破産手続が始まった会社の店舗や事務所は、明渡しの期限までに中の物を片付ける必要があります。ただ、店内には売却できる在庫や什器のほか、リース会社の物、従業員の私物、廃棄物として処理する物が混ざっています。順番を誤ると、第三者の物を処分してしまったり、期限の直前に作業が詰まったりするおそれがあります。

本記事は、破産管財人の先生や法律事務所の事務職員の方に向けた記事です。破産会社の店舗・事務所の残置物撤去を当社が担当する場合の段取りを、工程の順にご説明します。何を売却し、返還し、処分するかは先生のご判断によるものとして、当社が準備すること、先生に確認いただきたいことをまとめました。

買取と撤去の役割分担や、見積書と精算の考え方は、「破産管財の動産買取・残置物撤去|依頼の5ステップと見積・精算の考え方」でご説明しています。

破産会社の残置物撤去は、明渡しの期限から逆算して段取りを組みます

破産会社の店舗・事務所の残置物撤去は、明渡しの期限を起点に、確認・見積もり・仕分け・契約・搬出・最終確認の6つの工程を逆算して組みます。工程ごとに判断する方が異なるため、先に担い手を整理しておくと進めやすくなります。

工程主な内容主な担い手
①期限と作業条件の確認明渡しの期限、作業できる日時、搬出経路管財人の先生・貸主様・当社
②物量の確認と見積もり写真か現地で物量を確認し、買取額と撤去費用を見積もる当社
③仕分け方針の決定買取する物、所有者を確かめる物(保留)、廃棄物を分ける管財人の先生(当社は一覧を作成)
④見積書の確認と契約買取・撤去の契約、廃棄物の委託契約管財人の先生と当社・各許可業者
⑤搬出と記録買取品の引取り、廃棄物の搬出、作業の記録当社・各許可業者
⑥最終確認・鍵の返却取り残しの確認、鍵の返却当社・管財人の先生・貸主様

買取品の売却に裁判所の許可が要るかといった手続き上の判断は、先生がおこなわれます。当社は、その判断に使っていただける見積書や一覧を用意し、決まった方針に沿って作業します。

撤去に着手する前に確認しておきたいこと

作業日数や追加費用の多くは、着手前の確認で決まります。ここでは、期限と作業条件、電気などの設備、貸主様の設備との区別の3点を取り上げます。いずれも、先生や貸主様に伺わないと当社では分からない点です。

明渡しの期限と、作業できる日時・搬出の条件

最初に、明渡しの期限と、その期限を動かせる余地があるかを伺います。そのうえで、作業できる日時と搬出の条件を確認します。

  • 商業施設や事務所ビルでは、管理規約で作業できる時間帯や曜日が決まっていることがあります
  • 管理会社への作業申請、エレベーターの予約、共用部の養生が必要な場合があります
  • トラックを停める場所や、エレベーターの有無で、必要な人数と日数が変わります

ビルの管理会社の連絡先が分かれば、あわせてお知らせください。

電気・水道・エレベーターは、撤去が終わるまで使える状態に

電気や水道の契約をいつ解約するかは、先生のご判断です。ただ、照明やエレベーターが使えないと作業に時間がかかり、暗い倉庫では取り残しも起きやすくなります。解約は撤去が終わる日に合わせていただけると、作業を進めやすくなります。

貸主様の設備と、破産会社が持ち込んだ物を分ける

入居時から備え付けられている空調や照明、厨房設備などは、貸主様の設備である場合があります。どこまで撤去するか(造作や内装を含むか)は、賃貸借契約の内容と、先生と貸主様の協議で決まります。

次の借主に設備や内装を引き継ぐ「居抜き」の話がある場合は、その結論が出てから撤去の範囲を確定します。内装の解体や原状回復の工事は動産の撤去とは別の工事のため、日程が重ならないよう調整します。

物量は2tトラック何台分かで見積もります

当社では、残置物の量を2tトラック何台分かに置き換えて、撤去費用を見積もります。先生が現地に行けない場合でも、写真があれば見積もりができます。ここでは、撮っていただきたい場所と、見積もりがずれやすい場所をご説明します。

