
オフィスの移転にともなう不要になった大量のデスク、チェア、キャビネットなどの「什器の処分」は、最も頭が痛い問題の一つではないでしょうか。
「スチールデスクは粗大ごみで出せないの?」
「"産廃(さんぱい)"って聞いたけど、具体的に何をすればいい?」
「"マニフェスト"って何? 法律違反になったらどうしよう…」
「費用は一体いくらかかる? 少しでも安く、できれば買い取ってほしい!」
このようなお悩みの経営者の方も多いと思います。
オフィスの什器処分は、家庭ごみの延長で考えると、思わぬ法的トラブルに発展する可能性があります。
しかし、正しい知識と手順さえ踏まえれば、法令を遵守しつつ、コストを最小限に抑えることが可能です。
この記事では、オフィスの什器の処分でつまずきやすいポイントを分かりやすく解説します。
「捨てる」は最後の手段! 移転コストを削減する3つの選択肢
多くの担当者様が「不要な什器=廃棄物」と考えがちですが、それはコスト面で最善の策とは言えません。
「廃棄コスト」をいかに「削減」、さらには「収益」に変えるか。
まずはこの視点から3つの選択肢を検討しましょう。
【買取】まだ使える什器は「売る」

廃棄コストが「収益」に変わる、最も理想的な方法です。
オフィス家具専門の買取業者に査定を依頼しましょう。
買取対象になりやすい什器
特に高値がつきやすいのは、状態が良く、需要の高い什器です。
- ブランドチェア: オカムラ、コクヨ、ハーマンミラー、エルゴヒューマンなどのブランド品は、高価買取が期待できます。
- 新しいスチール家具: 製造から5〜7年以内が目安ですが、人気モデルのスチールデスク、キャビネット、書庫なども安定した需要があります。
- 応接セット・会議テーブル: デザイン性が高いものや、大型の会議テーブルなどはセットで買い取られるケースが多くあります。
高く売るための3つのコツ
少しの手間で査定額が変わる可能性があります。
- まとめ売り・セット売りを心がける: デスクとチェア、キャビネット同士など、オフィス家具は単体よりもセット(例:執務室一式)で売却する方が高値がつきやすくなります。
- きれいな状態にして査定を受ける: 当たり前のようですが、ほこりを拭き、簡単な汚れを落としておくだけで査定時の印象が大きく変わります。
- 相見積もりを徹底する: 業者によって得意な什器や販売ルートが異なるため、査定額には幅が出ます。必ず複数の業者に査定を依頼し、相場を把握しましょう。
買取方法には、業者にオフィスまで来てもらう「出張買取」、宅配便で送る「宅配買取」、自社で持ち込む「持込買取」 がありますが、什器が大量にあるオフィス移転では「出張買取」が一般的です。
当社では長年バイヤーをしている経験者も在籍していますので、無料で買取査定もおこなっています。
【寄付・リユース】社会貢献(SDGs)という選択
買取金額がつかないまでも、まだ十分に使える状態の什器は「寄付」も有力な選択肢です。
廃棄コストを削減できるだけでなく、企業のCSR(社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みとして、社内外にアピールできるという副次的効果も期待できます。
NPO法人や各種支援団体を通じて、国内の福祉施設や学校、または海外の発展途上国へオフィス什器を寄付するスキームが確立されています。
使用済みのオフィス什器を分別・選定し、相手国のニーズに合わせて寄付する専門の事業者も存在します。
将来的には、廃棄物削減の根本的な解決策として、製品を分解・洗浄・再組立する「リマニュファクチャリング(再製造)」の市場や、そもそも什器を「所有しない」家具のサブスクリプションサービスも注目されています。
【廃棄(処分)】売れない・譲れない場合の最終手段

買取も寄付も難しい什器(破損、著しい汚れ、機能不全、旧式すぎるもの)は、最終手段として法に則って「廃棄」します。
