破産(倒産)した会社の店舗や事務所に残った在庫・什器のうち、買取や換価ができない物は、廃棄物として処理する必要があります。その委託契約とマニフェストは、排出事業者の立場で管財人の先生が担うことになります。
本記事では、破産案件の廃棄物処理のうち、管財人名義の委託契約とマニフェスト、財団からの支払いと差額精算、明渡し期限から逆算した段取りの3点に絞って解説します。動産の買取と残置物撤去の全体の流れは、破産管財の動産買取・残置物撤去|依頼の5ステップと見積・精算の考え方でご説明しています。
破産管財人が担う廃棄物処理の3つの実務
破産会社の事業から出た廃棄物は、管財人の先生が排出事業者の立場で、許可業者に処理を委託します。実務は次の3つに分けると整理しやすくなります。
- 区分を決めて、契約先を分ける:産業廃棄物は収集運搬業者・処分業者のそれぞれと、事業系一般廃棄物は市町村の許可業者と契約します
- 産業廃棄物は書面で契約し、マニフェストを交付する:管財人の先生の名義で収集運搬業者・処分業者と契約し、引渡しの際にマニフェストを交付します。返送を確認し、5年間保存します。事業系一般廃棄物は、物件所在地の自治体のルールに従います
- 明渡し期限から逆算し、差額で精算する:区分の確認から返送の確認までを期限に合わせて組み、処理費は買取額との差額で精算します
管財人が排出事業者の立場で処理を委託する前提
管財人の先生が委託契約を結ぶのは、廃棄物処理法の事業者の処理責任と、破産法の管理処分権が重なるためです。あわせて、廃棄物の区分によって契約先が変わる点も、最初に確認しておきたいところです。
事業者の処理責任と、管財人の管理処分権
廃棄物処理法は、廃棄物の処理を事業者自身の責任としています。
事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第3条第1項
(出典:e-Gov法令検索『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』)
委託する場合は、収集運搬は収集運搬業者に、処分は処分業者に委託します(同法12条5項)。一方、破産手続が始まると、破産財団に属する財産の管理と処分の権利は管財人に専属します(破産法78条1項)。そのため、破産会社の廃棄物は、管財人の先生が排出事業者の立場で委託契約を結び、マニフェストを交付します。
契約書やマニフェストの名義の書き方は、物件所在地の都道府県等の案内もご確認ください。
産業廃棄物か事業系一般廃棄物かで、契約先が分かれる
事業活動から出る廃棄物が、すべて産業廃棄物になるわけではありません。廃プラスチック類や金属くずは、業種を問わず産業廃棄物です。一方、紙くず・木くず・繊維くずなどは、特定の業種から出た場合に限って産業廃棄物になります(廃棄物処理法施行令2条)。
産業廃棄物に当たらない物は事業系一般廃棄物で、市町村の許可業者と契約します。環境省の「建築物の解体時等における残置物の取扱いについて」(平成30年6月22日)も、事業活動を行う者が排出する残置物は、種類と性状によって一般廃棄物にも産業廃棄物にもなるとしています。委託契約の前に、物件所在地の市町村(産業廃棄物は都道府県など)へ確認すると確実です。
産業廃棄物の種類の一般的な説明は、産業廃棄物とはをご覧ください。
破産会社の在庫・什器で出やすい物の区分早見表
同じ品目でも、破産会社の業種によって区分が変わります。小売店・飲食店・事務所から出る場合を基本に、産業廃棄物になる業種・条件を並べました。最終的な扱いは、物件所在地の自治体にご確認ください。
| 品目 | 小売店・飲食店・事務所の場合 | 産業廃棄物になる業種・条件 |
|---|---|---|
| 段ボール・紙製品の在庫・帳票類 | 事業系一般廃棄物 | 紙・紙加工品の製造業、新聞業(新聞巻取紙を使用して印刷発行するもの)、出版業(印刷出版をおこなうもの)、製本業、印刷物加工業、建設業(工事に伴うもの)など |
| 木製の棚・陳列台・机 | 事業系一般廃棄物 | 木製品製造業(家具を含む)、物品賃貸業、建設業(工事に伴うもの)など |
| 木製パレット | 産業廃棄物(木くず) | 業種を問わない |
| スチール棚・金属製の什器・金物 | 産業廃棄物(金属くず) | 業種を問わない |
| プラスチック製品・ハンガー・梱包材 | 産業廃棄物(廃プラスチック類) | 業種を問わない |
| 陶磁器・ガラスの食器 | 産業廃棄物(ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず) | 業種を問わない |