写真見積もりで撮っていただきたい場所

部屋ごとの全体と、物が多い場所の奥行きが分かる写真があると、見積もりの精度が上がります。

  • 売場・事務室など、部屋ごとの全景(できれば四隅から)
  • バックヤード・倉庫・更衣室・給湯室、屋外の物置や屋上
  • 棚・ロッカー・キャビネット(扉や引出しを開けた状態)
  • 入口から搬出口、トラックを停める場所までの通路

書類や顧客名簿など、個人情報が読み取れる物が写り込まないようご配慮ください。心配な場合は、撮り方を事前にご相談いただけます。

見積もりがずれやすい場所

見積もりが実際とずれる原因の多くは、写真に写っていない場所です。倉庫に積まれた在庫の奥、鍵のかかったロッカーや部屋、天井近くの棚、屋外の物置、別の場所にある倉庫や営業所などです。鍵のない部屋や、拠点が複数ある場合は、見積もりの段階でお知らせください。

撤去の前に分けておく物 ― 破産会社の物ではない可能性がある物

店舗・事務所の残置物には、リース会社や取引先、従業員など、破産会社以外の人が所有する物が混ざっていることがあります。破産法では、破産手続の開始は、破産者に属しない財産を取り戻す権利(取戻権)に影響しないと定められています。

破産法 第62条
破産手続の開始は、破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利(第六十四条及び第七十八条第二項第十三号において「取戻権」という。)に影響を及ぼさない。

(出典:e-Gov法令検索『破産法』)

誰の物かの判断は、管財人の先生がおこないます。当社は、所有者を確かめる必要がありそうな物を撤去の対象から外し、一覧にしてご確認いただきます。

撤去の前に一覧にする物(チェックリスト)

次のような物は、見積もりや仕分けの段階で別に記録します。

区分例当社での扱い
リース・レンタル品複合機、POSレジ、防犯カメラ、ウォーターサーバー、レンタルパレット撤去の対象から外し、一覧にして先生に確認いただく
貸与品メーカーから貸与された飲料の冷蔵ケース・販促什器同上
預かり品・委託販売品修理で預かった品、委託を受けて販売していた商品同上(査定に含めるかは先生のご判断)
貸主様の設備入居時からある空調・照明・厨房設備撤去しない(範囲は先生と貸主様の協議による)
従業員・代表者個人の物ロッカーや机の中の私物まとめて保管し、先生にお渡しする

リース品や貸与品には、所有者を示すシールが付いていることがあります。見積もりの写真で気付いた場合は、その時点でお知らせします。

判断に迷う物は「保留」として一か所にまとめる

所有者が分からない物や、預かり品らしい物は、廃棄にも買取にも回さず「保留」にします。保留品は一か所にまとめて写真と一覧を作り、先生のご判断が出てから扱いを決めます。期限までに結論が出ない場合の置き場所も、早めにご相談ください。

作業中に見つかった現金・通帳・書類の扱い

店舗・事務所の残置物撤去では、作業の途中で現金や通帳、帳簿などが見つかることがあります。こうした物は撤去の対象に含めず、当社が処分することはありません。見つけた時点で作業を止め、記録したうえで先生にお渡しします。

現金・通帳・印鑑・金庫など

現金(レジや机の中の釣銭など)、通帳、キャッシュカード、印鑑、小切手・手形、商品券、貴金属、鍵が見つかった場合は、見つかった場所と状態を写真に残して先生にお渡しします。

金庫は、中身が分からなくても当社が開けることはありません。開けるかどうか、開ける場合の方法は、先生のご判断に従います。

帳簿・契約書・個人情報を含む書類とデータ

帳簿や契約書は、破産手続の中で先生が確認される資料です。顧客名簿や従業員の書類には個人情報も含まれます。

当社は、書類の入った箱やファイルを廃棄物に混ぜず、まとめて先生にお渡しします。パソコンやUSBメモリ、複合機など記録媒体を含む機器も、扱いを先生に確認してから動かします。現地に届いている郵便物も、まとめてお渡しします。

書類の廃棄をご指示いただいた場合は、方法と委託先をご相談のうえで進めます。紙くずは、出版業・印刷業など一部の業種を除き事業系一般廃棄物となり、市町村の許可業者への委託になります。

買取品・廃棄物・別の手続きが要る物に仕分けます

所有者を確かめる物と貴重品を除いた残りは、買取品、廃棄物、別の手続きが要る物の3つに分けます。廃棄物は管財人の先生が排出事業者として委託契約を結ぶため、仕分けの結果が、誰とどの契約を結ぶかにつながります。