ここからが本記事の核心である「産業廃棄物処理」です。
家庭ごみとは全く異なる、厳格なルールが存在します。
「買取」「寄付」「廃棄」のメリット・デメリット
まずは、自社の什器がどの選択肢に当てはまるか、この表を使って判断しましょう。
| 選択肢 | コスト | 法的手間 | 環境負荷 (SDGs貢献) | スピード・手軽さ |
| 買取 | ◎ 収益になる | △ 査定・交渉の手間 | ◎ リユース(高貢献) | △ 業者選定・日程調整が必要 |
| 寄付 | ○ 廃棄費用は削減 | △ 寄付先選定・調整 | ◎ リユース(高貢献) | △ 調整に時間がかかる場合あり |
| 廃棄 | × 処分費用が発生 | ×× 法的手続きが必須 | × 焼却・埋立(高負荷) | ○ 専門業者に一任できる |
知らないと罰則も! オフィス什器処分の「法的責任」

什器を「廃棄する」と決めた場合、ここからは家庭ごみの感覚を完全に捨てなければなりません。
法律違反を犯さないための最低限の知識を身につけましょう。
オフィスの什器は「家庭ごみ」では捨てられない
まず大前提として、オフィスや店舗などの「事業活動」から出るごみは、その量や大きさに関わらず「事業系ごみ」に分類されます。
事業活動から出るごみ(事業系ごみ)は、家庭向けの粗大ごみや一般ごみとして出すことはできません。
自治体条例で禁止されており、悪質な場合には廃棄物処理法上の「不法投棄」として処罰の対象となることもあります。
したがって、オフィス什器などの廃棄は、必ず事業者向けの正規ルート(産業廃棄物処理業者または自治体指定の事業系処理ルート)で行う必要があります。
「排出事業者責任」とは?
ご担当者様が必ず知らなければならない、最も重要な法律上の原則が「排出事業者責任」です。
これは、廃棄物処理法において「ごみを出した事業者(=あなたの会社)」が、その廃棄物が最終的に正しく処分されるまで、一切の責任を負うという考え方です。
たとえ処理業者に高額な費用を払って什器の処分を「委託」した後でも、その業者がもし山中などに不法投棄をした場合、ごみを出した「排出事業者」であるあなたの会社も、排出者としての責任を問われ、罰則(原状回復措置命令など)の対象となるのです。
この責任を法的に果たしている、という「証拠」を残すための手続きが、次章で解説する「委託契約書」と「マニフェスト」なのです。
あなたのオフィスのごみは「産廃」か「一廃」か?
担当者様が次につまずくのが、この分類です。事業系ごみは、法律で「産業廃棄物(さんぱい)」と「事業系一般廃棄物(いっぱんはいきぶつ、一廃)」の2つに厳密に分けられます。
なぜこの分類が重要かというと、「産廃」と「一廃」では、処理を委託できる業者の「許可」が全く異なるからです。
産業廃棄物(産廃)
法律で定められた20品目です。オフィス什器の多くがこれに該当します。
- 金属くず: スチールデスク、スチール棚、金属製の脚の椅子、金庫など。
- 廃プラスチック類: OAチェアの背もたれやキャスター、アクリル製パーテーションなど。
- ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず: ガラス製パーテーション、陶器類など。
事業系一般廃棄物(一廃)
産業廃棄物 以外 の事業系ごみです。
- 木くず: 100%木製の机、椅子、棚など。
- 紙くず: オフィスの書類(リサイクルできないもの)など。
ここで最大の注意点があります。
例えば「木製の机」であっても、取っ手が金属であったり、構造部に金属ネジが使われていたりすれば、それは「木くず」と「金属くず」の「混合廃棄物」となります。
「混合廃棄物」とは、複数種類の廃棄物が混ざった状態を指します。
産業廃棄物どうしが混ざった場合は「混合産業廃棄物」として扱われます。