| 衣料品・布製品 | 合成繊維は産業廃棄物(廃プラスチック類)、天然繊維は事業系一般廃棄物 | 天然繊維は繊維工業(衣服などの製造業を除く)、建設業 |
| 食品(固形状の物) | 事業系一般廃棄物 | 食料品製造業などから出た物(製造した不良品・期限切れの製品を含む) |
| 複数の素材でできた什器 | 自治体・処理業者で扱いが分かれる | ― |
(出典:廃棄物処理法施行令2条、環境省 昭和46年10月25日通知、東京都環境局「産業廃棄物の具体例」、京都市「食品残渣」)
- 食品・飲料の在庫は、性状によって区分が変わります。食用油は廃油、炭酸飲料などは廃酸として、業種を問わず産業廃棄物になる場合があります。容器包装は中身と分けて区分を確認します
- 混紡の衣料品は、扱いを処理先と確認します
- リース・レンタル品、預かり品、委託販売品など、破産会社以外が所有する物は、撤去前に分けておきます
- 顧客名簿など個人情報を含む書類は、先生のご確認を経てから処理します
詳しくは、産業廃棄物「木くず」とは、木製パレットの正しい処分方法、オフィス移転の什器処分をご覧ください。
通常の廃棄物と分けて手配する物
次の物は、別の法律で手順が決められているため、通常の廃棄物と分けて手配します。
- 業務用の冷蔵ショーケース・エアコンなど:廃棄の前に、フロン類を第一種フロン類充塡回収業者へ引き渡します。引取証明書の写しがない機器は、原則として廃棄物処理業者が引き取れません(フロン排出抑制法)
- 古い変圧器・コンデンサ・照明の安定器:PCBを含む可能性があります。高濃度PCB廃棄物の処分期間はすでに終了しており、低濃度PCB廃棄物も2027年3月31日までとされています。見つかった場合は、速やかに都道府県等にご相談ください(環境省)
- 家庭用のエアコン・テレビ・冷蔵庫・冷凍庫・洗濯機・衣類乾燥機:事業所で使った物も家電リサイクル法の対象です(経済産業省)
特別管理産業廃棄物の収集運搬には別の許可が必要で、当社の産業廃棄物収集運搬業許可の対象外です。
管財人名義の委託契約とマニフェストの実務
委託契約の締結、マニフェストの交付と返送の確認、書類の保存と報告の順に説明します。いずれも廃棄物処理法と施行令・施行規則で決められた手順で、返送の期限や保存の期間も定められています。
委託契約は、収集運搬・処分のそれぞれと書面で結ぶ
産業廃棄物の処理は、収集運搬業者と処分業者のそれぞれと、書面で契約します。埼玉県も、排出事業者と各業者の2者契約とするよう案内しています。契約書には廃棄物の種類と数量、運搬の最終目的地、処分の場所と方法などを記載し、受託者の許可証の写しを添付します(施行令6条の2第4号)。
処理業者の選定や料金といった根幹的な内容は、排出事業者と処理業者の間で決めるものとされています(環境省 平成29年3月21日通知。解説は廃棄物処理に関する排出事業者責任の徹底について(通知))。当社が処分業者をご紹介する場合も、契約と料金は先生と各社の間で決めていただきます。
マニフェストの交付と返送の確認
産業廃棄物を引き渡すときは、管財人の先生がマニフェストを交付します(廃棄物処理法12条の3第1項)。当社にご依頼いただいた場合は、記載に必要な品目・数量の情報をご提供します。
交付後は、処理の進み具合に応じて写しが返送されます。次の期間内に返送がなければ、確認と対応が必要です(施行規則8条の28)。
- 運搬・処分が終わった旨の写し(B2票・D票):交付の日から90日(特別管理産業廃棄物は60日)
- 最終処分が終わった旨の写し(E票):交付の日から180日
返送がない場合や、法定の記載事項の漏れ・虚偽の記載がある場合は、処理の状況を把握して必要な措置を講じ、措置内容等報告書を都道府県知事等(さいたま市・川越市・越谷市・川口市の事業場は各市)へ提出します(同法12条の3第8項、施行規則8条の29)。期限は、返送がない場合は所定の期間が過ぎた日から、記載漏れは写しを受け取った日から、虚偽の記載は虚偽を知った日から、それぞれ30日以内です。
電子マニフェストは、排出事業者・収集運搬業者・処分業者の3者がJWNETに加入していれば使えます。仕組みは産業廃棄物マニフェスト(産業廃棄物管理票)の解説と電子マニフェストの解説をご覧ください。
委託契約書・マニフェストの保存と交付等状況報告
委託契約書とマニフェストには、保存の期間が決められています。紙のマニフェストを交付した場合は、年1回の報告も必要です。
