空き家の解体業者の選び方

「空き家になった実家が老朽化して危険だから解体しなければいけないけれど、どこに依頼すればいいのか」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

親御さんから受け継いだ大切な家を解体するのは心が痛むものですが、放置したままでは建物の老朽化による倒壊や害虫の発生、近隣への悪影響など心配も増えてしまいます。

そこで本記事では、空き家の解体業者の選び方について詳しく解説します。

信頼できる業者を選ぶポイントをチェックリスト形式で紹介し、安心して実家の解体を任せるための注意点もまとめました。

大切な家の最後を任せる業者選び、一緒にポイントを押さえていきましょう。

なぜ解体業者を選ぶ必要があるの?

空き家の解体を検討するとき、なぜ業者選びがそれほど重要なのでしょうか?

理由は大きく分けて次のとおりです。

安全かつ確実な工事のため

建物の解体は専門的な重機や技術が必要な作業です。

素人が手を出すと事故の危険が高く、ケガだけでなく周囲の建物への損傷にもつながりかねません。

プロの解体業者であれば、経験豊富なスタッフが安全に配慮しながら作業を進めてくれるため安心です。

法令遵守と手続き対応のため

建物を解体する際には様々な法令や手続きが関わります。

例えば、建物の規模によっては事前に自治体へ届出が必要だったり、アスベスト(石綿)調査を行う義務があったりします。

また、日本では解体工事を行う業者は都道府県知事の登録を受けることが法律で義務付けられており、一定規模以上の工事を請け負うには建設業の許可が必要です。

信頼できる解体業者であれば、こうした許可や登録を正式に取得しており、必要な手続きをきちんと踏んで工事を進めてくれます。

適切な廃棄物処理のため

解体すれば大量の廃材やごみが出ます。それらを不適切に処分すると不法投棄となり、依頼主にも責任が及ぶ場合があります。

専門業者であれば、産業廃棄物の収集運搬や処分について信頼できるルートで対応し、法律に則った処理を行ってくれます。

例えば、解体工事後にマニフェスト(産業廃棄物管理票)という書類で廃棄物が適正に処理された証明を出してくれる業者もあります。

大切なのは、違法な処理をしない誠実な業者を選ぶことです(悪質な業者の中には違法な工事や不法投棄、相場とかけ離れた高額請求をする所も存在します)。

近隣への配慮のため

空き家とはいえ解体工事では騒音や振動、粉じん(ほこり)が発生します。

信頼できる業者は工事前に近隣住民へあいさつ回りをして日程や作業内容を説明したり、工事中も防音シートを張る・散水して粉じんを抑えるなどの配慮をしてくれます。

後々の近所トラブルを防ぐためにも、近隣対応がしっかりしている業者を選ぶことが重要です。

こうした理由から、空き家の解体を任せる業者は「どこでも同じ」ではなく、安心して任せられる信頼性の高い業者を選ぶことが大切なのです。

では具体的に、どのようなポイントに注意して業者を選べば良いのでしょうか?次の章でチェックリストを使って確認していきましょう。

信頼できる解体業者を選ぶポイント

信頼できる解体業者を選ぶポイント

解体業者を選ぶ際にチェックしたいポイントをリストアップしました。

次のチェックリストを参考に、候補の業者が信頼できるかどうか確認してみましょう。

✅ 許可・登録の有無を確認する

解体業者には行政からの許可や登録が必要です。

信頼の第一歩は業者が正式な許可・登録業者であることの確認です。

具体的には、解体工事の規模に応じて「建設業許可(建築工事業や解体工事業など)」または「解体工事業登録」を業者が持っているかをチェックしましょう。

正式な業者であれば、会社のホームページや事務所に許可証番号登録番号を掲示していますし、実際の工事現場でも許可票登録票を掲げることが義務付けられています。

番号が提示できないような業者は避けた方が無難です。

「許可や登録って何?」という場合でも安心してください。

簡単に言えば「行政のお墨付きがある業者かどうか」ということです。

不明な場合は遠慮せず業者に確認しましょう。

「きちんと許可を取っています」と快く示してくれる会社なら信頼度もアップします。

✅ 複数社から相見積もりを取る

解体工事では相見積もり(あいみつもり)が一般的になっています。

これは一社だけで決めず、2~3社程度の異なる業者に見積もりを依頼して比較検討する方法です。

以下のような目的のためにも、必ず複数の業者から見積もりを取りましょう。

費用相場を把握する

実際、多くの人が2社以上の解体業者から見積もりを取って、費用や条件を比較した上で契約する業者を決めています

3社程度から見積もりを取ることで、費用相場を把握することができます。

また、工期の目安が分かり、業者ごとの対応の違いも見えてきます。

工事の内訳を把握する

1社だけの提案だと見落としていた工事内容(例えば古井戸の撤去や庭木の処分など)が、他社の見積もりで含まれていると気づくこともあります。

