相続人が一人の場合は、相続人の気持ちの整理が出来たタイミングで遺品整理をおこなっても問題ありませんが、複数の相続人がいる場合には注意が必要です。

遺産分割協議前に、相続人全員の了解をとらずに遺品整理をしてしまうと、思わぬトラブルが起こる可能性があります。

どのようなトラブルが起こる可能性があるのかをわかりやすくご説明したいと思います。

遺産分割協議の前に遺品整理を行うことによって生じる可能性のある法的な問題について、いくつか具体的な例を挙げて説明します。

相続人間の紛争

遺品には「感情的価値があるもの」と「金銭的価値があるもの」があります。

どちらも遺産分割協議前に勝手に遺品整理をしてしまうとトラブルになる可能性があります。

感情的価値のある遺品

複数の相続人が「これは自分の思い出の品だから」と思って自分が相続したいと思う故人の遺品(家族の写真、手紙、記念品など)があったとします。

誰が相続するかについて意見が分かれるような遺品を、先に売却や処分をしてしまうと相続人の間でトラブルになる可能性があります。

金銭的価値のある遺品

一般的には、遺言書で定められていない場合には、貴金属、アート作品、珍しいコレクションなどの価値がある物品は、誰が相続をするか相続人の間で協議をして決めます。

金銭的価値のある遺品を勝手に売却や処分など整理してしまった場合、相続人の間で紛争が引き起こされることがあります。

法的な違反

遺言書が存在する場合、その内容に従って遺産を分配する必要があります。

遺言書の内容を無視して、遺品を勝手に売却や処分など整理してしまった場合、法的な責任を問われる可能性があります。

遺言書に従わなかったことで、他の相続人が損害を受けた場合、彼らは遺言の違反者を訴えることも考えられます。

その場合、損害賠償請求も含まれる可能性があります。

評価額の問題

遺品の中には、価値を正確に評価する必要があるアイテムが含まれている場合があります。

遺言書に評価額が記載されていて、その金額に基づいて相続税が評価されている場合、遺品の売却は税務上でも問題を引き起こす可能性があります。

故人が所有していた美術品などの遺品が相続手続き前に処分されてしまった場合、その正確な市場価値を把握することができず、相続税の計算に影響を及ぼすというケースも考えられます。

また、価値のある遺品が不当に低い価格で売却された場合、他の相続人は金銭的な損失を被ることになり、紛争になることもあります。

重要な文書などの見落とし

故意ではなくとも、遺品整理の過程で重要な文書などを見落としてしまい、それが遺産分割協議に反映されない場合があります。

以下に、どのような文書などの見落としの可能性があるのかを見てみたいと思います。

重要な文書の見落とし

故人が所有していた不動産や銀行口座、株式などに関する文書が、遺品整理の際に見過ごされたり、誤って処分されたりする場合です。

これにより、遺産として存在する財産の全体像が不明確になり、遺産分割協議の時点でこれらの財産が見落とされる可能性があります。

銀行口座や投資の見落とし

故人が複数の銀行口座や投資ポートフォリオを持っていた場合、これらの情報が記載された文書や記録を見落としてしまうことがあります。

特に、デジタル形式で保存された記録やオンラインでのアカウント情報を見落として削除してしまったり処分してしまうことがあります。

生命保険や退職給付の見落とし

故人が生命保険の受取人を指定していたり、退職給付金が支払われるべきであったりする場合、これらの情報が含まれる文書が見落とされることがあります。

これらの資産を受け取る機会を失わないように、物を処分する前にこういった重要書類を整理する必要があります。

遺言書の見落とし

故人が作成した遺言書が遺品の中に隠されていたり、見落とされたりすると、故人の意志に反して財産が分配される可能性があります。

特に遺言書は以下のような場所に隠されていることがありますので、注意深く調べることが重要です。

  1. 金庫やセーフティボックス
    • 家庭用の金庫
    • 銀行や信託会社のセーフティボックス
  2. 個人的な書類の中
    • 重要書類を保管しているファイルキャビネットや書類整理箱
    • デスクやオフィスの引き出し
    • 書類や手紙が入った封筒やフォルダー
  3. 家庭内の隠れた場所
    • 本棚の背後や本の間
    • 寝室のクローゼット、引き出し、下着や靴下が入っている場所
    • 家具の隙間や裏側
  4. パーソナルコンピューターやデジタルストレージ
    • パソコン内の特定のフォルダやデスクトップ
    • USBドライブや外付けハードドライブ
  5. 安全な場所や信頼できる人々のもと
    • 弁護士や会計士、信託会社などの専門家
    • 親しい友人や家族の一員
  6. 個人的な所持品
    • 日記やメモ帳、スケッチブックの中
    • 服のポケットや古い財布
    • 宝石箱や装飾品の入った箱
  7. その他の意外な場所
    • 冷蔵庫やキッチンの棚
    • 工具箱やガレージの棚
    • 家の中や庭の隠れた場所

まとめ

いかがでしたでしょうか。

遺産分割協議前に遺品整理をしてしまうことでのトラブルの可能性をご理解いただけたかと思います。

実際には処分していなくても、一人で勝手に遺品整理をしてしまうことで「本当はもっと現金や貴金属があったのでは?」と他の相続人から疑われることもあるかもしれません。

そういったことが無いように、全ての相続人が納得の上で遺産分割協議が終わった後に遺品整理をおこなわれるのが良いのではないかと思います。