
木製パレット(木パレット)は物流業や倉庫業で荷物の運搬・保管に欠かせない道具です。
安価で耐久性も高く、多くの業種で使われています。
しかし、不要になった木製パレットをどう処分すればよいか悩む方も多いのではないでしょうか。
「産業廃棄物として処分すべき?」「自治体で回収してくれるの?」といった疑問を解消するため、木製パレットの廃棄区分や具体的な処分方法、費用相場や注意点についてわかりやすくご説明したいと思います。
木製パレットは何ゴミ?産業廃棄物か一般廃棄物か
まず重要なのは、木製パレットが法律上どの区分のゴミになるかです。
結論から言うと、事業で使用した木製パレットは「産業廃棄物」に分類されます。
もともとは事業系一般廃棄物と扱われていましたが、平成20年(2008年)4月の法改正により産業廃棄物に区分変更されました。(参考:環境省公式ホームページ『廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令の施行について』)
物流や製造業など多業種から大量に排出される実態を踏まえ、適正処理を徹底する目的で変更された経緯があります。
2008年4月1日施行の施行令改正により、「貨物の流通のために使用したパレットに係る木くず」は産業廃棄物(木くず)に追加されました※産業廃棄物として処分する際は、産業廃棄物収集運搬・処分の許可を持つ業者に委託しなければなりません。
一方、一般家庭で使用した木製パレット(例:DIY用途で入手したものなど)は産業廃棄物とはみなされず、自治体のルールに従って処分できるケースがあります。
ただしパレット自体、大型で頑丈なため多くの自治体では粗大ごみとして扱われることが多いです。
自治体によって取り扱いやサイズ基準が異なるため、事前に確認が必要です。
また事業者(会社や店舗)から出るパレットは自治体の粗大ごみ回収対象にはなりません。
事業活動で生じた廃棄物は自社で適切に処理する責任(排出事業者責任)があり、許可業者へ委託して処分する義務があります。
木製パレット処分の基本ルールと手続き
産業廃棄物としての木製パレットを処分する際には、いくつか守るべきルールと手続きがあります。
- 許可業者への委託:産業廃棄物の収集運搬・処分の許可を持つ業者に処分を依頼する必要があります。自治体から許可を受けた正規の産廃処理業者であれば、法律に則った適正処理を行います。
- マニフェスト(産廃管理票)の発行:排出事業者は処分委託時に産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付しなければなりません。マニフェストとは廃棄物が適正に処理されたことを証明・追跡するための書類で、委託先業者が最終処分まで完了後に返送します。排出事業者は交付後90日以内に処理が完了したか確認する義務があります。
- 無許可業者・不法投棄への注意:許可のない業者に依頼したり、自ら不適切な処分(埋め立て放置・焼却など)を行うことは法律で禁止されており罰則の対象です。万一委託先が不法投棄を行えば、依頼した排出事業者も廃棄物処理法違反で処罰されます。違法処分は会社の信用失墜にも繋がるため絶対に避けましょう。
以上を踏まえ、以下で具体的な処分方法を事業者向けと一般家庭向けに分けて紹介します。
それぞれメリット・デメリットや費用感も解説します。
【事業者向け】木製パレットの処分方法
業務で使用した木製パレットは産業廃棄物扱いとなるため、事業者は自治体の通常回収に出せず、基本的に自社で処理手配が必要です。
主な処分方法には以下のような選択肢があります。
| 処分方法 | 概要・メリットなど |
|---|---|
| 取引先に引き取ってもらう | 納品時に使用したパレットを、商品受取後に取引先へ回収してもらう方法です。 多くの物流現場で行われる一般的な手順ですが、取引先によって引取に費用がかかる場合や対応不可の場合もあるため事前確認が必要です。 |
| パレット買取業者に売却 | 中古パレットの買取専門業者に引き取ってもらう方法です。 状態の良いパレットであれば 無料または多少の買取金額で処分可能。 ただし破損が激しいものなどは買取不可となるケースもあります。 大量にある場合は一括で在庫整理でき、リサイクルにも貢献できます。 |
| 製造メーカーに依頼 | パレットの製造元やレンタルパレット会社が使用済みパレットを回収してくれる場合があります。 リサイクル推進の観点から引き取り対応している企業も多く、その場合無償回収となることが一般的です。 ただし「フォークリフトは依頼者側で用意」「工場へ直接持ち込んだ場合のみ対応」など条件が付くこともあります。 事前に問い合わせて確認しましょう。 |
| 産業廃棄物処理業者に委託 | 正規の産廃処理業者に収集運搬・処分を依頼する方法です。 法令に基づき適正に処理してもらえるため最も安心確実な手段と言えます。 処理後はマニフェストで処分完了も確認可能です。 費用は重量や数量によりますが、例として「処分費15円/kg+運搬費」程度(1tあたり約1万5千円)との事例があります。 一般的には1枚あたり1,000~3,000円程度が目安とも言われます。 大量にある場合や定期排出がある場合は、産廃業者と契約して計画的に処理するとよいでしょう。 |
| 不用品回収業者に依頼 | (少量で迅速に処分したい場合) 産廃許可を持つ一般の不用品回収業者に処分を依頼する方法です。 産廃専門業者より気軽に問い合わせでき、最短即日で回収してくれる業者もあります。 事業者だけでなく個人からの依頼も可能な業者が多いですが、依頼時に「産業廃棄物の許可」を有するか必ず確認してください。 (無許可業者はNG) 費用は業者や量によりますが、小口なら数千円台から対応する例もあります。 手間をかけず迅速に処分したいときに便利です。 |