見積もりを比較する際には、価格だけでなく、内訳が明確になっているか、追加料金が発生する条件なども確認しましょう 。

例えば、解体工事費、廃棄物処理費、仮設工事費、近隣挨拶の費用などが細かく記載されているかを確認します。

後ほどご説明しますが、見積もり書に「一式」という表記が多い場合は、具体的な内容を確認するようにしましょう。

業者の対応を見る  

見積もり依頼の際、業者に「他社と比較して決めたい」と伝えて問題ありません。

今では多くの業者が相見積もりに理解を示しています。

もし相見積もりを嫌がったり、「今日契約してくれたら特別に安くしますよ」などと急かしてくる業者がいたら要注意です。

冷静に複数の提案を見比べて、納得できる業者を選びましょう。

見積もり比較例

以下に見積の比較例をご紹介します。

項目業者A業者B業者C
解体工事費¥800,000¥750,000¥900,000
廃棄物処理費¥200,000¥250,000¥180,000
仮設工事費¥50,000¥30,000¥60,000
近隣挨拶込み別途込み
合計¥1,050,000¥1,030,000¥1,140,000
追加料金の可能性地中埋設物発見時アスベスト発見時なし

上記の表はあくまで一例ですが、このように項目ごとに比較することで、どの業者の見積もりが自分の希望に合っているか判断しやすくなります。

✅ 見積もり内容は詳細か(内訳の明示)

提出された見積もり書の内容をしっかり確認しましょう。

信頼できる業者の見積もりは、項目が明確で工事内容と費用の内訳が詳細に記載されています。

例えば「建物本体の解体費用〇〇円」「基礎コンクリート撤去費用〇〇円」「廃棄物処分費用〇〇円」「整地費用〇〇円」など具体的に分かれているかチェックしてください。

特に産業廃棄物の処分費は大きな割合を占めるので、きちんと計上されているか重要です。

曖昧な見積もりだと後から「あれは別料金です」と追加請求される恐れもあります。

「一式〇〇円」のように大雑把な見積もりしか出さない業者より、項目ごとに丁寧に説明してくれる業者の方が信頼できます。

また、見積もり時に地中埋設物の有無やアスベストの調査・除去費用、建物滅失証明書の作成費用についても確認しておくと安心です。(建物滅失証明書に関しては『建物滅失証明書とは?』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)

なお、業界団体である全解体工事業団体連合会(全解工連)では、適正で分かりやすい見積もりのために全解工連解体工事見積書標準書式(案)を定めています。

こうした標準フォーマットを参考に、誰が見ても納得しやすい見積書を作成してくれるかという点も業者を選ぶ際の判断材料になります。

✅ 書面契約を交わしてくれるか

見積もりに納得したら契約となりますが、その際も書面で正式な契約書を交わすことが大切です。

口約束で済ませようとする業者は避けましょう。

建設業法では工事の請負契約は書面で行うことが義務付けられており、解体業者は契約内容を記載した帳簿と共に契約書を5年間保管することが定められています。

信頼できる業者なら、契約書面に工事内容・期間・金額・支払い条件などを明記し、依頼者と取り交わしてくれます。

契約書があれば万一トラブルが起きた際も双方で内容を確認でき安心です。

「契約書って大げさかな…」と思うかもしれませんが、家の解体は決して安くない工事ですから、きちんと契約を結ぶのは当然のこと。

逆に契約書を出し渋る業者には不安を感じてしまいますよね。しっかり書面契約してくれる会社を選びましょう。

✅ 保険やアフターフォロー体制の確認

解体工事中に万一、近隣の建物や人に被害を与えてしまった場合に備えて、損害賠償保険(工事保険)に加入している業者だとより安心です。

優良な業者は万が一の事故に備えた保険に入っており、何か問題が起きた際には誠実に対応する体制があります。

「もしもの時の保険にも入っていますのでご安心ください」といった説明がある会社は信頼度が高いでしょう。

また、工事後の土地の整地や、追加で判明した問題(例えば地中から古い浄化槽が出てきた等)への対応についても「最後まできちんと対応します」と約束してくれる業者が望ましいです。

解体後に土地を売却したり活用したりする予定がある場合は、地中埋設物の撤去や更地の仕上がりについても事前に希望を伝え、対応してもらえるか確認しておくと安心です。

✅ 業者の実績や評判もチェック

最後に、その業者の実績や評判も確認しましょう。

例えば創業何年か、これまでの解体実績(件数や事例)、また可能なら地元での評判や口コミも参考になります。

インターネットで業者名を検索すると、利用者のレビューや体験談が見つかる場合があります。

また、一部自治体では地元の解体業者のリストや評価を公開していることもありますし、心配な場合は市区町村の空き家相談窓口で「信頼できる解体業者を教えてほしい」と尋ねてみるのも一つの手です。

