生前整理とは

生前整理とは

生前整理とは、何のために、どのようなことをするのでしょうか。

生前整理とは、単に身の回りの「物」を整理するだけでなく、意思や想いといった「心」や財産や書類などの「情報」を整理しながら、自分の人生を振り返り「本当に大切なものは何か」「これからどのように生きていきたいか」を考え、人生の終焉を見据えて、身の回りの整理や準備を行うことです。

本記事では、生前整理の目的、生前整理でおこなうこと、生前整理をする上で障害となることとその解決策をわかりやすくご説明したいと思います。

生前整理の4つの目的

生前整理は、単に身の回りの物を整理するだけでなく、家族への思いやりを示す大切な行為でもあります。

なぜ生前整理をするべきなのか、生前整理をおこなう目的をわかりやすくご説明したいと思います。

【生前整理の目的1】自分らしい最期を迎える

自分らしい最期を迎える

自分らしい最期を迎えるために、生前整理で自分の意思を明確にしておくことは大切です。

自分自身の人生を改めて振り返ってより良く生きるためにも重要なプロセスと言えるでしょう。

意思表示をする

病気や事故などで意思表示ができなくなった場合でも、エンディングノートや遺言書などに記された希望を家族や医療関係者が確認することで、あなたの意思を尊重した対応ができます。

延命治療や臓器提供、介護、葬儀など、あなたが望む形で最期を迎えることができます。

家族への負担を軽減する

財産や資産の情報、各種契約、デジタル資産の管理方法などをまとめておくことで、家族があなたの死後に必要な手続きをスムーズに進めることができます。

また、葬儀や埋葬に関する希望を具体的に記しておくことで、家族があなたの希望に沿った形で葬儀を執り行うことができます。

これらの準備をしておくことで、家族は悲しみながらも、あなたの意思を尊重し、落ち着いて対応することができます。

後悔を減らす

生前整理を通して自分の人生を振り返り、やり残したことはないか、後悔していることはないかを考えることができます。

もしやり残したことがあれば、それを実行に移すことで、後悔のない最期を迎えることができます。

また、大切な人への感謝の気持ちや伝えたいメッセージを書き残すことで、心残りなくこの世を去ることができます。

精神的な安定を得る

死後のことについて考え、準備しておくことで、死への不安や恐怖を軽減することができます。

また、自分の人生を振り返り、感謝の気持ちや達成感を感じることができるため、精神的な安定を得ることができます。

自分らしい生き方を再確認する

生前整理は、自分の人生を振り返り、本当に大切なものは何か、これからどのように生きていきたいかを考える良い機会になります。

自分らしい生き方を再確認し、残りの人生をより充実したものにすることができます。

【生前整理の目的2】家族の負担軽減

家族の負担軽減

遺品整理や手続きなどの負担を軽減し、家族が悲しみに集中できる環境を作ります。

精神的な負担の軽減

あなたの意思が不明確なまま家族が決定を下した場合、後になって「本当にこれで良かったのか」「本人の望んだことだったのか」と罪悪感や後悔を感じることがあります。

生前整理によって意思表示をしておくことで、このような感情を抱く可能性を減らすことができます。

遺品整理の負担軽減

不要な物を処分しておくことで、家族が行う遺品整理の負担を大幅に減らすことができます。

遺品整理は、精神的にも肉体的にも負担の大きい作業です。

【生前整理の目的3】トラブル防止

財産や相続に関する争いを未然に防ぎ、円満な相続を実現します。

財産や遺品の分配について、あなたの意思が明確に示されていれば、家族間での争いを防ぐことができます。

特に、遺産分割協議が不要となる遺言書を作成しておくことは、家族関係を守る上でも重要です。

【生前整理の目的4】感謝の気持ちを伝える

生前整理では、家族への感謝の気持ちを伝えることは、とても大切なことです。

具体的には、以下のようなことに対して感謝の気持ちを伝えると良いでしょう。

日常生活での感謝

  • 家事や育児、介護など、日々の生活を支えてくれたこと
  • 仕事や趣味など、あなたの活動を応援してくれたこと
  • 困った時や悩んでいる時に、話を聞いてくれたり、支えてくれたこと
  • 健康に気を遣ってくれたり、美味しい食事を作ってくれたこと
  • あなたの好きなことを理解し、尊重してくれたこと

