誰も住まなくなった空き家は、気づかないうちに湿気がたまりやすく、家が傷む原因になります。
湿気はカビやダニの発生を促し、建物の構造を弱めるだけでなく、健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
当社では空き家の片付けのご依頼をよくいただくのですが、「相続したけれども住む予定はないので放置している」という空き家がたくさんあります。
そういった空き家の中には、湿気でカビが発生していたり、雨漏りをして湿気がたまってしまっているケースも多くあります。
本記事では、放置された空き家に発生しやすい湿気の問題とその対策について分かりやすくご説明したいと思います。
空き家で湿気がたまる原因
湿気の多い地域にある空き家や、日当たりの悪い場所に建っている空き家は、湿気がたまりやすい傾向がありますが、湿度がそれほど高くない地域や日当たりの良い場所にある空き家でも湿気がたまって問題になる空き家がたくさんあります。
空き家で湿気がたまる主な原因は、以下の点が挙げられます。
【湿気の原因1】換気の不足
空き家では人が住んでいないため、窓を開けて換気をする機会が減ります。
そのため、室内の湿気が外に排出されず、湿気がこもりやすくなります。
【湿気の原因2】湿気の侵入
雨漏りや地面からの湿気の侵入など、外部からの湿気が入り込むことで、室内の湿度が上がります。
特に、長期間放置された空き家は、建物の劣化が進み、雨漏りなどが発生しやすくなります。
【湿気の原因3】結露の発生
室内の温度と外気温の差が大きい場合、窓や壁などに結露が発生しやすくなります。
特に冬場は、暖房を使用しない空き家では、室内の温度が低くなり、結露が発生しやすくなります。
結露によって発生した水分は、そのまま放置するとカビの原因にもなります。
湿気のたまりやすい場所
空き家では、特に以下の場所に湿気がたまりやすい傾向があります。
- 風通しの悪い場所: 押し入れ、クローゼット、納戸、地下室、屋根裏部屋などは、換気が十分に行き届かず、湿気がこもりやすいです。
- 水回りの近く: キッチン、浴室、トイレなどの水回りは、水を使用するため湿度が高くなりやすく、また、配管からの水漏れなども湿気を増やす原因となります。
- 北側の部屋: 日当たりが悪く、風通しも悪い北側の部屋は、特に冬場に結露が発生しやすく、湿気がたまりやすいです。
- 家具の裏や隙間: 壁に密着して置かれた家具の裏や、家具と家具の隙間などは、空気の流れが悪く、湿気がたまりやすいです。
- 床下: 床下は、地面からの湿気が上がってくるため、湿気がたまりやすい場所です。特に、床下の換気が不十分な場合は注意が必要です。
空き家の湿気で発生する8つの問題
空き家で湿気がたまると、以下のような様々な問題が発生する可能性があります。
【問題1】カビの発生
湿気が多い環境はカビの繁殖を促します。
カビの胞子を吸い込むことで、アレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が悪化したり、新たに発症したりする可能性があります。
また、カビは独特の臭いを発生させ、室内に不快な臭いが充満します。
(空き家のカビ対策に関しては『「空き家のカビ対策」を分かりやすくご説明します』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)
【問題2】ダニの発生
ダニの死骸や糞は、アレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎などの原因となります。
特に、免疫力の弱い子供や高齢者は注意が必要です。
空き家に入った際に、これらのアレルゲンを吸い込むことで、アレルギー症状が悪化する可能性があります。
ダニに刺されることで、かゆみ、発疹、蕁麻疹などの皮膚疾患を引き起こすことがあります。
特に、高温多湿な環境では、ダニの活動が活発になり、刺されるリスクが高まります。
【問題3】木材の腐朽
カビと同じ菌類で「木材腐朽菌」という菌がいます。
木材腐朽菌とは、木材を腐らせる菌類の総称です。
木材腐朽菌は、木材の主成分であるリグニン、セルロース、ヘミセルロースを分解する能力を持っています。
木材腐朽菌は繁殖する際に適度な水分を必要とするため、湿度が高い場所の木材に発生しやすいです。
柱や梁などの構造材が腐朽すると、建物の強度が低下し、倒壊の危険性も出てきます。
【問題4】シロアリの発生
シロアリは湿度の高い場所を好みます。
特に、ヤマトシロアリは乾燥に弱く、湿った木材や土壌を好みます。
一方、イエシロアリは自ら水を運ぶ能力があるため、乾燥した場所でも生息できますが、やはり湿度の高い環境を好みます。
シロアリは、建物の土台や柱などの主要な構造部材を食い荒らすため、建物の強度が著しく低下します。
最悪の場合、倒壊の危険性も出てきます。
床下や壁の中にシロアリが侵入し、木材を食い荒らすことで、床が沈んだり、壁に穴が開いたりするなどの被害が発生します。
天井裏の木材もシロアリの被害を受けやすく、天井が抜け落ちる可能性もあります。
【問題5】金属の腐食
空き家で湿気がこもると、様々な金属部分が腐食して問題を引き起こす可能性があります。
木材を固定するために使用されている釘やボルトも、湿気によって錆びやすく、腐食すると木材の強度が低下する可能性があります。
鉄製の古い水道管は、湿気によって錆びやすく、腐食すると水漏れや赤水が発生する原因になります。