さらに、業者が業界団体(先述の全解工連など)に加盟している場合は、法令遵守や技術向上に積極的な姿勢の表れとも言えます。

もちろん未加入でも優良な業者はいますが、団体加盟企業であることは一定の安心材料になるでしょう。

総合的に見て「ここなら任せられそうだ」という業者を選ぶことが大切です 。

以上のチェックポイントを参考に、候補の業者を比較・検討してみてください。

すべてに完璧に当てはまる業者が理想ですが、現実には難しいこともあります。

それでも「許可や契約など基本的な信頼条件を満たしているか」は最低限チェックし、できるだけ条件の良い業者を選ぶようにしましょう。

解体業者選びで気を付けたい注意点

解体業者選びで気を付けたい注意点

最後に、解体業者を選ぶ際や契約前後で特に注意したい点をまとめます。

トラブルを避け、安心して工事を進めるために以下の点に気を付けましょう。

極端に安い見積もりには要注意

他社より著しく安い見積もりを出してくる業者には注意が必要です。

一見ありがたいように思えますが、極端に安い場合は後から追加請求があったり、適切な廃棄物処理をせずにコストを削減している可能性があります。

不法投棄など違法行為をされてしまうと依頼者にも責任が及ぶことがあり大変危険です。

価格は大事ですが、「相場とかけ離れた安さ」はかえってリスクと心得ましょう。

適正価格の範囲で納得できる見積もりを提示してくれる業者を選ぶことが大切です。

工事内容や範囲を事前に明確にしておく

解体工事に含まれる作業範囲を事前に業者と共有しておきましょう。

例えば、家屋だけでなく敷地内の物置や塀、庭木なども一緒に撤去するのか、古い浄化槽や井戸がある場合はどうするのか、といった点です。

後から「あれは対象外です」と言われると困りますので、最初にしっかり伝えて見積もりに入れてもらいましょう。

また、屋根や壁にアスベストを含む建材が使われている可能性がある古い家の場合、専門の調査や除去作業が必要になることがあります。

信頼できる業者であれば「事前に調査しましょう」「アスベストが見つかった場合は適切に除去処理します」と説明してくれるはずです。

不安な点は事前に質問し、工事範囲や方法について納得しておきましょう。

契約金額と支払い条件を確認

契約前に支払い条件も必ず確認しましょう。

一般的には工事完了後に支払うケースが多いですが、場合によっては着手金(一部前払い)を求められることもあります。

その場合でも、高額な全額前払いには注意が必要です。

信頼できる業者は適正なタイミングと金額での支払いを提示します。

また、追加費用が発生する可能性があるケース(例えば地中から予期せぬ埋設物が出た場合など)についても事前に説明してくれるでしょう。

「聞いていなかった出費」が後から出ないよう、疑問点は契約前にクリアにしておくことが肝心です。

工事前の準備も忘れずに

業者選びとは直接関係ありませんが、工事に入る前にお家の中の残置物(残っている家具や生活用品)は原則として依頼者側で片付けておく必要がある点も押さえておきましょう。

長年誰も住んでいない家だと、当時の家具や荷物がそのままになっていることもあります。

解体業者に処分もまとめてお願いできる場合もありますが、追加費用がかかったり、自治体の補助金を受ける際は残置物が無いことが条件になることもあります。

思い出の品が混じっていないか確認しつつ、必要なものは事前に運び出して、不用品は専門の回収業者に頼むなど整理を進めましょう。

困ったときは公的機関へ相談

業者選びや契約内容で迷ったり不安に感じたりしたときは、遠慮なく公的機関に相談することも検討しましょう。

各自治体には空き家対策の窓口住宅相談窓口があり、解体工事に関する一般的なアドバイスや情報提供を受けられる場合があります。

また、契約トラブルが心配な場合は消費生活センター(消費者ホットライン「188(イヤヤ)」)に相談することもできます。

公的な第三者の意見を聞くことで安心材料が増えますし、万一トラブルに発展した場合の心強い味方にもなってくれるでしょう。

まとめ

まとめ

空き家となった実家の解体業者選びについて、ポイントを詳しく見てきました。

最後に内容を簡単に振り返ってみましょう。

まず、信頼できる業者かどうかを見極めるために、業者の許可・登録の有無、見積もりや契約の内容、過去の実績や対応姿勢などを総合的にチェックすることが大切でした。

特に法律で決まっている許可や登録を取得していること、そして書面で契約を交わすことは最低限の信頼の証と言えます

また、一社だけで決めず複数社から見積もりを取り比較することも重要でした。

そうすることで費用や工期だけでなく、「この業者なら安心して任せられる」という感覚もつかみやすくなります。

次に、業者選びの際の注意点として、極端に安い金額を提示する業者や契約を急がせる業者には警戒が必要です。

解体工事では適正な手順や処分を踏めばそれなりの費用がかかるものですので、不自然な安さには裏があるかもしれないと考えましょう。

また、工事範囲や支払い条件なども事前によく確認し、不安な点は契約前に解消しておくことが大切でした。

実家の解体は寂しさもある決断かもしれません。

しかし、解体作業自体は安全・確実に進み、近隣トラブルの心配も少なく、問題なく更地にして引き渡してもらうためにも、信頼できる解体業者に任せることはとても重要です。

この記事を解体業者選びの参考にしていただけましたら幸いです。