人生における感謝

  • 生まれてきてくれたこと、育ててくれたこと
  • 楽しい思い出をたくさん作ってくれたこと
  • あなたの成長を喜んでくれたこと
  • あなたが困難に立ち向かう時に、励ましてくれたこと
  • あなたの人生を豊かにしてくれたこと

具体的なエピソードを交えて感謝を伝える

以下のように具体的なエピソードを交えて感謝の気持ちを伝えるのもよいでしょう。

  • 「いつも美味しいご飯を作ってくれてありがとう。特に〇〇が大好きだったよ」
  • 「〇〇の時に励ましてくれて、本当に助かったよ。おかげで乗り越えられた」
  • 「〇〇で一緒に過ごした時間は、私の宝物だよ」

生前整理で行う6つの整理

生前整理は、財産や所有している「物」・意思や想いといった「心」・財産や書類などの「情報」を整理する作業です。

作業を通じて自分の人生を振り返り「本当に大切なものは何か」「これからどのように生きていきたいか」を考え、人生の終焉を見据えて、身の回りの整理や準備を行うことでもあります。

それでは、生前整理でどのようなことをおこなうのかをわかりやすくご説明したいと思います。

【整理1】物の整理

物の整理

生前整理では「すぐに処分するもの」と「処分を検討するもの」に分けて整理を進めていくのがよいでしょう。

すぐに処分すべきもの

自分にとっても残された人にとっても明らかに不要なものは処分しておきましょう。

すぐに処分するものは定期的に処分するようにしましょう。

  • 期限切れのもの:賞味期限切れの食品、使用期限切れの医薬品、古いクーポン券など
  • 壊れて使えないもの:修理しても使わない家電、壊れた家具、ひび割れた食器など
  • 明らかに不要なもの:読み終えた雑誌や新聞、溜まったDMやチラシ、使わない文房具や雑貨など

処分を検討するもの

遺品として残したいもの、価値のあるものは、家族に相談したり、専門家に査定してもらったりしてから処分をするか残すかを決めましょう。

あなたにとっては不要なものでも、ご家族にとって大切な思い出の品かもしれません。

思い出の品はあなたの判断で処分せず、必ず家族にも相談してから処分するかを決めましょう。

以下のようなものは検討してから処分をするか残すかを決めましょう。

  • 長期間使用していないもの:数年以上着ていない衣類、使っていないバッグや靴、趣味の道具、古い家電製品など
  • 重複しているもの: 同じような用途の調理器具、食器、タオル、文房具など
  • デジタルデータ:パソコンやスマホに保存された古い写真、動画、書類など。必要なものはバックアップを取り、不要なものは削除しましょう。
  • 高価なもの:貴金属、ブランド品、骨董品など。価値が分からなければ専門家に査定してもらうのも良いでしょう。
  • 思い出の品:写真、手紙、アルバムなど。デジタル化したり、一部を残して処分したりするのも良いでしょう。

【整理2】財産の整理

銀行口座、証券口座、保険証券、不動産、自動車、貴金属などの財産をリスト化した「財産目録」を作成しましょう。

資産だけではなく、負債(住宅ローン、借入金など)も忘れずに記載しましょう。

暗証番号やID、パスワードなどもまとめておくと、ご家族が手続きをする際に役立ちます。

インターネットバンキングの利用方法なども家族に伝えておくと良いでしょう。

【整理3】医療・介護の意思表示

生前整理で医療・介護の意思表示をする場合、主に以下の事柄に関して意思表示をしておくことが重要です。

延命治療について

  • 人工呼吸器や胃ろうなど、生命維持のための医療措置をどこまで望むか
  • 心肺停止時の蘇生措置(心臓マッサージやAEDなど)を望むか
  • 緩和ケア(苦痛を和らげ、QOLを高めるためのケア)を希望するか