一方で、産業廃棄物と事業系一般廃棄物が混ざっている場合、自治体の運用上、全体を産業廃棄物として扱うケースが多いため、オフィス什器のように複数素材(鉄・プラスチック・木など)を含むものは、実務上「産業廃棄物」として処理するのが安全です。
結論として、オフィス移転で出る什器のほとんどは「産業廃棄物」に該当すると覚えておいてください。
(※ただし、木製家具のように素材や業種によっては事業系一般廃棄物に区分される場合もあるため、最終的な区分は自治体や処理業者に確認することが望ましいです。)
「産業廃棄物」と「事業系一般廃棄物」の違い
この2つは、委託先も法的手続きも全く異なります。
| 項目 | 産業廃棄物(産廃) | 事業系一般廃棄物(一廃) |
| 定義 | 法で定められた20品目 | 産廃以外の事業系ごみ |
| オフィス什器の例 | スチールデスク、OAチェア、金属棚、パーテーション | 100%木製の机、木製の本棚 |
| 処理の委託先 | 産業廃棄物処理業許可業者 (都道府県知事等の許可) | 一般廃棄物収集運搬業許可業者 (市区町村長の許可) |
| 法的義務 | 委託契約書(書面)+マニフェスト交付 | 委託基準の遵守(自治体により異なるが、契約書等は通常必要) |
実際にはオフィスから両方が発生するため、実務上は「産廃」と「一廃」両方の許可を持つ業者か、それぞれの手配をまとめて代行してくれる「ワンストップ」の業者に依頼するのが最も安全で効率的です。
「委託契約」と「マニフェスト」
什器が「産業廃棄物」に該当すると分かったら、次はその処分プロセスを法的に管理する手続きに入ります。
これが「排出事業者責任」を果たすための具体的なアクションです。
委託契約書の締結(「捨てる前」の約束)
産業廃棄物の処理を他社に委託する場合、口約束での依頼は法律違反です。
必ず「書面」で契約を結ぶ必要があります。
最重要ルール「二者間契約」
法律は、契約の形態を厳格に定めています。
ごみを出す「あなた(排出事業者)」は、
- 什器を運ぶ「収集運搬業者」
- 什器を処分(破砕・焼却・埋立など)する「処分業者」
のそれぞれと、直接、書面で契約を結ぶ必要があります。
- よくあるNG例: 収集運搬業者に「処分先もまとめてお願い」とだけ伝え、収集運搬業者としか契約しないのは違反です(収集運搬業者が処分業者と結ぶ契約は「再委託契約」となり、原則禁止されています)。
契約書の必須事項
契約書には、委託する産業廃棄物の種類や数量、料金はもちろん、お互いの許可証の写しを添付することが義務付けられています。
契約書の保存義務
この契約書(および添付書類)は、契約終了日から5年間保存する義務があります。
マニフェスト(産業廃棄物管理票)の運用(「捨てた後」の管理)
マニフェスト(産業廃棄物管理票)とは、廃棄する什器(産廃)に添付する「送り状」のことです。
これは、先程説明した「排出事業者責任」を果たすための管理票です。(※マニフェストに関しましては『産業廃棄物マニフェスト(産業廃棄物管理票)をわかりやすく解説します』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
委託した什器が、契約書通りに収集運搬され、契約通りの処分業者によって正しく処分されたかを、この伝票のやり取りで追跡・確認します。
万が一、不法投棄事件が起きても、このマニフェストを適正に運用していれば、排出事業者としての管理責任を果たしていた証拠となります。
実務で最も使われる「紙マニフェスト」の運用フローを、時系列で解説します。
- 【当日:什器引渡し時】
- あなた(排出事業者)は、7枚複写のマニフェストに必要事項(廃棄物の種類、数量、運搬業者名、処分業者名など)を記入します。
- 収集運搬業者のサインをもらい、1枚目の A票 を引き抜き、自社の控えとして保管します。
- 残りの6枚(B1〜E票)を収集運搬業者に渡します。
- 【数日後:運搬完了時】
