競売で落札した物件に、家具や家電、衣類などがそのまま残っていてお困りの不動産会社様、落札された方は少なくありません。建物の中が片付かなければ、リフォームや再販、入居の準備に進めません。

ただし、競売で手に入るのは土地と建物です。室内に残された物は、落札しても買受人の物にはならず、勝手に処分することはできません。

本記事では、競売物件の残置物を片付ける3つの方法、引渡命令から強制執行までの流れ、撤去費用を誰が負担するのかを順番に解説します。任意売却の物件に残置物がある場合や、撤去の前に確認しておきたい物についてもご説明します。

【結論】競売物件の残置物は「所有者などの同意」か「引渡命令・強制執行」で片付ける

競売で土地・建物を取得しても、室内の家具や家電などの所有権までは取得しません。残置物には、元の所有者の物のほか、同居家族や賃借人、リース会社など第三者の物が含まれることもあります。片付けるには、残置物の所有者などの同意を得るか、引渡命令を取って強制執行をする必要があります。

方法内容撤去費用を払う人期間の目安向いているケース
①所有者が搬出する元の所有者など残置物の所有者が、自分で引越し・処分する搬出する所有者所有者の都合による連絡が取れ、協力的な場合
②所有権放棄の書面をもらう残置物の所有者の同意を書面でもらい、買受人が撤去する合意による(買受人が負担する形が多い)書面がそろえば着手できる連絡は取れるが、所有者に片付ける余力がない場合
③引渡命令・強制執行裁判所の手続で、執行官が明渡しを実施する執行費用は法律上その相手方の負担。実際は買受人が予納する申立てから断行まで数か月単位同意が得られない場合、連絡が取れない場合

ただし、引渡命令は、買受人に対抗できる権原(賃借権など)で占有している人には使えません。詳しくは後半でご説明します。なお、任意売却の物件では、売主が所有する物は売主が処分するのが原則です。

競売物件の残置物を勝手に処分できない理由

落札した建物の中にある物でも、買受人の判断だけで捨てることはできません。ここでは、その理由と、入札の前に確認できることをご説明します。

落札しても室内の動産は買受人の物にならない

民事執行法79条は「買受人は、代金を納付した時に不動産を取得する」と定めています。買受人が取得するのは不動産で、室内の家具・家電・衣類などの動産は、元の所有者や、その物を持ち込んだ人の物のままです。

裁判所の不動産競売物件情報サイト(BIT)でも、次のように説明されています。

建物は空き家ですが,内部に所有者などが残していった物があります。買受人は,残置物を勝手に処分することはできないので,原則として執行官に費用を予納した上で明渡執行を求める必要があります。

(出典:裁判所 不動産競売物件情報サイト BIT「用語解説 空き家(残置物あり)」)

勝手に処分した場合のリスク

法律の手続によらずに自分で権利を実現する「自力救済」は、原則として認められていません(最高裁昭和40年12月7日判決)。残置物を無断で処分すると、その所有者から損害賠償を求められるおそれがあります。価値のない物ばかりに見えても、同意か法的手続を経てから撤去するのが基本です。

入札前に「3点セット」で残置物と占有の状況を確認する

競売物件の物件明細書・現況調査報告書・評価書(いわゆる3点セット)は、BITで閲覧できます。現況調査報告書には室内の写真や占有の状況が載っているため、残置物の量の見当をつけられます。物件明細書では、買受人が引き受けることになる賃借権などの権利も確認できます。

「空き家(残置物あり)」とされている物件や、賃借人などが住んでいる物件は、撤去の手間と費用を見込んで入札額を検討しましょう。

残置物の所有者と話し合って片付ける方法

話し合いで解決できれば、強制執行よりも時間と費用を抑えられます。ただし、どちらの方法も、残置物の所有者や処分の権限を持つ人の同意が前提です。

所有者に自分で搬出してもらう

まずは元の所有者など、室内の物の持ち主に連絡を取り、いつまでに荷物を運び出すかを決めます。搬出の期限と、期限を過ぎた場合の扱いを書面に残しておくと、後のトラブルを防げます。

持ち主に引越しの資金がないことも多く、引越し費用の一部を買受人が負担して早めの明渡しを図る例もみられます。条件の交渉に不安がある場合は、弁護士にご相談ください。

残置物の所有権放棄の書面をもらうときの確認点

所有者が自分で片付けられない場合は、「残置物の所有権を放棄し、買受人が処分することに同意する」旨の書面をもらい、買受人の側で撤去する方法があります。書面をもらうときは、次の点を確認します。