臓器提供について

  • 臓器提供を希望するか
  • どの臓器を提供したいか

介護について

  • 介護が必要になった場合、自宅で介護を受けたいか、施設に入りたいか
  • どのような介護サービスを利用したいか
  • 介護をしてくれる人に望むこと

【整理4】葬儀・埋葬の準備

生前整理の一環として、葬儀や埋葬に関する希望を整理し、家族と共有しておくことは、あなたの意思を尊重し、後悔のない最後を迎えるためにも大切なことです。

葬儀や埋葬に関するあなたの希望を明確にしておくことで、残された家族があなたの意思を尊重し、スムーズに葬儀や埋葬の手続きを進めることができます。

葬儀形式

  • 宗教形式(仏式、神式、キリスト教式、無宗教など)
  • 規模(家族葬、一般葬、社葬など)
  • 葬儀社
  • 戒名や祭壇、供花などの希望
  • 葬儀費用の上限

埋葬方法

  • 埋葬場所(自宅の墓、公営墓地、寺院墓地、永代供養墓、散骨など)
  • 墓石のデザイン
  • 埋葬費用の上限

その他

  • 遺影に使いたい写真
  • 葬儀で流してほしい音楽
  • 参列者への挨拶状や香典返しの希望
  • 遺品や遺骨の取り扱い

【整理5】デジタル遺品の整理

デジタル遺品の整理

国民生活センターには「デジタル遺品」(デジタル環境を通してしか実態がつかめない遺品)について、遺族から、IDやパスワードが分からず定期購入や月額制のサービスをスムーズに解約できない、ロックが解除できず端末内の電子マネーやネット取引の状況が把握できないなどの相談が寄せられているそうです。

生前整理の一環として、端末のロック解除方法、退会が必要なサイトとそのIDやパスワード、ネット関連の金融資産などについてエンディングノートなどに記し、家族などに伝える手段を講じておきましょう。

先日父が亡くなった。父が契約していた通販サイトの有料会員を解約したいが、IDやパスワードが分からないため、会員ページにログインできず、手続きが何もできない。(契約当事者:80歳代 男性,相談者:50歳代 女性)

独立行政法人国民生活センター 生前整理 デジタル遺品リストを作りましょう 事例1より

亡くなった夫が利用していた決済アプリの残高が10万円あることが分かった。しかし、夫のスマートフォンのロックが解除できないため、詳細が確認できない。(契約当事者:70歳代 男性,相談者:60歳代 女性)

独立行政法人国民生活センター 生前整理 デジタル遺品リストを作りましょう 事例2より

国民生活センター:生前整理 デジタル遺品リストを作りましょう

【整理6】エンディングノートの作成

家族があなたの死後に必要な手続きをスムーズに進めることができるように、エンディングノートを作っておきましょう。(『遺品整理でエンディングノートが重要な理由』で詳しくご説明していますので、是非ご参照ください。)

家族がすぐに見つけられる場所に保管します。

エンディングノートを書く過程で自分の人生を振り返り、大切な人への感謝の気持ちや伝えたいメッセージを書き記すことができます。

また、自分史や趣味、好きなことなどを書き残すことで、あなたの人生の記録を残すことができます。

エンディングノートには、氏名、生年月日、住所、本籍、連絡先、家族構成、親族の連絡先、勤務先や所属団体、友人・知人の連絡先といった基本情報に加えて、上述しました「財産」「医療・介護」「葬儀・埋葬」「デジタル遺品」などに関することも記載しておきましょう。

また、ペットがいる場合は、ペットの種類、名前、年齢、ペットの世話をしてほしい人、ペットの飼育費用などに関しても書いておくとよいでしょう。

その他には、家族や友人へのメッセージ、自分の経歴、趣味、好きなこと、伝えたいことなど、あなたの書きたいことを書いて、定期的に見直し、内容を更新するをおすすめします。