- 収集運搬業者が処分業者に什器を引き渡すと、処分業者の受領サインが入った B2票 が、収集運搬業者からあなた(排出事業者)へ返送されます。
- あなたの確認義務: 手元のA票と返送されたB2票を照合し、「運搬が契約通りに完了したこと」を確認します。
- 【数日〜数ヶ月後:処分完了時】
- 処分業者が什器の処理(例:破砕、選別)を完了すると、D票 が処分業者からあなたへ返送されます。
- あなたの確認義務: A票、B2票、D票を照合し、「中間処理が契約通りに完了したこと」を確認します。
- 【最終:最終処分完了時】
- (中間処理を経て)最終処分(例:管理型最終処分場への埋立)が完了すると、E票 が処分業者からあなたへ返送されます。
- あなたの確認義務: すべての伝票を照合し、「委託した廃棄物のすべての処理が法に則って完了したこと」を確認します。このE票の確認をもって、あなたの排出事業者責任は完了します。
マニフェストの確認義務(期限)
あなたは、マニフェストを交付した後、法律で定められた期間内に上記の伝票が返送されてくるかを確認する義務があります 23。
- 90日以内:D票(中間処理完了)の返送確認
- 180日以内:E票(最終処分完了)の返送確認
もし、この期限内に伝票が返送されてこない場合、それは処理プロセスで何か異常(業者の倒産、不法投棄など)が発生しているサインかもしれません。
あなたは速やかに業者に状況を確認し、適切な措置を講じ、都道府県等に報告する義務があります。
これが「排出事業者責任」の具体的な行動です。
「紙マニフェスト」と「電子マニフェスト」どっちがいい?
上記の通り、紙マニフェストの運用は非常に煩雑です。
そこで強くお勧めしたいのが「電子マニフェスト」です。
| 項目 | 紙マニフェスト | 電子マニフェスト |
| 事務負担 | × 7枚の伝票への手書き・照合・郵送が面倒 | ◎ PC・スマホで登録・報告が完結 |
| 保管義務 | × A, B2, D, E票を5年間、紙で保管 | ◎ 不要(情報処理センターが管理) |
| 行政への報告 | △ 産業廃棄物管理票交付等状況報告書(年1回)が必要 | ◎ 不要 |
| 確認漏れリスク | × 90日/180日ルールを自力で管理 | ◎ 期限が近づくとアラートで通知 |
| 導入 | ○ 伝票購入のみ | △ 事前登録と、委託業者の加入が必要 |
特に「90日/180日の確認漏れ」は、担当者が気づかぬうちに法律違反を犯してしまうリスクの高いポイントです。
電子マニフェストであれば、この管理をシステムが自動で行ってくれるため、オフィス移転で多忙な担当者様にとって、事務負担と法的リスクの両方を劇的に軽減できる最善の策と言えます。
(※電子マニフェストに関しましては『電子マニフェストをわかりやすく解説します』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
失敗しない「処理業者」の選び方と費用相場
法律と手続きを理解したら、最後のステップは「誰に頼むか」です。
業者選びの失敗は、法的リスクと金銭的トラブルに直結します。
「無料回収」「格安処分」に潜むワナ
オフィス移転のコストを少しでも抑えたいという心理につけ込む、悪質な業者も存在します。
「無料」や「相場より極端に安い」を謳う業者には、まず警戒してください。
【トラブル事例1】高額請求
「無料なのはトラックへの積込代だけ」などと称し、作業終了後に法外な処分費や運搬費を請求されるケースです。
見積書が曖昧だったり、口頭での見積もりしかない場合は特に危険です。
【トラブル事例2】不法投棄
最も深刻なリスクです。業者が正規の処分費用を惜しみ、受け取った什器を山中などに不法投棄するケースです。
前述の「排出事業者責任」により、警察の捜査が入った場合、あなたの会社が排出者として特定され、罰則や、投棄された什器の撤去(原状回復)費用を負担させられる可能性があります。
【トラブル事例3】無許可営業
