倒産して破産手続に入った会社や個人事業主の店舗に残った在庫商品(管財品)は、買取業者の査定を経て換価されることがあります。管財人の先生・事務職員の方にとって気になるのは、まず「いくらになるのか」という点です。あわせて、「見積書をどう使えばよいか」「許可が出るまでに価格が変わらないか」も確認しておきたいところです。
本記事では、管財品の買取査定で価格がどう決まるか、値が付きにくい物の扱い、許可申立てを見据えた見積書の出し方と申立準備段階の査定書について、買取業者の立場からご説明します。
ご依頼から精算までの全体の流れは、破産管財の動産買取・残置物撤去|依頼の5ステップと見積・精算の考え方にまとめています。
管財品(店舗在庫)の買取価格はどう決まるか
管財品の買取価格は、再販できる価格(二次流通の相場)から、販売にかかる経費と売れるまでの期間のリスクを差し引いて決まります。定価や仕入値が基準になるわけではありません。
本記事のポイントは、次の3つです。
- 価格の基準は二次流通の相場:業者間の市場やネット販売での実勢価格をもとに考えます。
- 値の付かない物は買取に含めない:当社で値の付かない物は買取品に含めません。廃棄物として処分する物は、買取とは分けて、管財人の先生の委託契約で処理していただきます。
- 見積書は品目別の明細と有効期限つき:許可申立てにかかる期間を見込んで有効期限を設け、品目ごとに数量と単価を記載します。
なお、本記事でいう「管財品」は、破産財団に属する動産のうち、小売店や卸売業者の在庫商品を中心にしています。不動産を指して使われることが多い「管財物件」とは区別しています。
管財品の買取査定で見られる6つの要素
同じ商品でも、査定額は状態や数量によって大きく変わります。管財品の買取査定で主に見られる要素は、次の6つです。
| 要素 | 見られる点 | 価格への影響 |
|---|---|---|
| 二次流通の相場 | 業者間の市場・ネット販売での実勢価格 | 査定額の基準になる |
| 販売にかかる経費 | 販売手数料・送料・保管・検品の手間 | 経費の割合が大きい品目ほど下がる |
| 売れるまでの期間 | 季節品か、型落ちからの年数 | 期間が長くなるほど下がる |
| 状態・外箱・付属品 | 未開封か、外箱・付属品・値札の状態 | 傷みや欠けがあると下がる |
| 型番ごとの数量 | 型番・サイズ・色のまとまり | まとまっていると販路を選びやすい |
| 賞味期限・使用期限 | 期限までの残り期間 | 残りが短いほど下がる |
基準は二次流通の相場で、定価・仕入値ではない
査定額の基準は、その商品が次に売れる価格です。業者間の市場やネット販売での実勢価格を確認し、そこから経費などを差し引いて算出します。
相場は商品の状態や需給によって変わるため、査定額が定価や仕入値を下回ることもあります。
販売にかかる経費と、売れるまでの期間
買い取った商品を再販するには、販売手数料・送料・保管・検品などの経費がかかります。単価の低い商品が大量にある場合や、大きく重い商品は、価格に占める経費の割合が高くなります。
売れるまでの期間も価格に影響します。季節品はシーズンを過ぎると次の季節まで保管が必要になり、家電などは型落ちから年数がたつほど需要が下がります。
状態・外箱・付属品と、型番ごとの数量
未開封で外箱や付属品がそろっている商品は、新品に近い状態で再販しやすく、査定額も高くなる傾向があります。外箱の傷みや日焼け、値札をはがした跡などは、再販価格を下げる要因です。
数量は、型番・サイズ・色ごとのまとまりが見られます。同じ型番がまとまっていれば、販路を選びやすくなります。一方、型番が細かく分かれて1点ずつしかない在庫は、手間がかかるぶん単価が下がりやすくなります。
賞味期限・使用期限の残り
食品や電池などの消耗品は、期限までの残り期間が査定額を大きく左右します。再販までにかかる期間を考えると、期限が近い商品は値が付かないこともあります。期限は、引取日にも改めて確認します(後述)。
店舗在庫の品目別の見方
査定で確認する点は、品目によって異なります。ここでは、店舗在庫に多い品目ごとに、査定で見られるポイントをご説明します。在庫リストや写真をご用意いただく際の参考にもしてください。
アパレル・服飾雑貨
衣料品は、シーズンとトレンドの影響を強く受けます。タグが付いた未使用品か、サイズや色がそろっているかが確認のポイントです。
ブランドの衣料品は、正規に仕入れた商品であることが分かる資料(仕入伝票など)があると、確認がスムーズに進みます。
食器・贈答品・ブランド品
食器は、ブランド食器かどうかに加えて、箱・しおりの有無や未使用かどうかが見られます。セットで販売される食器は、1客欠けるだけで価格が大きく下がることがあります。
タオルや食器などのギフトセットは、箱入りで未開封のものが再販しやすい品目です。ただし、のしや名入れがあるもの、箱が傷んでいるものは値が付きにくくなります。
