デジタル遺品とは

故人の携帯電話、パソコン、オンラインアカウントにアクセスすることは、今日では遺品整理の一部として重要な課題となっています。

これらのデジタル化された情報をどう取り扱うべきか、一体「デジタル遺品」とは何か、そしてその管理や整理方法について理解を深めることが今ますます重要になっています。

デジタル遺品は現代の遺産相続において避けて通れない課題です。

本記事では、デジタル遺品について分かりやすくご説明したいと思います。

デジタル遺品とは

「デジタル遺品」の定義はありませんが、国民生活センターのホームページで以下のように記されています。

「デジタル遺品」(デジタル環境を通してしか実態がつかめない遺品)

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「デジタル環境を通してしか実態がつかめないもの」とは、物理的な形を持たず、パソコン、スマートフォン、インターネットなどのデジタル機器やネットワーク上にのみ存在する情報やデータのことを指します。

デジタル遺品とは、故人が所有していたパソコン、スマートフォン、タブレットなどのデジタル機器や、インターネット上のサービスに残されたデータ、アカウントなど、故人が残したすべてのデジタル化されたデータと考えることができます。

具体的には、以下で詳しくご説明しますが、写真、動画、音楽、メール、SNSのアカウント以外にも広範囲でさまざまな種類にわたるデジタルデータが対象になります。

これに加えて、パスワードの解除などをおこなう必要があるパソコン、スマートフォン、USBメモリなども「デジタル遺品」の一部として考えても良いと思います。

「相続」ではなく「継承」?

デジタル遺品は、形のない情報やデータであるため、物理的な財産のように分割したり、所有権を明確に移転したりすることが難しいという特徴があります。

「相続」は、民法で定められた法的な手続きに基づいて、財産を分割し、所有権を移転することを指します。

一方、「継承」は、精神的な価値や想いを引き継ぐという意味合いが強く、法的な手続きに限らず、故人の意思や想いを尊重して、デジタル遺品を適切に管理・活用することを表します。

そのため、デジタル遺品は法的な「相続」ではなく、故人の想いや意思を尊重する「継承」という言葉が使われることが多いのです。

デジタル遺品の2つの種類

デジタル遺品の種類は、大きく「オフラインデータ」「オンラインサービス」の2つに分類できると考えられます。

【デジタル遺品1】デジタルデータ

デジタルデータには機器本体や記憶媒体に保存された「オフラインデータ」とSNSやクラウドストレージなどインターネット上のサービスに保存された「オンラインデータ」があります。

オフラインデータ(機器本体や記憶媒体に保存されたデータ)

オフラインデータ

機器本体や記憶媒体などにはいかのようなものがあります。

  • パソコン、スマートフォン、タブレットなどの端末
  • 外付けハードディスク、USBメモリ、SDカードなどの記憶媒体
  • デジタルカメラ、ビデオカメラ、ゲーム機などの機器

これらに記録された以下のようなデータがオフラインデータになります。

  • 写真、動画、音楽ファイル
  • 文書ファイル、プレゼンテーション資料、表計算データ
  • メールデータ、アドレス帳、スケジュール情報
  • ソフトウェア、アプリケーション、ゲームデータ

オンラインデータ(インターネット上のサービスに保存されたデータ)

オンラインデータ
  • クラウドストレージ(Google Drive, OneDrive, Dropboxなど)に保存されたデータ
  • SNS(Facebook, Twitter, Instagramなど)の投稿、写真、動画
  • ブログ記事、ウェブサイトデータ
  • オンラインゲームのキャラクターデータ、アイテム

【デジタル遺品2】オンラインサービス

オンラインサービス

現在はさまざまなオンラインサービスが提供されています。

将来はさらに提供されるサービズが増え、デジタル遺品の対象となるデータもそれに伴ってますます増えていくと思われます。

以下にデジタル遺品となる代表的なオンラインサービスをご紹介します。

コミュニケーション

  • メールアカウント(Gmail, Yahoo!メール, Outlookなど)
  • SNSアカウント
  • メッセージアプリ(LINE, WhatsApp, Messengerなど)

金融

  • オンラインバンキング、証券口座
  • 電子マネー(Suica, PASMO, nanacoなど)
  • 仮想通貨

その他

  • オンラインショッピングサイトのアカウント
  • 動画配信サービス、音楽配信サービスのアカウント
  • ドメイン、サーバー契約

デジタル遺品の生前整理

デジタル遺品の生前整理

自分の死後に、遺族が困らないようにデジタル遺品の生前整理をおこなうことも大切です。

他人には見られたくないデータなどは、その時に削除してしまうのも一つの方法です。

デジタル遺品の生前整理には以下のようなやり方があります。

  • アカウントとパスワードのリストを作成し、信頼できる人に伝える
  • 見られたくないデータは事前に整理・削除する
  • 遺族に引き継ぎたいデータは外付けHDDなどに保存しておく