そもそも「産業廃棄物処理業」の許可を持たずに営業している業者です 1。トラブル発生後に連絡しようとしても、事務所の住所が空き地だったり、電話が繋がらなくなったりするケースが報告されています 24。
優良な業者の見つけ方(「許可」の確認)
では、どうすれば信頼できる業者を見つけられるのでしょうか。
答えは「公的なデータベースで許可を確認する」ことです。
必須条件
委託する業者が、都道府県知事等から「産業廃棄物収集運搬業」および「産業廃棄物処分業」の正規の許可を得ていること。
具体的な確認方法:「産廃情報ネット」の使い方
環境省が管轄する「産廃情報ネット(産業廃棄物処理業許可 行政情報検索システム)」を使えば、全国の正規許可業者を検索できます。
- 手順:
- 「産廃情報ネット」にアクセスします。
- 「処理業者名から探す」または「地域・許可情報から探す」をクリックします。
- 見積もりを検討している業者の「正式な会社名」を入力して検索します。
- 検索結果に表示されれば、正規の許可業者です。もしヒットしない、あるいは社名が微妙に異なる場合は、無許可営業の可能性が極めて高いです。
許可証のチェックポイント
検索して出てきた業者の詳細ページで、必ず「許可証」の写し(PDFや画像)を確認します。
見るべきは以下の2点です。
- 許可の有効期限: 期限が切れていないか。
- 事業の範囲(取り扱い品目): ここが非常に重要です。あなたの会社が捨てたい什器の「品目」が、その業者の許可証に記載されているか確認します。
- 例: スチールデスクやOAチェアを捨てるなら、許可品目に「金属くず」「廃プラスチック類」の記載が必要です。もし許可証に「木くず」としか書かれていない業者にスチールデスクの処分を委託したら、それは「無許可業者への委託」となり、法律違反になります。
費用の見積もり方
正規の許可業者であることを確認したら、次はいよいよ見積もりです。
処分費用は「①処分費」+「②運搬費」で構成されるのが一般的です。
- ① 処分費(m3単価 vs kg単価)
- m3(立米)単価: 比較的軽くかさばるもの(混合廃棄物、木くずなど)で使われることが多い単位です。
- kg(重量)単価: 重くかさばらないもの(廃プラスチック類、金属くずなど)で使われることが多い単位です。
- ② 運搬費(車両費)
- 2t車、4t車など、什器の総量に応じたトラックのサイズで「1台あたりいくら」という形で決まる基本料金です。
産廃処分費用の目安(品目別・車両別)
費用は地域や業者によって大きく異なりますが、大まかな予算感を掴むための目安を以下に示します。
| 項目 | 単位 | 費用目安(税別) |
| 混合廃棄物 (不燃/重量物) | m3 (立米) | 20,000円 ~ 23,000円 |
| 混合廃棄物 (工場系) | m3 (立米) | 7,000円 ~ 9,000円 |
| 木くず (リサイクル可) | kg | 18円 ~ |
| 廃プラスチック類 | kg | 70円 ~ 75円 |
| 運搬費 (2t車) | 1台 | 19,000円 ~ 22,000円 |
| 運搬費 (4t車) | 1台 | 22,000円 ~ 23,000円 |
(重要) これらはあくまで一部のデータに基づく一例です。価格は地域(都市部か郊外か)、業者の処理方法(焼却かリサイクルか)、廃棄物の状態(分別されているか)によって大きく変動します。必ず複数の正規許可業者に現場を見てもらい、相見積もりを取得してください。
【コスト削減の裏ワザ】買取と産廃処分を「ワンストップ」で頼むメリット
ご担当者様の「コスト」と「コンプライアンス」の悩みを一挙に解決する、最も実践的な方法がこれです。
オフィス什器の「買取」と「産廃処理」の両方を行える業者 に、すべての作業を「ワンストップ」で依頼することには、計り知れないメリットがあります。
【メリット1】コストの相殺(費用の最適化)