  • 書いてもらう相手:残置物の所有者本人。共有なら全員、亡くなっている場合は相続人、破産している場合は破産管財人など、処分の権限を持つ人の関与が必要になることがあります。同居家族や賃借人の物は、その人の同意が必要です
  • 対象の範囲:室内だけか、物置・庭・車庫・自動車まで含むか
  • 処分費用の負担:誰が負担するか
  • 日付と署名:いつ、誰が同意したかが分かる形にする

書面の作成や内容の判断は、弁護士などの専門家にご相談ください。

所有者が拒否した・連絡が取れない場合

残置物の所有者が処分を拒否した場合や連絡が取れない場合は、同意なしに片付けることはできません。次にご説明する引渡命令の手続に進みます。引渡命令には申立ての期限があるため、交渉が長引きそうなときは、並行して準備を始めておくと安心です。

引渡命令から強制執行までの流れ

競売の買受人は、一定の要件を満たす場合、明渡しの訴訟をしなくても、「引渡命令」という簡易な手続をもとに強制執行ができます(民事執行法83条)。賃借人の夜逃げで訴訟が必要になる場合との大きな違いです。ただし、使えない相手があり、申立てには期限もあります。

①引渡命令を申し立てる(対象と期限を確認する)

引渡命令は、元の所有者や不動産の占有者に対して出されます。ただし、買受人に対抗できる権原(抵当権より前からの賃借権など)で占有している人は、対象になりません(民事執行法83条1項ただし書)。物件明細書と実際の占有の状況を確認してください。

申立ては、代金を納付した日から6か月以内です(同条2項)。代金納付の時に、民法395条の明渡猶予を受ける賃借人が使っていた建物は9か月以内です。ただし、その賃借人に対しては、原則として代金納付から6か月の猶予期間が過ぎた後でなければ申し立てられません。建物の使用の対価を払わない場合などの例外は、申立先の裁判所や弁護士にご確認ください。

期限を過ぎると引渡命令は使えません。申立書の書式、手数料、必要書類は、申立先の裁判所の案内でご確認ください。

②引渡命令の確定・執行文・送達証明

引渡命令の正本は相手方に送達され、買受人にも送付されます。買受人への送付の方法は、申立先の裁判所の案内でご確認ください。元の所有者以外の占有者が相手方の場合は、原則として発令の前に審尋(意見を聴く手続)がおこなわれます。

相手方が引渡命令正本の送達を受けた日の翌日から1週間以内に不服を申し立てなければ(執行抗告)、引渡命令は確定します。確定したら、執行文(引渡命令で強制執行できることを裁判所書記官が証明するもの)の付与を受けます。あわせて、相手方への送達証明書をもらうと、強制執行の申立てに必要な書類がそろいます。

③執行官に強制執行を申し立てる・明渡しの催告

執行官に不動産の引渡し(明渡し)の強制執行を申し立て、予納金を納めます。執行は原則として申立てから2週間以内に始まり、執行官が現地で「明渡しの催告」をおこないます。

催告で定める引渡しの期限は、原則として催告の日から1か月を経過する日です。ただし、この期限は断行日(実際に明け渡させる日)とは別です。執行官は期限までの間に断行の予定日を定め、通常はその前日までに任意の明渡しを促します。

(参考:裁判所「不動産引渡(明渡)執行」)

④断行と残置物(目的外動産)の扱い

断行の日には、執行官が建物の中の動産(目的外動産)を取り除き、相手方やその同居の親族などに引き渡します。引き渡せない場合は執行官が売却でき、売却しなかった物は保管されます(民事執行法168条5項・6項)。

断行の日やその近い日に売却する手続もあり(民事執行規則154条の2)、買受人が動産を買い受けて処分する運用もみられます。強制執行での残置物の扱いは、夜逃げの残置物はどう処分する?勝手に捨てられない理由と撤去までの流れでも詳しくご説明しています。

競売の残置物の撤去費用は誰が払う?

強制執行に必要な費用(執行費用)は、法律上、その執行の相手方の負担です(民事執行法42条1項)。ただし、費用を先に納めるのは申立てをする買受人で、相手方に資力がなければ回収できないこともあります。一方、所有者の同意を得て任意に撤去する場合の費用は、当事者間の合意で決まります。

相手方に執行費用を請求するには

執行費用は、執行裁判所の裁判所書記官に額を定めてもらう申立てをしたうえで(民事執行法42条4項)、相手方に請求できます。ただし、相手方に資力がなければ、回収は難しくなります。

所有権放棄の書面をもらって買受人が撤去する場合は、強制執行の費用ではないため、負担は合意で決まります。買受人が負担する形が一般的なので、書面を交わすときに取り決めておきましょう。