以上が事業系木パレットの主な処分方法です。事業者の場合、自治体の粗大ごみには出せない点を改めて押さえておきましょう。
複数の方法を組み合わせてコスト削減を図ることも可能です(状態の良いものは売却、悪いものだけ処分依頼など)。
いずれの場合も契約書の締結やマニフェスト発行など法定手続きを確実に行い、適正処理に努めることが重要です。
木製パレット処分にかかる費用相場
次に気になる処分費用の目安です。
木製パレットの処分コストは処分方法や数量、パレットの状態によって大きく異なります。
ここではおおよその相場感を示します。
産業廃棄物処理業者の相場
一般的に重量あたりで費用計算されることが多く、15円/kg前後が一つの目安です(別途基本料金や運搬費が発生)。
パレット1枚の重さはサイズにもよりますが10~20kg程度なので、処分費だけなら1枚あたり数百円程度になります。
ただし少量の場合でも最低料金が設定されており、例えば「1回の収集あたり1万円~」などとなるケースがあります。
逆に大量にまとめて出すほど単価は割安になりやすいです。
産廃業者による処分は確実な反面、一定のコストがかかると認識しておきましょう。
不用品回収業者の相場
業者やプランによりますが、「軽トラック載せ放題〇円」などパック料金が設定されていることが多く、少量なら4,000~8,000円程度からという例があります。
パレット単品ならもっと安く収まる場合もありますが、回収に来てもらう出張費込みと考えるとこの程度は見ておくと良いでしょう。
他の粗大ごみとまとめて処分すれば追加1点あたり〇〇円…と割安になるケースもあります。
以上のように費用相場は幅があります。
処分方法を選ぶ際は、事前に見積もりを取って費用を確認することが大切です。
産廃業者であれば契約前に正式な見積書を提示してもらえますし、自治体粗大ごみなら受付時に料金を案内してくれます。
費用面だけでなく、手間や処理スピード、安全性なども踏まえて最適な方法を選択しましょう。
木製パレット処分時の注意点
最後に、木製パレットを処分する際の注意点や知っておきたいポイントをまとめます。
違法な処分は絶対にしない
繰り返しになりますが、不法投棄や無許可処理への委託は法律違反で厳しく罰せられます。
特に事業者は「自社の廃棄物を適正に処理する責任」が問われます。
違法行為は罰金・懲役など処罰の対象となるだけでなく、企業イメージの失墜にも繋がります。
安すぎる料金を提示する業者やマニフェストを発行しない業者には要注意です。
無許可(受託禁止)や不適正処理は、排出事業者側も処罰対象となり得ます。
東京都の不適正事例でも再委託基準違反やマニフェスト虚偽記載が処分対象として挙がっています。(参考:東京都環境局公式ホームページ『産業廃棄物の不適正事例』)
必ず信頼できる許可業者を選びましょう。
釘や金具の取り扱い
木製パレットには釘やボルトなど金属部品が使われていることが一般的です。
処分時にはこれら金具の扱いに注意しましょう。
自治体回収に出す際は「金属は外して分別」が基本ですが、自治体により異なりますので必ず確認してください。
産廃業者に依頼する場合は木くずとしてまとめて処理されますので、多少釘が付いていても問題なく木くずと金属は選別・リサイクル処理されます。
とはいえ、怪我防止のため可能な範囲で取り除いておくと安心です。
パレットの再利用・リサイクル
廃棄された木製パレットの多くはリサイクル資源として再利用されています。
回収されたパレットは専門設備で破砕され、木質チップに加工して製紙原料や燃料ボイラーの燃料に利用されたり、圧縮してパーティクルボード(木質ボード)など建材の材料となります。
つまり適切に処分すれば単にゴミとして焼却・埋立てされるのではなく、資源循環に寄与できるのです。
逆に不法投棄された場合は環境汚染の原因になるだけでなく資源も無駄になります。
処分に困ったら「資源に戻す」視点で専門業者へ相談するとよいでしょう。
プラスチック製・金属製パレットの場合
本記事は主に木製パレットについて述べましたが、プラスチックパレットや金属パレットも基本的な処分方法は似ています。
プラスチック製は自治体では燃やせないため資源ごみや産廃扱いとなり、産業廃棄物(廃プラスチック類)として処理する必要があります。
金属製パレットは鉄やアルミ素材であれば高いリサイクル価値があり、スクラップ業者が買い取ることもあります。
いずれにせよ素材別の分別基準に従い、適切にリサイクル処分しましょう。
まとめ

木製パレットの処分は、事業用途か家庭用途かによって適切な方法が異なります。
事業で使った木パレットは産業廃棄物となり、許可業者への委託やマニフェスト発行など法令順守が欠かせません。
一方、個人利用のパレットは自治体の粗大ごみ回収などを活用できますが、地域ルールを確認の上で安全に処分することが大切です。
処分方法には様々な選択肢がありますが、いずれの場合も「正規の手続きを踏み、適正に処分する」ことが何より重要です。
適切な処分を行えば木材資源はリサイクルされ再利用につながります。
不要な木製パレットにお困りの際は、本記事の内容を参考にしていただき、ぜひ安心・安全な方法で処分してください。
分からない点があれば自治体窓口や産廃処理業者に相談し、ルールに沿った対応でトラブルなく廃棄物を処理しましょう。