買取をしてもらうことはコスト面での大きなメリットです。
買取可能な什器(プラスの収益)と、廃棄する什器(マイナスの費用)を、同じ業者で相殺計算できます。
例えば、廃棄処分費の総額が30万円かかるところ、買取可能なブランドチェアやスチール書庫に10万円の値段がつけば、実質的な支払い(持ち出し)は20万円で済むことになります。
【メリット2】法務・事務負担の軽減
「買取業者」「産廃業者」「一廃業者」…と、個別に探し、それぞれと契約し、マニフェストを管理するのは膨大な手間です。
ワンストップ業者であれば、窓口が一つで済みます。
法的に必要な契約やマニフェストの管理についても、プロとして一元的にサポートしてくれるため、担当者様の事務負担と法的リスクが大幅に軽減されます。
【メリット3】時間の短縮(スケジュールの最適化)
「A業者が買取品を搬出」「B業者が廃棄品を搬出」と日程を分ける必要がありません。
移転・搬出日に、買取品も廃棄品も一度にすべて搬出してもらえるため、スケジュール管理が非常に楽になります。
こんな時どうする? 特殊な什器・備品の処分法
一般的なデスクやチェア以外に、オフィスには処分に困る特殊な備品があります。代表的な3つのケースを見ていきましょう。
【ケース1】パソコン(PC)とモニター
PCの処分で最重要の注意点は「データ消去の徹底」です。
廃棄物処理法の話以前に、情報セキュリティの問題です。PCやサーバーには、顧客情報や機密情報が詰まっています。
業者に「データ消去もお願い」と丸投げするのではなく、自社の責任において、専用ソフトでの完全消去、あるいはHDDの物理破壊(穿孔)を行うのが鉄則です。
リース品の場合は、返却時のルールを必ず確認してください。
処分方法1:メーカー・業界団体(PC3R)による回収
一般社団法人パソコン3R推進協会(PC3R) など、メーカー各社が共同で行っている事業系PCのリサイクルスキームを利用する方法です。
- 最大のメリット:「マニフェストが不要」 。これは「広域認定制度」という法律の特例に基づいています。メーカーが排出事業者(あなたの会社)に代わってリサイクル処理の責任を負うため、あの煩雑なマニフェストの交付・管理が一切不要になります。
- 費用目安: 例えばPC3Rの料金例では、PC1台あたり3,300円 + 受付手数料(1契約あたり1,650円)などが設定されています。
処分方法2:産業廃棄物処理業者への委託
他の什器と一緒に、「金属くず」や「廃プラスチック類」の混合廃棄物として産廃業者に委託する方法です。
- 注意点: この場合は特例ではないため、マニフェストの交付が必須です。
PCやモニター類は、他の什器とは別に「PC3R」などのメーカーリサイクルルートに出す方が、マニフェスト管理の手間が省け、情報漏洩リスクも管理しやすいためお勧めです。
【ケース2】金庫(耐火金庫)
金庫は、オフィス什器の中で最も処分が難しい品目の一つです。
家庭ごみの「粗大ごみ」で出せないのはもちろん、多くの自治体で「適正処理困難物」に指定されています。
適正処理困難物とは、大きすぎる、重すぎる、または破砕・焼却が困難、引火・爆発の危険がある、感染性・有害物質を含むなどの性質を持つために、市のゴミ収集や一般的な処理施設では適正に処理できない廃棄物のことです。
金庫が「適正処理困難物」に指定される理由は、その特殊な構造にあります。
耐火金庫は、火災から中身を守るため、外側の「鋼材」の間に、断熱材として「気泡コンクリート」や「特殊合金」が充填されています。
この金属とコンクリートの複合素材は、自治体の一般的なごみ処理施設では破砕・処分が極めて困難なため、回収対象外となっているのです。
(※手提げ金庫(小型)のみ、自治体によっては「粗大ごみ」や「金属ごみ」として回収可能な場合があります。)
処分方法:金庫専門の処分業者・不用品回収業者への依頼