強制執行にかかる費用の内訳

強制執行で明け渡す場合、主に次の費用がかかります。

  • 引渡命令の申立ての費用:手数料・郵便費用など(申立先の裁判所の案内で確認)
  • 執行官に納める予納金:東京地方裁判所の標準額では、不動産明渡等事件は基本額65,000円で、相手方(債務者)が1名、物件が1個増えるごとに40,000円が加算されます。額は裁判所によって異なります
  • 予納金に含まれない費用:作業員の日当、荷物の運搬、保管の費用など
  • 弁護士に依頼する場合:別に弁護士費用がかかります

(出典:東京地方裁判所「予納金額標準表」令和3年4月1日改定)

撤去費用を左右する要因

撤去の費用は、物件の状況によって大きく変わります。主な要因は次のとおりです。

  • 物量(軽トラック何台分か、2tトラック何台分か)
  • 搬出経路(エレベーターのない集合住宅の上階、前面道路の幅など)
  • 分別の手間と、買取できる物の有無

間取りごとの費用の目安は、残置物撤去の完全ガイド|費用・法律・正しい手順から優良業者の選び方まででご紹介しています。

任意売却物件の残置物は売主が処分するのが原則

任意売却は、住宅ローンなどを返せなくなった所有者が、債権者の同意を得て通常の売買で物件を売る方法です。売主が所有する残置物は、売主が処分するか、売買契約で扱いを決めます。賃借人やリース会社など第三者が所有する物は、売主の同意だけでは処分できません。

空にして引き渡すか、現況のまま引き渡すか

売主が室内を空にして引き渡すのか、残置物があるまま引き渡して買主が処分するのかを、売買契約の時点で決めます。残す物・処分する人・費用の負担を契約書や付帯設備表に書き、現況のまま引き渡す場合は、売主が所有する物について所有権放棄の書面をもらっておくと安心です。

第三者の物が残っていないかも、引渡しの前に確認しておきましょう。買主や仲介会社が勝手に処分できない点は、競売と同じです。

処分費・引越し費用を売却代金から出す場合

任意売却では、売却代金の配分に債権者(抵当権者)の同意が必要です。残置物の処分費や引越し費用を売却代金から差し引けるかは、債権者の判断によります。根拠として撤去業者の見積書が必要になるため、早めに用意しておきましょう。

売主が破産している・破産を予定している場合

売主が破産手続中の場合、破産財団に属する財産の管理と処分の権利は破産管財人にあります(破産法78条1項)。不動産の任意売却には裁判所の許可が必要で(同条2項1号)、売却の手続は管財人が進めます。

個人の破産では、生活に欠かせない家財など差押えが禁止された財産は、破産財団に入らず本人の物のままです(破産法34条3項2号)。室内の物を誰が処分するかは、管財人の先生に確認してください。

また、破産の申立てを予定している方が家財を売ったり処分したりすると、手続の中で問題になることがあります。申立て前の売却・処分は、依頼している弁護士に確認してから進めてください。

破産管財人の先生・法律事務所の方に向けたご案内は、破産管財の動産買取・残置物撤去|依頼の5ステップと見積・精算の考え方をご覧ください。

撤去の前に確認すること(取り分ける物と廃棄物の契約先)

所有権の整理がつき、撤去できる状態になっても、すべてをまとめて処分してよいわけではありません。取り分けておく物と、廃棄物を誰がどの業者と契約するかを確認します。

処分せずに取り分けておく物

次のような物が見つかった場合は処分せず、残置物の所有者・破産管財人・執行官など関係する方に連絡します。

  • 現金・貴金属・通帳・印鑑、権利証や契約書などの重要書類
  • 写真・位牌・仏壇など、持ち主にとって大切な物
  • 遺骨:処分せず、関係する方に連絡します
  • 自動車・バイク:ローン会社やリース会社が所有者のこともあり、所有者を確認せずに廃車にはできません
  • リース品・レンタル品・預かり品:第三者の物は、持ち主への返却が必要です

廃棄物は誰がどの業者と契約するか

再使用できない物は廃棄物として処理し、処分する方(買受人様・売主様など)が業者と契約します。環境省の通知は、残置物の区分を次のように示しています。

残置物については一般家庭が排出する場合は一般廃棄物となり、事業活動を行う者が排出する場合は当該廃棄物の種類及び性状により一般廃棄物又は産業廃棄物となる

(出典:環境省「建築物の解体時等における残置物の取扱いについて(通知)」平成30年6月22日)