生前整理をする上で5つの「障害となるもの」

生前整理をする上で5つの「障害となるもの」

生前整理をする上で「どうしたらいいの?」「ちょっと辛い・・・」と感じることが出てきます。

ここでは生前整理をする上で障害となるものと、それをどのように解決すればいいのかをわかりやすくご説明したいと思います。

【障害となるもの1】精神的な負担

生前整理は、自身の死を意識せざるを得ないため、精神的な負担が大きくなることがあります。

特に健康なうちに行う場合は、死を意識することで不安や恐怖を感じるかもしれません。

解決策

生前整理を進める中で死を意識し、不安や恐怖を感じるのは自然なことです。

誰しもが経験する感情ですので、家族や友人、信頼できる人にあなたの不安や恐怖を打ち明けてみるのも良いでしょう。

話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることがあります。

【障害となるもの2】物理的な負担

長年生活していると、家の中に物が増え、整理に時間がかかり、体力的に負担になる場合もあります。

その膨大な量の物の中には、価値が分からず、処分に迷う物が出てくることがあります。

解決策

生前整理は無理をせず、ゆっくり自分のペースで進めることが大切です。

大量の物を整理しようと思うと焦る気持ちが出てきますが、焦らず一つずつ進めていく気持ちで整理していきましょう。

価値が分からず処分に迷うものが出てきた場合は、古物商や専門家に意見を聞くのもおすすめです。

【障害となるもの3】やり方が分からない

遺言書の作成、財産や保険の整理、葬儀や墓の準備など、様々な手続きが必要となり、情報収集や手続き自体が複雑で分かりにくいことがあります。

パソコンやスマートフォン内のデータ、SNSアカウントなど、デジタル遺品の整理は、どのように整理すればいいのか方法が分からず困る方もいらっしゃいます。

解決策

遺言書に関しては弁護士・司法書士・行政書士、財産や税に関しては税理士・ファイナンシャルプランナー、葬儀に関しては葬儀社などの専門家への相談するのがよいでしょう。

生前整理のための情報収集の方法は『エンディングノートの書き方に困った時の4つの対処法』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照ください。

【障害となるもの4】家族間の意見の相違

遺品の処分について、家族間で意見が分かれることがあります。

特に思い出の品などは、感情的な対立に発展する可能性もあります。

財産や相続について、家族間で話し合いが難しい場合があります。

特に、遺産分割や遺言書の内容について、トラブルになるケースもあります。

解決策

遺品の処分や財産の分与というのは、非常に難しい問題ですので、簡単に解決できる方法はありません。

じっくり一人ひとりの意見を聞いて、時間をかけて全員が納得できる方法を考えましょう。

あなたの意思を明確にすることで家族間のトラブルを防げる可能性もありますので、なぜそう思うのか、どうして欲しいのかを明確にしておくことが大切です。

【障害となるもの5】時間がない

仕事や介護などで忙しく、生前整理に十分な時間を確保できない場合があります。

解決策

時間が無い場合は、緊急度の高いものから始めて、できることから少しずつ進めていきましょう。

通勤時間や休憩時間などの隙間時間を活用して、エンディングノートを書いたり、必要な書類を整理したりすることができます。

家族と相談したり、生前整理のコンサルタントなどの専門家に依頼する方法もあります。

専門家や家族の協力を得ながら、無理のない範囲で進めていきましょう。

時間がなくて生前整理が出来ないケースへの対処法は『時間がなくて生前整理ができない時の5つの対処法』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照ください。

まとめ

まとめ

本記事では、生前整理の目的、生前整理でおこなうこと、生前整理をする上で障害となることとその解決策を説明させていただきました。

生前整理は、早ければ早いほど良いと言われています。

体力や気力があるうちに、少しずつ進めていきましょう。

また、家族や専門家と相談しながら進めることも大切です。

生前整理は、単に身の回りの物を整理するだけでなく、家族への思いやりを示す大切な行為でもあります。

あなたの意思表示や準備が、家族の負担を軽減し、あなたの死後も安心して暮らしていけるように支えるでしょう。

また、生前整理は、自分の人生を振り返る機会でもあります。

悔いのない人生を送るためにも、ぜひ前向きに取り組んでみてください。

困ったことや不安なことがあれば、一人で抱え込まず、周囲に相談しながら、前向きに進めていきましょう。

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