産廃業者の中でも、重量物の運搬と金庫の解体・処分に対応できる専門業者への依頼が必要です 34。
- 注意点: 鍵が開かない金庫、ダイヤル番号が不明な金庫は、中身の確認や解体作業ができないため、処分(回収)自体を断られるケースがほとんどです 33。その場合は「鍵開け」と「処分」をセットで依頼できる専門業者を探す必要があります 34。
金庫の処分費用(重量別目安)
金庫の処分費用は、ほぼ「重量」で決まります。
1kgあたり 200円~300円程度が目安とされています。
| 重量 | 費用相場(目安) |
| ~30kg (小型) | 6,000円 ~ 11,250円 |
| 50kg ~ 60kg (中型) | 10,000円 ~ 15,000円 |
| ~100kg (大型) | ~ 30,000円 |
| 200kg | 40,000円 ~ 50,000円 |
追加費用: 上記はあくまで処分費と基本運搬費です。階段での搬出(特に階下ろし)、クレーン作業など、搬出状況が困難な場合は、追加の作業費用が発生するのが一般的です。
【ケース3】パーテーション
オフィスを区切っていたパーテーションも、もちろん産業廃棄物です。
- 処分方法: 材質(アルミ、スチール、ガラス、クロス貼り)に関わらず、オフィスで使用していたものは「産業廃棄物」として処理します。
- アルミ製・スチール製:「金属くず」
- ガラス製:「ガラスくず」
- クロス(布)貼り:複合素材のため「混合廃棄物」
- 費用目安: パーテーションは、本体の「処分費」に加えて「解体作業費」が別途かかるのが一般的です。
- 解体作業費(㎡単価): アルミ 700円/㎡~、スチール 900円/㎡~
- 廃棄処分費(m3単価): 20,000円/m3~
- 別例(枚数単価): 基準パネル(W900xH2100)1枚あたり 1,000円 + 搬出作業費・運搬費
パーテーションの解体・搬出には専門技術が必要なため、産廃処理許可とオフィスの内装解体作業の両方を行える業者に依頼するのが最もスムーズです。
まとめ

オフィス移転の什器処分は、確かに法的な責任も重く、手続きも複雑で、ご担当者様にとっては大変な業務です。
「排出事業者責任」という原則を理解し、信頼できるパートナー(処理業者)を見つけ、法的な手続き(契約とマニフェスト)をしっかり行う。
この流れさえ押さえれば、何も恐れることはありません。
最後に、移転担当者様が実行すべき「最終チェックリスト」をご用意しました。
このリストを一つずつ確認し、法令とコストの両面で最適なオフィス移転を実現してください。
【移転担当者のための最終チェックリスト】
- □ 1. 仕分け: 什器を「買取できるもの」「寄付できるもの」「廃棄するもの」に仕分けたか?
- □ 2. 業者選定: 廃棄を依頼する業者の「産業廃棄物処理業許可」を「産廃情報ネット」で確認したか?
- □ 3. 許可内容: 業者の許可証の「事業の範囲」に、捨てる什器(金属くず、廃プラ等)が確かに含まれているか確認したか?
- □ 4. 見積もり: 複数の正規業者に見積もりを依頼し、買取と廃棄の「ワンストップ対応」 も検討したか?
- □ 5. 契約: 「収集運搬業者」と「処分業者」それぞれと、書面で「委託契約書」を締結したか?
- □ 6. 特殊品: PC(データ消去とPC3R)や金庫(鍵開けと重量確認)など、特殊な什器の処分ルートは別途確保したか?
- □ 7. 当日(マニフェスト): 什器の搬出時に、マニフェスト(できれば電子)を交付し、控え(A票)を保管したか?
- □ 8. 事後(マニフェスト): 返送される伝票(B2, D, E票)を確実に確認し(90日/180日ルール)、A票と照合する体制を整えたか?
早期の計画と、信頼できるパートナー選びが、オフィス移転成功の最大の鍵です。
この記事が、ご担当者様の不安を解消し、スムーズなオフィス移転を実現するための一助となれば幸いです。