デジタル遺品整理のやり方

デジタル遺品整理のやり方

先ほどご説明したデジタル遺品を整理・処分することを「デジタル遺品整理」と言います。

デジタル遺品を整理する際には、いくつかのステップと重要なポイントがあります。

まず第一に、故人の持っていたデジタル資産の全体像を把握することから始めます。

スマートフォン、パソコン、タブレットに保存されているアカウント情報を確認し、どのようなサービスを利用していたかリストアップします。

そして、各サービスの利用規約やプライバシーメニューを精査し、アクセス可能かどうか、データの引き継ぎや削除の方法を確認します。

さらに、故人の意向を可能な限り尊重し、プライバシーの保護を考慮して処理を進めます。

また、可能であれば、専門家(弁護士やITコンサルタント)の助けを借りて法令順守を確実にすることが推奨されます。

デジタル遺品整理の大まかな流れは以下のようになります。

  • デジタル機器のパスワードを解除する
  • デジタル機器内のデータを確認し、必要なものを保存する
  • デジタル機器内のデータから、銀行取引、株取引、FX取引、仮想通貨などの電子資産を調査する
  • 必要なデータ(動画・写真・アドレス帳など)をUSBなどに移行する
  • 不要なデータを削除し、機器を初期化する
  • 故人名義のオンラインアカウントを削除・解約する

パソコンが起動しない場合

パソコンが起動しない場合、パソコンの復旧サービスを提供している業者に依頼する方法もあります。

大手企業でも復旧サービスを提供しているところがあります。

デジタル遺品を管理するための法律とルール

デジタル遺品の管理には、様々な法律やルールが関わってきます。

個人情報保護法や著作権法、契約法などが該当するケースも多く、これら法規に基づいた適切な処理が必要です。

例えば、ソーシャルメディアのアカウントは個人のプライバシーを保護するため、他者へのアカウント引き継ぎが制限されている場合があります。

また、クラウドストレージのデータもサービス提供者の規約に沿って処理される必要があります。

したがって、デジタル遺品の継承や削除に関しては、実際に使用していたサービスの利用規約をよく確認することが重要です。

また、遺言書に明確にデジタル遺品の取り扱いを指定しておくことで、法律の適用に伴うトラブルを未然に防ぐことができます。

デジタル遺品整理のポイント

デジタル遺品整理のポイント

デジタル遺品の継承者には、各種データの価値判断やプライバシーの尊重など、多くの要素を考慮する必要があります。

単なる物的遺産とは異なり、デジタル遺品を誤った取り扱いによる法的問題やプライバシー侵害を避けるため、注意深いアプローチが求められます。

【ポイント1】継承と削除の選択

デジタル遺品を整理する上で、継承するか削除するかの判断をすることが求められます。

価値あるデータやアカウントは家族や関係者へと継承することができますが、その際には法令に従い適切な手続きを行う必要があります。

不要なアカウントやデータについては、プライバシーを守るために確実に削除を行うことが重要です。

削除する際には、データが完全に消去されているか確認することがトラブルを未然に防ぐために重要です。

【ポイント2】デジタル遺品の継承手続き

デジタル遺品をスムーズに継承するためには、幾つかの根本的な手続きを把握していることが望ましいです。

まず、故人が使っていたサービスのアカウント情報をまとめたリストを作成し、どのアカウントを残し、どのアカウントを削除するか優先順位をつけることが大切です。

その上で、各プラットフォームにおける継承手続きに沿った行動をすることでスムーズな引き継ぎが実現できます。

【ポイント3】デジタル遺品の活用

継承したデジタル遺品は、新たな活用方法を模索することが可能です。

たとえば、故人が生前に撮影した写真やビデオをデジタルアルバムとしてまとめることや、ブログやSNSでの投稿を思い出として保存することが考えられます。

これらのデータは単なる過去の遺物ではなく、家族にとっての重要な思い出や記念品としての価値を持ち続けることができます。

まとめ

まとめ

本記事では、デジタル遺品について説明させていただきました。

今後デジタル化が進むにつれ、デジタル遺品の種類と範囲はますます拡大していくと考えられます。

デジタル遺品の中には、故人のプライバシーに関わる情報や、金銭的な価値のある情報が含まれる場合があります。

取り扱いには十分注意が必要です。

家族とともにデジタル遺品に関する具体的な準備を進めることで、混乱を未然に防ぎ、大切な情報や思い出を守ることができます。