家電・工具・日用雑貨
家電や工具は、型番と製造年、通電や動作の確認ができるかがポイントです。未開封の新品でも、発売から年数がたった型落ち品は需要が下がります。
日用雑貨は、単価が低い一方で点数が多くなりがちです。型番ごとの数量をまとめた在庫リストがあると、査定の精度が上がります。
食品
当社で査定の対象にしている食品は、常温で保存できる包装食品です。冷蔵・冷凍が必要な食品は対象にしていません。
査定では、賞味期限までの残り期間に加えて、未開封であること、表示された保存方法で保管されていたこと、包装に破損がないことを確認します。
値が付きにくい物と、その扱い
店舗在庫を査定すると、値が付かない物も出てきます。値の付かない物をどう扱うかは、財団から支払う処理費用にかかわるため、早い段階で把握しておくと見通しを立てやすくなります。以下で、値が付きにくい物の例と当社での扱いをご説明します。
値が付きにくい物の例
次のような物は、状態がよくても値が付きにくい傾向があります。
- 展示品・見本品(使用感や日焼けがあるもの)
- 開封済みの商品、外箱や付属品が欠けた商品
- 賞味期限・使用期限が近い商品
- 名入れ品、店名やロゴの入った商品・包装資材
- 販促物(POP・のぼり・ノベルティなど)
- 店舗の内装に合わせて作られた陳列台などの什器
値が付きにくい理由の多くは、次に買う人が限られることと、再販までの運搬・保管の費用がかさむことです。汎用品の什器は買取の対象になることもあるため、品目ごとに確認します。
什器の処分の進め方は、オフィス移転の什器処分をわかりやすく説明しますも参考になります。
値の付かない在庫を「一括買取」に含めない理由
在庫をまとめて査定・引取りすることを「一括買取」と呼ぶことがあります。当社では、値の付かない物を買取品に含めて引き取ることはしていません。
廃棄物に当たるかどうかは、物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無、占有者の意思などを総合的に勘案して判断されます(環境省「行政処分の指針について(通知)」令和3年4月14日 環循規発第2104141号)。買取代金を支払うかどうかだけで決まるわけではないため、値の付かない物を買取品と合わせて運ぶと、実態として廃棄物の処理に当たるおそれがあります。
ただし、当社で買取価格が付かないことと、法令上の廃棄物に当たることは、同じ意味ではありません。品目によっては他社で値が付くこともあり、売却先や処分の方法は管財人の先生のご判断です。
廃棄物として処分することになった在庫は、管財人の先生が排出事業者として許可業者と委託契約を結び、処理していただきます。産業廃棄物か事業系一般廃棄物かは、廃棄物の種類と、排出した事業の業種によって分かれ、委託先も異なります。
廃棄物に当たるかどうかの考え方は廃棄物該当性と逆有償、収集運搬の委託の仕組みは産業廃棄物収集運搬とはでご説明しています。
管財人の先生にお出しする見積書
管財品の換価では、見積書が許可申立てや相見積もりの資料にもなります。破産法は、商品の一括売却を、管財人が裁判所の許可を得てする行為の一つとして挙げています。
破産法 第78条第2項
(出典:e-Gov法令検索『破産法』)
破産管財人が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
(中略)
四 商品の一括売却
許可の要否や申立ての進め方は、管財人の先生のご判断です。当社は、許可申立てが必要になる場合も見据えて、次のような形で見積書をお出しします。同条第3項の金額基準との関係は、破産管財の動産買取・残置物撤去の記事でご説明しています。
品目別の明細で出す
見積書には、品目ごとに数量・単価・状態の区分・小計を記載します。合計額だけでなく内訳があると、許可申立てや換価のご報告の資料として整理しやすくなります。
相見積もりを取られる場合も、品目別の明細があれば、各社の見積もりを同じ条件で比べられます。他社のお見積もりとあわせてご検討ください。
所有関係を確かめたい商品は分けて記載する
店舗の在庫には、委託販売の商品や顧客からの預かり品、リース品など、破産者の所有でない物が混じっていることがあります。仕入先との契約内容によって、所有関係の確認が必要になる商品もあります。
当社では、こうした商品を見積書で分けて記載します。査定に含めるかどうかは、管財人の先生のご判断に従います。
有効期限は、許可の見込み時期を伺って設定する
許可申立てをされる場合、見積書をお出ししてから引取りまでに時間がかかることがあります。当社では、許可の見込み時期を伺ったうえで、見積書の有効期限を個別に設定します。
季節品や賞味期限のある商品は、期間中に価格が変わりやすい品目です。有効期限内でも、引取日の期限の残りによっては査定をやり直す条件を付ける場合があり、その条件は見積書に明記します。
