抜根を自分でやる方法

はじめに

はじめに

庭に残った切り株を、自分で抜いてしまおうと考えていませんか。

抜根(ばっこん)は、切り株を地中の根ごと掘り起こして取り除く作業です。

「スコップだけで抜けるのだろうか」と迷っていませんか。

この記事では、抜根に使う道具と作業の手順、作業中に気をつけたいことを整理します。

この記事が対象とするのは、すでに伐採されて残っている切り株です。

立ち木を自分で切り倒す方法は扱いません。

倒れる方向を管理できない場合や、周囲に建物・道路・電線がある場合は、伐採を行う事業者にご相談ください。

自分でやれるかどうかを見きわめる

自分でやれるかどうかを見きわめる

道具をそろえる前に、自分の現場が自分でやれる条件かどうかを確かめます。

主な目安は、切り株の太さと、作業する場所の広さです。

ただし、この2つだけで難易度が決まるわけではありません。

土質や石の有無、根の広がり方、傾斜、埋設物、周囲の構造物によって難易度は変わります。

使える道具や、作業にあてられる人数と日数も、必要な手間を左右します。

切り株が太いほど作業量は急に増える

抜根の手間は、切り株が太くなるほど急に増えます。

森林整備保全事業に用いる公的な積算基準でも、太さの区分が1つ上がると作業量が数倍になることが示されています。

ただし、この基準は森林での作業を対象としたものです。

住宅の庭にそのまま当てはまる数値ではありません。

(参考:中部森林管理局『森林整備保全事業標準歩掛 第1編 共通工・第2編 治山』令和8年4月・2026年8月時点)

区分ごとの数値と基準の詳細は、抜根とは?伐採との違いと必要になる場面で扱っています。

作業を始める前に、切り株の切り口の直径を測っておいてください。

太さが分かれば、作業量のおおよその見当がつきます。

ただし、直径だけで必要な日数や安全性が確定するわけではありません。

作業する場所に必要な広さ

切り株の周りには、掘った土を仮置きする場所が必要です。

掘り出す土の量は、切り株の大きさに応じて増えていきます。

土を戻すまで置いておける場所がないと、作業の途中で行き詰まります。

引き上げる道具を使う場合は、その道具を据える余地も必要です。

架台を組む場合、切り株の真上に脚を置けるだけの空間が要ります。

塀や建物の基礎、擁壁が近い場合は、掘る範囲そのものが制限されます。

判断の目安

以下の項目を作業前に確認してください。

表1: 自分で進める場合と業者への相談を検討する場合

確認する項目自分で進めやすい業者への相談を検討する
掘った土の置き場敷地内に確保できる確保できない
塀・基礎・擁壁との距離離れている接している
道具を据える空間切り株の真上に置ける置けない
埋設物の位置図面や表示で特定できる分からない
作業する人数2人以上で作業できる1人しかいない
作業にあてられる日数複数日を確保できる1日で終わらせたい

1つでも右側に当てはまる場合、無理に進めないでください。

途中で止まると、掘った穴が開いたままになります。

抜根に使う道具

抜根の道具は、役割で3つに分かれます。

掘る・切る道具、引き上げる道具、そして身につけるものです。

掘る・切る道具

抜根のために掘る・切るツール

土を掘り、根を切るための道具です。

抜根の作業時間の大半は、この工程に使われます。

表2: 掘る・切る道具

道具役割
剣先スコップ切り株の周りの土を掘る
つるはし硬い土を崩す。根の下に差し込んでてこにする
根切り土の中の根を切る
剪定のこぎり掘り出して露出した根を切る
ハンマー抜いた切り株についた土を落とす

土がついたままの根は、のこぎりの刃を傷めます。

根が見えてきたら、土を落としてから切ってください。

引き上げる道具

引き上げる道具

掘り終えた切り株を持ち上げるための道具です。

主に使われるのは、ハイリフトジャッキとチェーンブロックの2つです。

表3: 引き上げる道具

道具力のかけ方必要なもの
ハイリフトジャッキ下から押し上げる沈み込みを防ぐ敷板
チェーンブロック上から吊り上げる用途と定格荷重が示された吊り上げ用の架台、適合するスリングやシャックル

支点は自作しないでください‼

支点は自作しないでください‼

チェーンブロックは、吊り下げる支点があってはじめて機能します。
単管パイプなどを組んだ自作の三脚は使わないでください。
建物・樹木・フェンスなど、許容できる荷重が確認できないものも支点にできません。
用途と定格荷重がメーカーから示されている吊り上げ用の架台と、適合する吊り具を使ってください。