| 書類・手続 | 期間・期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 委託契約書 | 契約が終了した日から5年間保存 | 施行令6条の2第5号、施行規則8条の4の3 |
| 交付したマニフェストの控え | 交付した日から5年間保存 | 法12条の3第2項、施行規則8条の21の2 |
| 返送されたマニフェストの写し | 送付を受けた日から5年間保存 | 法12条の3第6項、施行規則8条の26 |
| 紙マニフェストの交付等状況報告 | 毎年6月30日までに、前年度分を事業場ごとに報告 | 法12条の3第7項、施行規則8条の27 |
埼玉県での報告の提出先は、県の環境管理事務所です。さいたま市・川越市・越谷市・川口市にある事業場は、各市に提出します。電子マニフェストの分は報告不要です(埼玉県「産業廃棄物管理票交付等状況報告制度について」)。
保存の期間は破産手続の終結後も続くため、保管方法を早めにご検討ください。
財団からの支払いと差額精算の関係
廃棄物の処理費は、委託契約の当事者である管財人の先生と各社の間で決まります。当社に買取と撤去をあわせてご依頼いただく場合は、処理費を見積書の別の行に分け、買取額との差額で精算します。
処理費は、管財人の先生と各社の契約で決まる
処分業者や一般廃棄物の許可業者の処分費等は、各社との契約で決まった額をそのまま見積書に記載します。当社が立て替える場合も利益は上乗せせず、各社の見積書・請求書の写しを添付します。財団からの支払いの扱いは、管財人の先生のご判断です。
見積書の4行と精算式
見積書には、買取額・撤去作業費・産業廃棄物収集運搬費・処分費等(立替)の4つを、別々の行で記載します。収集運搬費は、当社に委託いただく場合の費用で、数量と料金は委託契約書に記載します。
精算額は「撤去作業費+産業廃棄物収集運搬費+処分費等(立替)−買取額」で計算します。プラスならご請求、マイナスならお支払いです。具体的な計算例は、見積書の見方と差額精算の考え方でご紹介しています。
精算の結果がご請求でもお支払いでも、個々の品物が廃棄物に当たるかどうかは変わりません。廃棄物かどうかは、物の性状や取引の実態などを総合的に見て判断されます(環境省「行政処分の指針について(通知)」令和3年4月14日)。考え方は廃棄物該当性と逆有償の記事で解説しています。
明渡し期限から逆算する収集運搬・処分の段取り
明渡し期限までの日程は、撤去の作業日だけでは組めません。区分の確認、委託契約の取り交わし、マニフェストの返送の確認にかかる時間も含めて逆算します。返送の確認は明渡し後まで続くことがあるため、書類の管理も含めて計画します。
明渡しまでの6ステップ
当社にご依頼いただく場合の、一般的な流れは次のとおりです。
- 物件・物量の確認:写真見積もりなら、先生が立ち会わなくても進められます。第三者の所有物もここで洗い出します
- 区分と契約先の決定:早見表を目安に方針を決め、必要に応じて自治体に確認します
- 委託契約の締結:収集運搬業者・処分業者・一般廃棄物の許可業者と、先生に契約していただきます
- 搬出とマニフェストの交付:買取品を先に搬出し、その後に廃棄物を区分ごとに搬出します。廃棄物の運搬は、委託契約を結んだ各許可業者がおこないます(当社がお引き受けするのは、埼玉県内で積み込み・荷降ろしをする、許可品目の範囲の産業廃棄物に限ります)。引渡しの際に、先生がマニフェストを交付します
- 返送の確認:最終処分の確認(E票)は、明渡しより後になることがあります
- 書類の整理:見積書・請求書・委託契約書・マニフェストをそろえます。裁判所へのご報告に使う書類は、先生のご判断です
物件や処分先が埼玉県外の場合
産業廃棄物の収集運搬業の許可は、積み込みと荷降ろしをおこなう区域を管轄する都道府県ごとに必要です(廃棄物処理法14条1項)。通過するだけの都道府県の許可は要りません。
当社の産業廃棄物収集運搬業の許可は埼玉県のみのため、収集運搬をお引き受けできるのは、積み込み・荷降ろしをともに埼玉県内でおこなう場合に限ります。東京都・神奈川県の一部の物件でも、片付け・撤去・買取はお受けできます。ただし産業廃棄物の収集運搬は、その都県の許可を持つ業者と先生に契約していただきます。許可の仕組みは産業廃棄物収集運搬とはをご覧ください。
よくあるご質問
破産案件の廃棄物処理で、判断に迷いやすい点をまとめました。個別の扱いは、物件所在地の自治体や、処理業者に許可を出した都道府県等にご確認ください。
Q: 少量の廃棄物でもマニフェストは必要ですか?