買取品と廃棄物の分け方

再販できる在庫や什器は、当社が査定して買取額を見積書に記載します。査定額をご覧いただいたうえで、売却するかどうかを先生にご判断いただけます。古物に当たる物の買取は、古物営業法に定める手続きに沿っておこないます。

値の付かない物は「買取」に含めず、廃棄物として委託契約に基づいて扱います。買取代金の有無だけでなく、物の状態や取引の実態を含めて、廃棄物かどうかが判断されるためです。考え方は「廃棄物該当性」「逆有償」で解説しています。

廃棄物は管財人の先生の委託契約で処理します

店舗・事務所から出る廃棄物は、種類と性状によって産業廃棄物と事業系一般廃棄物に分かれ、委託先も異なります。

区分主な例委託先
産業廃棄物金属製の棚・机、廃プラスチック類、ガラス・陶磁器くず収集運搬業者・処分業者と先生の委託契約
事業系一般廃棄物紙くず・木くず・繊維くず(一部の業種を除く)、飲食店の食品くず市町村の許可業者と先生の契約

木くずのうち、貨物の流通に使ったパレットは、業種を問わず産業廃棄物です。

当社がお引き受けできるのは、当社の許可品目に含まれる産業廃棄物の収集運搬です。積み込み・荷降ろしをともに埼玉県内でおこなう場合に限り、先生との委託契約に基づいて受託します。処分は処分業者と先生の契約で、マニフェストは先生に交付していただきます。事業系一般廃棄物は、当社では扱えません。

環境省の通知では、残置物は一般家庭が排出する場合は一般廃棄物、事業活動を行う者が排出する場合は種類・性状により一般廃棄物または産業廃棄物とされています。店舗併用住宅の住居部分の物など区分が分かりにくい物は、委託の前に物件所在地の市町村(産業廃棄物は都道府県など)へご確認ください。

(出典:環境省「建築物の解体時等における残置物の取扱いについて(通知)」平成30年6月22日、環循適発第1806224号・環循規発第1806224号)

あわせて、次の記事もご参照ください。

別の手続きが要る物を先に洗い出す

次の物は、一般の廃棄物とは別の手続きや回収ルートが必要です。見積もりの段階で数を確認しておくと、作業日に慌てずに済みます。

  • 業務用のエアコン・冷凍冷蔵ショーケース・製氷機など:フロン類を使う業務用冷凍空調機器(第一種特定製品)は、廃棄の際にフロン類を第一種フロン類充塡回収業者に引き渡す必要があります。回収が確認できない機器は、廃棄物・リサイクル業者が引き取れません
  • 家庭用のエアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機など:事業所で使っていた物でも、家庭用の機器であれば家電リサイクル法の対象です
  • 消火器、蛍光管、灯油・塗料・スプレー缶、薬品類:品目ごとに回収先や処理方法が異なります

フロン類の回収は、先生から回収業者に依頼していただきます。回収が終わってから機器を搬出するため、回収は撤去の日より前に組みます。

(出典:環境省「フロン排出抑制法」ポータルサイト、一般財団法人 家電製品協会「事業者の方へ」)

作業の記録と、明渡しまでの最終確認

撤去の作業では、何をどれだけ運び出したかを、後から確認できる形で記録します。記録の取り方を着手前に決めておくと、先生が後から状況を確かめる際にも使いやすくなります。ここでは、記録の内容、物量が増えた場合の対応、明渡し前の最終確認の流れをご説明します。

記録に残す内容

作業の記録として、主に次の内容を残します。

  • 作業前と作業後の写真(部屋ごと)
  • 運び出した物の品目と量(2tトラックの台数など)
  • 保留品と、先生にお渡しした物の一覧

どの形でお渡しするか(写真データ、一覧表など)は、ご相談のうえ決めます。

物量が見積もりより増えたとき

見積もりの時に確認できなかった物が多く見つかった場合は、作業を進める前にご連絡します。追加分の見積もりを先生に確認いただくまで、追加の作業は進めません。

最終確認と鍵の返却

搬出が終わったら取り残しを確認します。清掃をご希望の場合は、範囲を見積もりの段階で決めておきます。鍵の返却や明渡しの確認への貸主様の立会いは、先生と貸主様で調整していただきます。