耐えられる重さは、最も弱い部分で決まります。

チェーンブロック本体の定格が足りていても、ほかが弱ければそこから壊れます。

架台、接合部、スリング、シャックル、脚を置く地盤のすべてが対象です。

見た目が丈夫そうかどうかでは判断できません。

支点・接合部・吊り具・地盤を含めた全体の強度を確認できない場合は、自分で吊り上げず業者にご相談ください。

ジャッキについても、荷を支えたまま保持する使い方はしないでください。

身につけるもの(手工具を使う場合)

身につけるもの(手工具を使う場合)

抜根では、土や木片が飛び、刃物を扱います。

以下は作業中ずっと身につけてください。

  • 手袋(滑りにくいもの)
  • 保護メガネ
  • 長袖・長ズボン
  • 底の厚い靴
  • 帽子

軍手は、金属のチェーンやワイヤーを扱うときに滑ることがあります。

引き上げる道具を使う場合は、滑りにくい手袋を選んでください。

身につけるもの(チェーンソーを使う場合)

通常の長ズボンや帽子は、チェーンソー用の装備の代わりになりません。

厚生労働省は、チェーンソーによる伐木等作業の保護具を挙げています。

下肢の切創防止用保護衣、衣服、手袋、安全靴等の履物の4つです。

あわせて、保護帽、保護網・保護眼鏡、防音保護具が示されています。

(参考:厚生労働省『「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」の概要』・2026年8月時点)

チェーンソーを使う場合は、切創防止用の防護ズボンまたはチャップスを着用してください。

これらをそろえられない場合は、チェーンソーを使わない方法を選んでください。

引き上げる道具は、用途を確かめてから使う

切り株を引き上げる道具は、どれでも抜根に使えるわけではありません。

手動チェーンブロックの取扱説明書には、使用制限として次の記載があります。

チェーンブロックは、人間の手動力で荷を垂直に上下させる用途にご使用ください。

象印チェンブロック株式会社「手動チェーンブロック C21型 取扱説明書」

同じ取扱説明書は、作業中の注意事項として次を挙げています。

  • 地球づりをしないこと
  • 斜め引きをしないこと
  • フックや本体を支点にして使用しないこと
  • 荷が落下するような衝撃荷重の操作をしないこと

(参考:象印チェンブロック株式会社『手動チェーンブロック C21型 取扱説明書』・2026年8月時点)