給湯器の内部にも金属部品が多く使用されており、腐食すると故障やガス漏れを引き起こす可能性があります。
【問題6】悪臭
湿気はカビの繁殖を促し、独特のカビ臭を発生させます。
ダニの死骸や糞も独特の臭いを発生させることがあります。
湿気は、様々な雑菌の繁殖も促進します。
雑菌は、有機物を分解する過程で、アンモニアや硫化水素などの悪臭物質を発生させます。
これらの要因が複合的に作用することで、湿気がこもった空き家には、独特の嫌な臭いが発生しやすくなります。
【問題7】害虫の発生
湿気の多い空き家では、先程ご説明したシロアリやダニ以外にも以下の様な害虫が発生する可能性があります。
- ゴキブリ: 水を求めて湿気の多い場所に出現します。特にキッチンや浴室などの水回りに発生しやすく、不衛生な環境を作り出します。
- ムカデ: 湿気の多い場所を好み、ゴキブリなどを捕食するために家屋に侵入することがあります。毒を持っており、刺されると激痛を伴います。
- ヤスデ: 湿った場所を好み、落ち葉や腐植土などを食べます。大量発生すると、不快感を与えるだけでなく、家屋への侵入を試みることもあります。
- ナメクジ・カタツムリ: 湿った場所を好み、植物の葉などを食べます。大量発生すると、庭や畑に被害を与えるだけでなく、家屋への侵入を試みることもあります。
【問題8】資産価値の低下
空き家が放置されている理由として、「なんとなく」という理由が非常に多くあります。
実家を相続したけれど、将来も実家に戻って暮らす予定はないという方が、「急いで売る必要もないし・・・」と放置されているケースが非常に多いです。
当社にご依頼頂いたお客様の中には、「長年放置していたけれど、訳があって急に売却しなければいけなくなったから、中の物を片付けなければいけなくなった」という方はたくさんいらっしゃいます。
長年放置していて上記のような1から7のような問題が発生していると、建物の資産価値が低下してしまう可能性があります。
空き家の湿気予防策
空き家で湿気がたまらないようにするための予防策は、大きく分けて以下の3つの方法があります。
【予防策1】換気
換気は湿気対策の基本です。
空き家であっても、定期的に窓を開けて換気を行うことが重要です。
すべての窓を開け放ち、空気の入れ替えを行いましょう。
特に、晴れて乾燥した日には、積極的に換気を行いましょう。
もし空き家に24時間換気システムが設置されている場合は、稼働させておきましょう。
窓を開けて扇風機を回すことで、空気の流れを作り、換気効率を高めることができます。
床下換気口が閉塞していないか、定期的に確認しましょう。
【予防策2】除湿
除湿剤の設置も有効ですが、除湿剤は密閉した空間でないと効果を発揮しません。
押し入れやクローゼット、タンスの中など、密閉されて湿気がたまりやすい場所に除湿剤を設置しましょう。
定期的に除湿機を使用して、室内の湿度を下げることも効果的です。
特に、梅雨時期や夏場は除湿機を活用しましょう。
除湿機を使うときにはサーキュレーターなどを併用して部屋の空気を循環させるとより効果的です。
エアコンがある場合は、ドライ機能を使用して除湿することもよいでしょう。
新聞紙の活用する方法もあります。
新聞紙を床や壁に敷くことで、湿気を吸収することができます。
ただし、フローリングなどに敷くと新聞のインクが移ってしまう場合があるので注意してください。
新聞紙を敷く場合は、定期的に交換しましょう。
【予防策3】修理・点検
雨漏りは湿気を大幅に増加させる原因となります。
雨漏りを見つけたら、早めに修理しましょう。
雨漏り以外にも水回りの水漏れは湿気を増やす原因となりますので、水回りを定期的に点検し、水漏れがあれば修理しましょう。
外壁のひび割れから雨水が侵入する場合もありますので、外壁のひび割れを見つけたら、早めに補修しましょう。
庭木が茂りすぎると、日当たりや風通しが悪くなり、湿気がたまりやすくなる場合もありますので、定期的に庭木の剪定を行いましょう。
空き家の湿気対策
空き家で湿気がたまってしまった場合は、早急に対処することが重要です。
まずは予防策でご説明した「換気」と「除湿」をおこないましょう。
放置すると、カビやダニの発生、建物の劣化を招く可能性があります。
カビ対策
目に見えるカビを発見した場合は、消毒用エタノールや市販のカビ取り剤を使用して除去しましょう。
ただし、カビの胞子を吸い込まないように、マスクや手袋を着用し、換気をしながら作業してください。
カビが発生しやすい水回りや窓のサッシなどは、特に念入りに清掃しましょう。
カビの再発を防ぐために、防カビ剤を使用することも有効です。
(空き家のカビ対策に関しては『「空き家のカビ対策」を分かりやすくご説明します』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)
まとめ
本記事では、放置された空き家に発生しやすい湿気の問題とその対策について説明させていただきました。
空き家の湿気をためないようにする必要性をご理解いただけたのではないかと思います。
お住まいの場所から遠いところにある空き家の場合は、なかなか定期的に訪問して換気をするのは難しいという方も多いと思います。
最近は空き家管理の会社も増えていますので、近くの空き家管理会社に相談されるのも良いと思います。
埼玉県での空き家の片付けでお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。