貸主様の側から見た倒産テナントの残置物の扱いは、「夜逃げの残置物はどう処分する?勝手に捨てられない理由と撤去までの流れ」でご説明しています。

株式会社サンクルの対応

株式会社サンクル(埼玉県坂戸市)は、破産管財案件の動産の買取と残置物撤去をお引き受けしています。対応の範囲と許可は次のとおりです。作業の範囲と、産業廃棄物の収集運搬を受託できる区域は異なるため、分けて記載しています。

  • 写真見積もり:先生や事務職員の方が現地に立ち会えない場合も、写真で見積もりができます。鍵の受け渡し方法は、案件ごとにご相談のうえ決めます
  • 買取と撤去をあわせたご依頼:見積書に、買取額・撤去作業費・産業廃棄物収集運搬費(当社に委託いただく場合)・処分費等(立替)を別々の行で記載し、差額で精算します。処分費等は、処分業者などと先生の契約で決まった額をそのまま記載します
  • 許可:古物商許可(埼玉県公安委員会 第431110057492号)、産業廃棄物収集運搬業許可(埼玉県 許可番号01100248748)
  • 対応エリア:片付け・撤去・買取の作業は、埼玉県を中心に東京・神奈川の一部で対応しています。産業廃棄物の収集運搬は、積み込み・荷降ろしをともに埼玉県内でおこなう場合に限ります。埼玉県外の物件や処分先の場合は、その都道府県の許可を持つ業者への委託をご検討ください

見積書の行と差額精算の計算例は「破産管財の動産買取・残置物撤去|依頼の5ステップと見積・精算の考え方」で、委託先を排出事業者が決める考え方は「廃棄物処理に関する排出事業者責任の徹底について(通知)」でご説明しています。

よくあるご質問

破産会社の店舗・事務所の残置物撤去について、ご依頼の前に確認しておきたい点をまとめました。費用、立会い、依頼の範囲、飲食店の厨房機器の4点です。

Q. 店舗の残置物撤去費用はいくらですか?

撤去費用は、物量、品目、搬出の条件(階数・エレベーター・作業時間の制限)で大きく変わります。廃棄物の区分と処分費、買取できる物の有無によっても変わるため、一律の金額はお示ししていません。写真か現地で物量を確認したうえで見積書をお出しし、買取と撤去をあわせる場合は差額で精算します。

費用を左右する要因は、「残置物撤去の完全ガイド|費用・法律・正しい手順から優良業者の選び方まで」でも解説しています。

Q. 管財人が現地に立ち会えなくても進められますか?

写真見積もりに対応しているため、見積もりの段階では立ち会わなくても進められます。作業日の鍵の受け渡しや、保留品・貴重品をお渡しする方法は、案件ごとにご相談のうえ決めます。

Q. 買取品の引取りだけ、または撤去だけを頼めますか?

すべての撤去、一部の撤去、買取品の引取りだけ、のいずれにも対応しています。撤去だけの場合も、廃棄物の委託契約は先生と各許可業者の間で結んでいただきます。

Q. 飲食店の厨房機器や、冷蔵庫に残った食品はどうなりますか?

フロン類を使う業務用の冷蔵庫や製氷機などは、フロン類の回収を確認してから搬出します。食品のうち買取の対象は、常温で保存できる包装食品に限ります。冷蔵・冷凍が必要な食品や生鮮品は廃棄物として扱います。飲食店の食品くずは事業系一般廃棄物になることが多いため、区分は物件所在地の市町村にご確認ください。

まとめ

破産会社の店舗・事務所の残置物撤去は、明渡しの期限から逆算して、確認・見積もり・仕分け・契約・搬出・最終確認の順に進めます。

  • リース品や預かり品、従業員の私物など、破産会社の物ではない可能性がある物は、撤去の前に分けて先生に確認いただきます
  • 現金・通帳・帳簿・個人情報を含む書類は処分せず、記録したうえで先生にお渡しします
  • 廃棄物は先生が委託契約を結び、フロン類を使う機器や家庭用の家電4品目は別の手続きで扱います

破産管財案件の残置物撤去・動産買取のご相談は、株式会社サンクルまでお問い合わせください。写真見積もりにも対応しております。


※本記事は2026年10月時点の法令・通知等に基づき作成しています。法令や自治体のルールは変更される可能性があるため、最新の情報は関係省庁・各市町村の公式サイト等でご確認ください。