根が地中に残った切り株は、地面から動かない物に近い状態です。

そのため、使う型式で抜根に使ってよいかを、メーカーまたは借りる先に確認してください。

確認できない場合は、自分で引き上げないでください。

道具を借りるときの確認事項は、抜根の道具はレンタルできる?借りられる場所と確認することで扱っています。

道具のそろえ方

道具は、購入するかレンタルするかの2つの方法でそろえられます。

判断の分かれ目は、今後も同じ作業をするかどうかです。

スコップやのこぎりは、庭の手入れで繰り返し使えます。

一方、ジャッキやチェーンブロックは、抜根が終わると使う機会が限られます。

1回限りの作業であれば、レンタルという選択肢もあります。

抜根の手順

抜根は6つの工程に分かれます。

工程を飛ばすと、後戻りが必要になります。

【ステップ1】埋設物と作業環境を確認する

【ステップ1】埋設物と作業環境を確認する

掘り始める前に、地中に何があるかを確かめます。

根は、水道管やガス管、排水管、電線の周囲にも伸びます。

図面や現地の表示で位置を特定できない場合は、掘り始めないでください。

ガスと電気は供給している事業者に、水道と下水は自治体または管理者に照会してください。

窓口は地域や設備によって異なります。

切り株や根が埋設物に接している可能性がある場合は、自分で引き抜かないでください。

設備の管理者と業者に相談してから進めます。

埋設物については、抜根とは?伐採との違いと必要になる場面でも扱っています。

あわせて、切り株に虫や巣がついていないかを確認してください。

作業する日の天候と暑さも、事前に確かめておきます。

【ステップ2】切り株の高さを確かめる

幹が少し残っていれば、切り株を動かすときのてことして使えます。

地際まで切られている場合は、てこが使えません。

その場合は掘る範囲を広げ、根を大きく露出させてから作業します。

なお、てこにするために立ち木を自分で切り倒すことは、この記事では扱いません。

倒れる方向、周囲への影響、退避の経路を管理する必要があるためです。

【ステップ3】切り株の周りを掘る

【ステップ3】切り株の周りを掘る

切り株から少し離れた位置から掘り始めます。

切り株にぴったり寄せて掘ると、根の広がりが分からないまま作業を進めることになります。

円を描くように、外周から中心へ向かって掘り進めてください。

掘った土は、シートや容器の上など一箇所にまとめておきます。

広く散らすと回収しにくくなります。

芝や砂利が混ざったり、一部を失ったりする原因にもなります。

【ステップ4】根を切る

土から出てきた根を、外側の細い根から順に切ります。

切り株が安定した状態を保つためです。

太い根は、露出させてから切ってください。

土に埋まったまま切ろうとすると、刃が土に当たります。

チェーンソーを使う場合は、刃やガイドバーが土や地面に当たらない状態を保ってください。

安定した足場で、両手で保持できない姿勢では使わないでください。

すべての根を切る必要はありません。

切り株が動くようになった時点で、次の工程に移れます。

【ステップ5】引き上げる

【ステップ5】引き上げる

この工程に進む前に、使う道具が抜根に使ってよい型式かを確認してください。

確認できていない場合は、ここから先に進まないでください。

また、道具の定格荷重と切り株の重さを見比べても、判断はできません。

作業中にかかるのは、切り株の重さではないからです。

根が地中に残っている間は、根と土の抵抗が加わります。

この抵抗は外から見て分からず、掘り出した後の重さからも計算できません。

定格荷重の範囲に収まるかどうかを、自分で見積もらないでください。

手ごたえが急に重くなったときは、いったん力を抜いて中止してください。

道具を使って切り株を持ち上げます。

ジャッキの場合は、沈み込まないよう下に板を敷いてください。

チェーンブロックの場合は、架台を切り株の真上に据えます。

いずれの場合も、一度で抜こうとしないでください。

力をかけると、まだ切れていない根の位置が分かります。

ここで、力をかけたまま切り株に近づかないでください。

根を確かめたり切ったりするときは、いったん力を完全に抜きます。

切り株が地面で安定してから作業してください。

この繰り返しで、少しずつ抜いていきます。

【ステップ6】埋め戻す

【ステップ6】埋め戻す

切り株を取り除くと、その体積の分だけ地中に空間が生じます。

掘った土をそのまま戻すだけでは、後で地面が沈みます。

土は一度に入れず、数回に分けて入れてください。

そのつど締め固めると、沈み込みを抑えられます。

土が足りない場合は、補充してから仕上げます。

この方法が使えるのは、花壇や植栽地として使う場合です。

駐車場や舗装の下、物置や構造物の基礎に近い場所では、足で踏み固めるだけでは沈下を管理できません。

荷重がかかる場所に仕上げる場合は、外構を扱う業者にご相談ください。

抜いた切り株の扱いは、市町村によって異なります。

お住まいの市町村の廃棄物担当部署にご確認ください。

埋め戻したあとに防草シートを敷く予定がある場合は、防草シートの選び方を先に確認しておくと手戻りがありません。

駐車場として使う場所であれば、駐車場の草刈りもあわせてご覧ください。

作業中の安全

抜根では、大きな力を扱い、刃物を使い、夏場は暑い環境で作業します。

事前に把握しておきたい点を4つ挙げます。

【リスク1】引き上げるときに力が集中する

切り株を引き上げるとき、道具には大きな力がかかります。

その力が急に抜けると、道具や切り株が動きます。

引き上げ作業中の安全

吊り上げた切り株やジャッキの真下に、体や手足を入れないでください。
張力がかかっている間は、切り株・チェーン・ワイヤー・架台に近づかないでください。
動いたり破断したりしたときの方向を避けます。
架台やジャッキが傾いた場合は、力を抜いて一度中断してください。
地面が柔らかいと支点が沈みます。
敷板を使って接地面を安定させてください。
引き上げた状態のまま、その場を離れないでください。

作業は2人以上で行うと、力をかける人と周囲を見る人を分けられます。

【リスク2】チェーンソーを使う場合

太い根を切るために、チェーンソーを使う場面があります。

チェーンソーによる作業には、法令上の定めがあります。

労働安全衛生法第59条第3項に、特別の教育についての定めがあります。

事業者は、危険または有害な業務に労働者をつかせるとき、特別の教育を行う必要があります。

対象となる業務は労働安全衛生規則第36条に定められています。

その中に、チェーンソーによる伐木が含まれます。

(参考:厚生労働省『労働安全衛生法における特別教育の概要』・2026年8月時点)

法令上の定めについて

この定めは、事業者が労働者を業務に就かせる場合を対象としています。
個人が自分の敷地で作業する場合の扱いについては、ここでは判断を示しません。
適用の有無にかかわらず、チェーンソーは扱いを誤ると大きなけがにつながる道具です。
切創防止用の防護ズボンまたはチャップスを用意できない場合は、使用しないでください。
取扱説明書の記載に従い、操作の経験がない場合も使用を控えてください。