住居の残置物でも、扱いは自治体によって分かれます。委託契約の前に、物件のある市町村(産業廃棄物は都道府県など)に区分を確認してください。

また、産業廃棄物の収集運搬業の許可は、積み込み・荷降ろしをおこなう区域を管轄する都道府県ごとに必要です(廃棄物処理法14条1項)。

  • 一般廃棄物に当たる物:市町村の一般廃棄物処理業の許可業者と、処分する方のご契約で処理します
  • 産業廃棄物に当たる物:当社の産業廃棄物収集運搬業の許可は埼玉県のものです。積み込みと荷降ろしをともに埼玉県内でおこなう場合に、当社の許可品目の範囲で収集運搬をお引き受けできます。マニフェストは排出事業者であるご依頼者様が交付し、処分は処分業者とご依頼者様のご契約になります
  • 埼玉県外で積み込み・荷降ろしをする場合:その都道府県の許可を持つ収集運搬業者へのご依頼になります

産業廃棄物の収集運搬の仕組みは、産業廃棄物収集運搬とはでご説明しています。委託先を選ぶ排出事業者の責任については、廃棄物処理に関する排出事業者責任の徹底について(通知)をご覧ください。

サンクルの対応(競売・任意売却物件の残置物撤去)

株式会社サンクルは、埼玉県坂戸市を拠点に、不動産会社様の残置物撤去をお手伝いしています。競売・任意売却の物件では、次のようなご依頼をお受けしています。

  • 同意がそろった後や、強制執行の後に残った物の撤去:仕分け・搬出をおこないます
  • 写真でのお見積もり:ご担当者様が現地に立ち会わなくても、写真をお送りいただければお見積もりできます
  • 任意売却の売主様からの買取:再販できる物は買取査定し、買取額を撤去費用から差し引きます。査定金額に納得いただけない場合は、買取をお断りいただけます。売主様が破産手続中、または申立てを予定されている場合は、前述のとおり管財人の先生や弁護士へのご確認が先になります
  • 引渡し前の作業:敷地の草刈りなども、あわせてご相談いただけます
  • 許可:産業廃棄物収集運搬業許可(埼玉県 許可番号01100248748)、古物商許可(埼玉県公安委員会 第431110057492号)
  • 対応エリア:片付け・撤去の作業は、埼玉県を中心に東京都・神奈川県の一部まで承ります。産業廃棄物の収集運搬は、埼玉県内で積み込み・荷降ろしをする場合に限ります

サービスの内容は残置物の買取・無料引取り・片付けのページでもご案内しています。

競売・任意売却の残置物に関するご質問

競売や任意売却の残置物について、確認しておきたい点をQ&A形式でまとめました。

Q:引渡命令の期限(6か月)を過ぎたらどうなりますか?

引渡命令は使えなくなり、明渡しを求める訴訟などで、別に強制執行の根拠(債務名義)を得る必要があります。時間も費用も増えるため、代金を納付したら早めに方針を決めましょう。

Q:敷地に車が残っています。処分できますか?

自動車は所有者を確認しないまま廃車や処分はできません。車検証などで所有者を確かめ、その所有者の同意を得るか、弁護士や執行官に扱いをご相談ください。

Q:エアコンや照明も残置物ですか?

建物に取り付けられた設備は建物と一緒に扱われることがあり、残置物に当たるかは個別に判断されます。物件明細書の記載を確認し、迷う場合は執行官や弁護士にご確認ください。

Q:元の所有者が破産して管財人がいます。残置物は誰と話せばよいですか?

破産財団に属する物は、破産管財人が管理しています。ただし、手続の進み具合や物によって相手が変わることがあるため、事件記録を確認のうえ、管財人の先生や弁護士にご相談ください。

まとめ

競売で落札しても、室内の残置物は買受人の物にはならず、勝手に処分できません。残置物には、元の所有者の物のほか、同居家族や賃借人、リース会社など第三者の物が含まれることもあります。片付ける方法は、所有者による搬出、所有権放棄の書面、引渡命令と強制執行の3つです。

引渡命令は、買受人に対抗できる権原で占有している人には使えず、申立ては原則として代金納付から6か月以内です。強制執行の費用は法律上その相手方の負担ですが、実際には買受人が予納し、回収できないこともあるため、入札前から見込んでおくと安心です。任意売却の物件では、売主が所有する物は売主が処分するのが原則です。

不動産会社様の競売・任意売却物件の残置物撤去のご相談は、株式会社サンクルまでお問い合わせください。写真見積もりにも対応しております。


※本記事は2026年10月時点の法令・裁判所の案内に基づく一般的な説明です。手続の詳細や費用は、申立先の裁判所の案内でご確認ください。個別の事案については、弁護士や執行官にご相談ください。