
長年住み慣れたご実家が空き家になり、解体を検討されるというのは、人生の中でも大きな決断の一つかと思います。
思い出がたくさん詰まった家を手放すのは、寂しさや不安を感じることもあるかもしれません。
そんな大切な決断だからこそ、後悔のないように、しっかりと情報を集めて、慎重に進めたいですよね。
今回は、空き家の解体を検討されている方に向けて、解体業者を選ぶ際に知っておくべき大切なポイント、特に「損害賠償保険」に未加入の業者に依頼した場合のリスクについて、ご説明させていただきます。
解体業者の保険ってなぜ大切?
解体工事は建物を壊すという作業であり、どうしても危険が伴います。
重機を使用したり、高所での作業があったりと、予期せぬ事故が発生する可能性もゼロではありません。
工事中に事故が起きてしまった場合、その損害を補償してくれるのが「損害賠償保険」をはじめとする解体業者が加入している保険です。
解体業者が保険に加入していることは、万が一の事故が起きた際に業者自身を守るだけでなく、お客様である皆様、そして近隣の方々への経済的な負担を軽減することにも繋がります。
つまり、保険は「予期せぬ事態に対する備え」として非常に重要な役割を果たしているのです。
保険未加入の解体業者に依頼した場合の4つのリスク
では、もし損害賠償保険に加入していない解体業者に依頼した場合、どのようなリスクが考えられるのでしょうか?
ここでは特に注意しておきたい4つのリスクについて詳しく見ていきましょう。
【リスク1】ご近所に迷惑をかけてしまったら?-隣家や近隣への損害
解体工事の過程で、誤って隣の家の壁を壊してしまったり、庭の物を損傷させてしまったりする可能性も考えられます。
解体作業中に誤って隣家の塀や壁を壊してしまった場合、本来であれば業者の損害賠償保険で修理費用などがカバーされ、相手に対してスムーズに対応できます。
しかし、保険に未加入の業者だと補償の対応がなされなかったり、逆に施主側が一時的に費用を立て替えなければならない状況になることもあります。
例え契約書で業者の責任範囲を明確にしていたとしても、業者に十分な支払い能力がなければ、結局は被害を受けた近隣住民との話し合いや交渉を業者には任せられず、自ら矢面に立って対応しなければならない可能性もあります。
最悪の場合、トラブルが長期化し、法的措置や調停といった負担の大きい手続きに発展する可能性すらあります。
近隣住民との法的紛争は、時間も費用もかかり、精神的な負担も大きいものです。
ご近所との関係は、今後の生活にも大きく影響しますので、しっかりと配慮したいものです。
【リスク2】通行人に怪我をさせてしまったら?-第三者への人身事故
万が一、通行人にけがをさせてしまった場合、損害賠償請求が発生する可能性があります。
保険に加入していれば被害者に対してスムーズに補償が行われ、トラブルの拡大を防ぐことができますが、未加入の業者ではその対応が不十分になる可能性があります。
その結果、被害者との交渉がこじれたり、治療費や慰謝料の負担を依頼主が肩代わりしなければいけなくなる可能性もあります。
さらに、重篤な事故として扱われた場合、警察や保健所、行政機関が介入するケースもあり、対応に大きな労力がかかります。
精神的・経済的な負担が非常に大きくなるうえ、最悪の場合、損害賠償請求や訴訟問題に発展してしまう危険性も否定できません。
【リスク3】アスベストが出てきたらどうなるの?-アスベストの飛散
古い建物には、アスベストが含まれている可能性があります。
昭和56年5月31日以前に建てられた建物にはアスベストが含まれている可能性が指摘されています。
アスベストは、飛散すると人体に有害であり、肺がんや中皮腫などの深刻な病気を引き起こす可能性があります。
そのため、アスベストの処理には、専門的な知識と技術、そして厳格な法規制が求められます。
ただし、一般的にはアスベスト除去作業による賠償責任は免責事項とされています。
これは、アスベストの潜伏期間が長く、ばく露から健康被害の発生まで時間がかかるため、保険会社が責任を負うことが難しいと判断されるためです。(「アスベスト飛散事故補償特約」のような特約がある保険もありますので保険内容を業者に確認しましょう)
【リスク4】工事中に火災が発生したらどうなるの?-火災や水漏れ事故
切断作業中の火花が原因で火災が発生したり、水道管を誤って破損させてしまうこともあります。
火災が発生すれば、建物だけでなく周囲の樹木や電線などに延焼し、大規模な被害へとつながる可能性があります。
水道管の破損によっては、周辺一帯が断水になってしまったり、地盤沈下など二次的な被害が発生するリスクもあります。
こうした事故にも対応できる保険の有無は非常に重要です。
保険に加入していれば、迅速な対応が可能となり、被害を最小限にとどめることができます。
特に火災による被害は損害が大きくなりやすく、消火活動による周辺被害も考慮しなければなりません。
場合によっては近隣住民の避難や損害賠償まで発展するため、慎重な対応が求められます。
どうやって信頼できる保険加入業者を見つける?
信頼できる保険加入業者を見つけるためには、いくつかのポイントに注意して業者を選ぶ必要があります。
保険加入の有無を確認する
契約前に「損害賠償保険に加入していますか?」と業者にしっかり確認しましょう。
質問する際には、具体的な保険の種類(例:第三者賠償責任保険、建設工事保険など)についても尋ねてみるとより安心です。
また、実際に保険に加入しているかどうかを証明する「保険証券」や「保険加入証明書」の提示をお願いすることが大切です。
誠実な業者であれば、そうした書類の提示にも快く応じてくれるはずですし、質問に対しても丁寧に説明してくれるでしょう。
加えて、保険の有効期限や補償範囲も確認しておくことで、より確実にリスクを回避できます。
保険の補償内容も要チェック
単に加入しているだけでなく、どこまで補償してくれるのか(近隣被害・人身事故・環境被害など)も確認しましょう。
たとえば、近隣の住宅や車両への損傷が補償対象に含まれているのか、または通行人へのけがや財物への被害についても対応可能かといった細かな条件を把握することが大切です。
さらに、アスベスト飛散や不法投棄などの環境リスクが生じた際に、清掃や原状回復の費用まで補償されるかどうかなど、補償の上限や条件についても詳細に確認しておくと安心です。
まとめ
本記事では、損害賠償保険に未加入の解体業者に依頼した場合のリスクについて詳しくご説明しました。
費用を抑えることは大事なことですが、万が一の事態が発生した場合のリスクを考えると、しっかりと保険に加入している信頼できる業者を選ぶことが、何よりも大切だということがご理解いただけたのではないかと思います。
保険は安心と安全を守るための重要な備えとなるものです。
解体業者を選ぶ際には、費用だけでなく、保険の加入状況や実績、評判などをしっかりと確認し、納得のいく業者に依頼されることをおすすめします。