引取日に再確認すること
引取日には、見積もりの時点から変わった点がないかを確認します。主に確認するのは、次の3点です。
- 数量:見積もり時の在庫リストとの差
- 状態:破損・汚れ・開封の有無
- 期限:賞味期限・使用期限の残り
数量が変わっていた場合は、品目別の単価で計算し直します。状態が変わった品目は再査定し、精算の前に管財人の先生にご確認いただきます。
再査定で数量や金額が変わる場合は、搬出の前に、裁判所の許可を受けた内容との関係を管財人の先生にご確認いただきます。
申立準備段階での査定書の作成
破産手続開始の申立ての準備段階で、申立代理人の先生から、在庫の評価のために査定書を求められることがあります。この段階では、売却や搬出ではなく、査定書の作成のみをお受けします。
査定書に記載する内容
査定書には、品目・数量・評価額に加えて、評価の前提を記載します。前提とは、査定日、確認した商品の状態、参照した相場の時点などです。
在庫の価値は時間とともに変わるため、査定日と前提を明記しておくことが大切です。
売却・搬出の時期は先生のご判断に従います
査定書を作成した後の売却や搬出の時期・方法は、申立代理人の先生、または手続開始後の管財人の先生のご判断に従います。当社から売却をおすすめすることはありません。
査定書の作成費用は、対象となる在庫の量と内容を伺ったうえで、個別にご案内します。
サンクルの管財品の買取査定
株式会社サンクル(埼玉県坂戸市)は、古物商許可(埼玉県公安委員会 第431110057492号)を受けて買取をおこなっています。古物に当たる物の買取は、古物営業法に定める手続きに沿っておこないます。見積もりをご覧いただいてから、売却するかどうかを管財人の先生にご判断いただけます。査定額にご納得いただけない場合は、お断りいただいて構いません。
査定のご依頼時にお知らせいただきたいこと
査定の精度を上げるため、次の情報をお知らせください。
- 在庫リスト(品名・型番・数量・状態)
- 写真(代表的な商品、外箱、保管場所の全景)
- 保管場所の住所と搬出の条件(階数、エレベーターの有無、トラックを停める場所)
- 明渡しの期限
写真に伝票や顧客名簿などの個人情報が写り込まないよう、ご配慮をお願いします。写真をもとにした概算のお見積もりにも対応しています。
撤去もあわせてご依頼いただく場合
在庫の買取と店舗の残置物撤去をまとめてご依頼いただく場合は、買取額・撤去作業費・産業廃棄物収集運搬費・処分費等(立替)を見積書の別々の行に記載し、差額で精算します。計算例は、冒頭でご紹介した記事に掲載しています。
買取・撤去の作業は、埼玉県を中心に、東京都・神奈川県の一部でも承ります。産業廃棄物の収集運搬は、積み込み・荷降ろしをともに埼玉県内でおこなう場合に、当社の許可品目の範囲で、管財人の先生との委託契約に基づいてお引き受けできます(マニフェストは管財人の先生が交付)。紙くずなどの事業系一般廃棄物は、市町村の一般廃棄物収集運搬許可業者と管財人の先生とのご契約で処理していただきます。
よくあるご質問
管財品の買取査定について、ご依頼の前に確認しておきたい点をQ&A形式でまとめました。いずれも一般的な考え方で、実際の扱いは品目や状態によって異なります。
Q:仕入値や定価で買い取ってもらえますか?
基準は仕入値や定価ではなく、二次流通の相場です。再販にかかる経費と期間を差し引くため、相場や商品の状態によっては、仕入値を下回る査定になることもあります。
Q:他社と相見積もりをしてもよいですか?
はい、問題ありません。当社の見積書は品目別の明細で記載するため、他社の見積もりと品目ごとに比べていただけます。
Q:開封済みの商品や展示品も査定できますか?
査定はできます。ただし、未開封の商品に比べて価格は下がり、状態によっては値が付かないこともあります。値が付かない物は買取に含めません。処分する場合は、買取とは分けて管財人の先生の委託契約で処理していただきます。
Q:見積もりのあとで在庫の数量が変わったらどうなりますか?
引取日に数量と状態を確認し、品目別の単価で計算し直します。状態が変わった品目は、精算の前に再査定の結果をご確認いただきます。
まとめ
管財品の買取価格は、定価や仕入値ではなく、二次流通の相場から販売経費と売れるまでの期間のリスクを差し引いて決まります。当社で値の付かない在庫は買取に含めず、処分する物は買取とは分けて、管財人の先生の委託契約で処理していただきます。
見積書は品目別の明細と有効期限つきでお出しし、引取日には数量・状態・期限を再確認します。申立準備段階の査定書の作成も承ります。
管財品の買取査定・査定書のご相談は、株式会社サンクルまでお問い合わせください。
※本記事は2026年10月時点の法令に基づく一般的な情報です。破産手続における個別の判断は、管財人の先生のご判断と裁判所の運用によります。



