。
庭木・花壇・芝生の近くでは撒かない
ここは、効き目ではなく法律の話です。
農薬取締法は「農薬」を定義するにあたり、農作物に樹木および農林産物を含めて「農作物等」としています(第2条第1項)。
つまり、庭木も法律上は「農作物等」に含まれます。
(参考:農林水産省『農薬取締法』)
農林水産省も、同じ内容を明記しています。
農薬登録されていない除草剤を、樹木・芝・花きなどの栽培・管理に利用することは、法律で禁止されています。
(参考:農林水産省『除草剤の販売・使用について』)
庭木の根元、花壇のふち、芝生の中の雑草に、農薬登録のない除草剤を使うことはできません。
農薬登録のある除草剤を使う場合も、その植物に適用があるかをラベルで確認してください。
適用が確認できないときは、手で抜くのが確実です。
近隣への飛散を防ぐ
飛散への対策は、【ルール5】と【ルール6】で挙げた内容がそのまま当てはまります。
無風または風の弱い日を選ぶこと、事前に周辺へ知らせること、使った内容を記録しておくことの3つです。
隣地との境界に近い場所ほど、慎重に判断してください。
よくある失敗と対処
最後に、つまずきやすい場面を4つ挙げます。
生い茂った雑草に撒いたのに枯れない
ラベルが想定している使い方と、実際の使い方がずれている可能性があります。
適用の範囲・使用方法・使用時期をもう一度確認してください。
刈ってから撒くかどうかも、ラベルの記載に従います。
まだらに雑草が生えてくる
薬剤の密度にムラがあると、薄いところから雑草が出てきます。
散粒機を使い、【ステップ4】の十字撒きを徹底してください。
隣家の植物が枯れてしまった
風による飛散か、雨による流出が考えられます。
無風または風の弱い日を選び、雨の予報を確認してください。
散布の前に周辺へ知らせておくことも、トラブルを防ぐ助けになります。
大切にしていた庭木が弱った
樹木は法律上「農作物等」に含まれます。
その除草剤に樹木への適用があるか、そもそも農薬登録があるかを確認してください。
適用のない場所には使わず、手で抜く方法に切り替えます。
まとめ
顆粒の除草剤を安全に使うための要点は、次の3つです。
- 撒く前に、ラベルの記載と農薬登録の有無を確認する
- 風のない日を選び、事前に近隣へ知らせ、使った内容を記録する
- 庭木・花壇・芝生には、適用のある除草剤しか使えない
除草剤で対応できる範囲には限りがあります。
面積が広い場合や草丈が高い場合は、先に草刈りが必要になります。
自分での作業が難しいと感じたら、業者に依頼するという選択肢もあります。
(※100坪の草刈りを業者に依頼した場合の料金 のページでご説明していますので、ご参照ください。)
空き家や空き地で除草剤を使う場合は、管理上の注意点が別にあります。
(※空き家の草刈り後に除草剤を使う注意点は? のページでご説明していますので、ご参照ください。)
参考文献
- 農林水産省『除草剤の販売・使用について』 https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/herbicide.html
- 農林水産省『住宅地等における農薬使用について』(平成25年4月26日付け25消安第175号・環水大土発第1304261号) https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tekisei/jutakuti/20130426tuchi.html
- 農林水産省『農薬取締法』(昭和23年法律第82号)本文 https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_kaisei/attach/pdf/index-21.pdf
- 独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)『登録・失効農薬情報』 https://www.acis.famic.go.jp/toroku/
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