必要です。産業廃棄物の運搬や処分を委託する場合は、量にかかわらずマニフェストを交付します(廃棄物処理法12条の3第1項)。交付が不要になるのは、市町村・都道府県への委託など、施行規則8条の19に定められた場合です。
Q: 値が付かない在庫を「無料引取り」で運んでもらえますか?
値が付かない物や処分に費用がかかる物は、「買取」や「無料引取り」の名目では運びません。廃棄物として、委託契約とマニフェストに基づいて扱います。
Q: 破産会社が以前から契約していた処理業者に依頼できますか?
許可の有効期限と品目を許可証の写しで確認できれば、委託先の候補になります。破産前の契約をどう扱うかは、管財人の先生のご判断です。
Q: 委託した処理業者が破産・許可取消しになった場合は?
処理業者は、受託した処理を適正におこなうことが難しくなった場合、委託者に書面で通知しなければなりません(廃棄物処理法14条13項)。通知を受けたら、委託した廃棄物の処理状況と、マニフェストの返送状況を確認します。その委託分のマニフェストの写しを受け取っていない場合は、必要な措置を講じ、通知を受けた日から30日以内に、都道府県知事等へ措置内容等報告書を提出します(同法12条の3第8項、施行規則8条の29)。電子マニフェストの場合も、処理終了の報告の有無を確認します。
サンクルの対応
当社は、破産管財案件の動産の買取と撤去作業に加えて、埼玉県内での産業廃棄物の収集運搬をお引き受けしています。廃棄物処理の各段階でお手伝いできることは次のとおりです。
- 動産の買取(古物商許可 埼玉県公安委員会 第431110057492号)と、仕分け・搬出の撤去作業
- 産業廃棄物の収集運搬(許可番号01100248748・埼玉県・積替えを含まない)。先生との委託契約に基づき、当社の許可品目の範囲で、積み込み・荷降ろしをともに埼玉県内でおこなう場合に限ります
- 処分業者・一般廃棄物の許可業者のご紹介(契約と料金は、先生と各社の間で決めていただきます)
- マニフェストの記載に必要な情報のご提供と、4つの金額を分けた見積書(写真でのお見積もりにも対応)
まとめ
破産会社の事業から出た廃棄物は、管財人の先生が排出事業者の立場で、許可業者に処理を委託します。
- 区分を決め、産業廃棄物と事業系一般廃棄物で契約先を分ける
- 産業廃棄物は書面で委託契約を結び、マニフェストの返送を確認して5年間保存する(事業系一般廃棄物は自治体のルールに従う)
- 明渡し期限から逆算し、処理費は見積書の別の行に分けて差額で精算する
破産管財案件の動産買取・残置物撤去のご相談は、株式会社サンクルまでお問い合わせください。写真見積もりにも対応しております。
※本記事は2026年10月時点の法令等に基づき作成しています。廃棄物の区分や手続の扱いは自治体によって異なる場合があるため、物件所在地の都道府県・市町村にご確認ください。