【リスク3】切り株に生き物がいる場合

【リスク3】切り株に生き物がいる場合

伐採から時間が経った切り株には、虫が入り込んでいることがあります。

作業前に、切り株の割れ目や地際に巣や虫がいないかを確認してください。

見つけた場合は、その場で作業を中止してください。

駆除の方法は、対象となる生き物によって異なります。

お住まいの市町村の担当窓口か、駆除を行う事業者にご相談ください。

刺されたり咬まれたりした場合は、自己判断で処置せず医療機関を受診してください。

【リスク4】暑い時期の作業

抜根は、掘る・切る・持ち上げるという体を使う作業が続きます。

環境省は、熱中症を引き起こす条件として、環境・からだ・行動の3つの要因を挙げています。

環境の要因には、気温が高いこと、湿度が高いこと、風が弱いことが含まれます。

同省は、無理をせず徐々に体を暑さに慣らすこと、体調の悪いときは特に注意することを呼びかけています。

(参考:環境省『熱中症予防情報サイト』)

同サイトでは、地域ごとの暑さ指数の実況と予測を確認できます。

作業する日と時間帯を決めるときの材料になります。

体調がすぐれない日は、作業を見送ってください。

熱中症を疑ったときの判断

環境省は、熱中症を疑ったときの手順として、涼しい場所へ避難し、衣服をゆるめて体を冷やすことを挙げています。
呼びかけに応えない場合は、救急車を呼ぶよう示しています。
呼びかけに応えても自力で水分をとれない場合は、すみやかに医療機関へ向かうよう示しています。
反応がおかしいときや吐き気があるときに、口から水分を飲ませることは避けるよう記載されています。
(参考:環境省『熱中症予防情報サイト』)

うまく進まないときの対処

うまく進まないときの対処

手順どおりに進めても、切り株が動かないことがあります。

多くの場合、原因は掘り方ではなく、切れていない根の存在です。

引き上げても動かないとき

力をかけても切り株が持ち上がらない場合、どこかに根が残っています。

まず、力を完全に抜いて切り株を地面に下ろしてください。

張力がかかったまま近づいて確認することはできません。

下ろしてから、地面が持ち上がっていた箇所や、張っていた根の向きを手がかりに掘り直します。

真下に伸びる根は、掘っただけでは見えません。

掘る範囲を広げ、株の下側まで土を取り除いてから探します。

力任せに引き上げ続けると、架台や吊り具に無理がかかります。

動かないときは、力をかけるのではなく、根を探して切ってください。

その日のうちに終わらないとき

抜根は、掘り始めてから根の広がりが分かる作業です。

想定より時間がかかることを前提に、中断する場合の手順を決めておいてください。

作業を中断するときは、以下の状態にしてから離れます。

  • 吊り具の張力を抜き、切り株を地面に下ろす
  • 掘った穴に、板やシートなどのふたをする
  • 架台やジャッキを立てたままにしない
  • 刃物を穴の周りに置いたままにしない

穴を開けたまま放置すると、つまずくおそれがあります。

雨が降ると、掘った面が崩れて掘り直しになります。

まとめ

まとめ

抜根を自分で行うときの要点を3つにまとめます。

1つめは、引き上げる道具は用途を確かめてから使うという点です。

吊り上げ用という表示や定格荷重の表示だけでは、抜根に使えるとは限りません。

支点を自作せず、使う型式について確認できない場合は、自分で引き上げないでください。

2つめは、張力をかけたまま切り株に近づかないという点です。

根を探すときも切るときも、いったん力を完全に抜いて地面に下ろします。

3つめは、チェーンソーを使う場合は装備が変わるという点です。

通常の長ズボンは代わりになりません。

切創防止用の防護ズボンまたはチャップスを用意できない場合は使わないでください。

切り株の太さや作業場所の条件によっては、自分で進めるのが難しい場合もあります。

そのときは、無理に進めず作業を中断する判断も必要です。


参考リンク

出典URL
中部森林管理局『森林整備保全事業標準歩掛 第1編 共通工・第2編 治山』令和8年4月https://www.rinya.maff.go.jp/chubu/apply/publicsale/keiyaku_info/sonota/other/sekisan.html
厚生労働省『「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」の概要』https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000600106.pdf
厚生労働省『労働安全衛生法における特別教育の概要』https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001403762.pdf
象印チェンブロック株式会社『手動チェーンブロック C21型 取扱説明書』https://www.elephant.co.jp/files/libs/4687/202112161041192824.pdf
環境省『熱中症予防情報サイト』https://www.wbgt.env.go.jp/
環境省『熱中症環境保健マニュアル』https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_2-3_2-4.pdf

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